2025年度 活動レポート 第60号:甲南大学

2025年度活動レポート(一般公募プログラム)第60号 (Bコース)

がん化や老化を防ぐ化合物開発へ向けた計算化学研究の基盤構築

甲南大学先端生命工学研究所からの報告

甲南大学先端生命工学研究所(FIBER)は核酸化学を専門とする研究所で、遺伝子である核酸(DNAやRNA)の物理化学的な特性を定量的に解析し、核酸医薬品などの設計をはじめとする、医工学、農学、薬学など様々な分野に有用なデータベースを構築してきました。今回は、2026年2月24日から2026年3月10日の日程で、インドのコルカタ大学およびスリバラジビダピト大学から2名の博士課程の大学院生を招へいし、共同研究活動を実施しました。インドではスパイスに代表される植物由来の天然化合物の研究が盛んに行われており、近年これらの化合物が核酸の特殊構造である四重らせん構造に結合して、薬理活性を示す例が多数報告されています。そのため、インドにおける植物由来の化合物を医工学技術の開発へと有効活用する試みは非常に重要視されています。FIBERでも核酸と化合物との相互作用解析を基盤とした医工学技術の開発を進めており、以前よりインドの研究者と共同研究を行っていました。今回の招へい者は、共同研究者であるSudipta Bhowmik博士から指導を受けており、核酸の物理化学解析の基礎の習得を目指した研究交流プログラムを通じ共同研究を推進しました。

プログラムでは、まず科学と文化の国際交流セミナーと題した国際交流会を開催しました。ここでは、甲南大学および招へい者側が研究者の文化的背景からその研究スタイルの成り立ちを交流し合う企画とすることで、科学技術の専門的な交流だけで無く、フィロソフィーを議論し合うことができました。それにより、研究室間だけで無く、分野横断的に大学間でのグローバルな交流を行うことができました。さらに、FIBER未来大学と題する研究セミナーも開催し、日本国内だけでなく、英国から核酸化学のトップレベルの研究者に講演を依頼しました。それにより、招へい者に対し、自身の知識や経験と関連がある国内の様々な研究を知ることができる貴重な機会を提供しました。

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国際交流会の様子

交流プログラムの一環として、計算化学的手法による核酸やタンパク質の構造解析を専門とする神戸大学大学院システム情報学研究科の中田柊也助教・田中成典名誉教授の研究室を訪問しました。この訪問によって、計算化学を得意とするインド側の高度人材のハイレベルな研究交流が実現できました。他に、合成化合物によるDNA構造の安定化で著名な技術を有する東京農工大学大学院工学研究院の長澤和夫教授・寺正行准教授の研究室を訪問し、化学修飾による化合物の性能強化についての意見交換を行いました。研究室訪問の際には、専門の異なる研究者に対して自身の研究発表を行う経験を積ませることで、交流計画の目的、趣旨に対して適切で効果的なプログラムを実施することができました。他にも神戸市内の博物館や日本未来館の訪問を通じ、科学や歴史を含む文化体験をしていただきました。

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研究室訪問の様子

本交流による研究成果として、「細胞内でDNA四重らせん構造の形成を制御するフラボノイドの網羅的スクリーニング」に関する共同研究を実施し、招へい者側の専門とするDNAと相互作用する化合物の分光学的データを計算化学的に解析する手法の開発に大きな進展がありました。それにより、今後インド側で主体的に効果のある植物由来化合物を探索することができるようになることが期待できます。将来的には、日本側が開発した細胞加工技術のノウハウを共有することで、インド側現地で対象となる細胞・組織を加工し、解析したデータを日本側に供給することで、詳細な核酸研究の実験・解析を行う計画をしています。本交流の実施を契機に、新しい国際研究プラットフォームの構築の展開が期待できます。

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FIBERでの実験の様子