2025年度活動レポート(一般公募プログラム)第57号 (Cコース)
グリーンエネルギー活用のためのナノマテリアルの微視的観察
北海道大学からの報告
2026年2月16日から2月25日まで、マレーシア国民大学(UKM)からNurul Asikin Mijan上級講師ほか7名を招へいし、マイクロメートルからナノメートルにわたる微視的な観察法の向上を目的に、3種の電子顕微鏡(SEM、STEM、TEM)および走査トンネル顕微鏡(STM)の操作について実践的に学びました。
【1日目】
大変な大雪の中、昼前に北海道大学に到着しました。
午後は北大工学部高電子分光分析研究室にて走査電子顕(SEM)の実習を行いました。測定するのはUKMで合成されたcore-shell試料です。まず、技術職員の方に試料の準備からSEM画像を得るまでを実演してもらいました。その後、アドバイスを受けながら自分たちで装置を操作してSEM画像を取りました。参加者たちは、初めて自ら取ったSEM画像に感動していました。
【2日目】
前日に引き続きSEM測定の実習を行いました。UKMで合成された活性炭試料のナノ構造の観察が目的です。前日の実習の成果が発揮されSEM装置の操作はスムーズに行えました。午後は、走査トンネル顕微鏡(STM)の原理について解説しました。その後、Welcome Meetingに移り、参加者の自己紹介と出身地について話してもらいました。参加者それぞれのユニークさがわかるとともにだんだんと打ち解けてきました。
【3日目】
STM測定です。装置の操作に慣れるために標準試料のグラファイトの「へき開面」を観察しました。試料のセットから装置の操作法までのひと通りを実演されたのち、参加者たち自身が操作しながら測定を行いました。得られた画像をもとに自分たちで考えて条件を変えながら測定する一連の動作を繰り返し、原子像の観測を目指しました。残念ながらこの日は明確な原子像の観測には至りませんでしたが、2日後には規則正しく並んだ炭素原子のひとつひとつがはっきり観測されました。
STM測定の合間に、超薄膜を作製する分子線エピタキシー装置と、超伝導体を研究するための極低温超高真空STM装置を見学しました。ともに初めて見る最先端装置ということもあり積極的に質問をしていました。
実習後は北大総合博物館を見学しました。恐竜の骨格標本といったものから、北大創設時から現在に至るまでの北大オリジナルの科学技術に関して幅広く展示されていました。参加者たちは熱心に見入り、1時間の見学時間ではとても足りませんでした。アイヌ民族に関する展示では、厳しい自然との共生から生まれたアイヌ文化の一端に触れ、先住民族に対する畏敬の念を抱きました。
【4日目】
北大電子科学研究所にて走査透過電子顕微鏡(STEM)の実習です。技術職員の方に手ほどきを受けながらSTEM装置(HD-2000)を扱いUKMで合成されたRu-MOF試料の観察を行いました。STEMでは3つの測定モードを使い分けることで様々な情報が得られることを学ぶとともに、STEM装置の使い勝手のよさに気づかされました。これと並行して電子顕微鏡観察用の試料の準備についても実習を行いました。
【5日目】
STM測定用の試料の準備について実習し、午後は電子科学研究所にて透過電子顕微鏡(TEM)の実習を行いました。原子分解能を得るために、振動や温度のゆらぎを抑え地磁気もキャンセルする特別仕様の部屋に設置されたTEM装置(JEM-ARM200F)の規模に圧倒されながらも、UKMで合成されたcore-shell試料の高分解能観察に臨みました。自分たちで合成した試料で原子配列が観測できたことに感動しました。
【6日目】
本格的なSTM測定に取りかかりました。試料はcarbon clothです。標準試料のグラファイトとは打って変わって、データを取るのに四苦八苦です。
【7日目】
前日に引き続きcarbon cloth のSTM測定を行いました。難しい測定でしたが、試行錯誤により、測定結果に対して議論を通してフィードバックをかけより良い結果に結びつけることの重要性を学びました。
【8日目】
Core-shell試料のSTM測定を行いました。参加者自身で装置の操作ができるまで習熟し、Core-shell試料を初めてSTM観察することができました。
【9日目】
前日に引き続きCore-shell試料のSTM測定を行い、興味深いSTM像がいくつか得られました。午後は意見交換会(Summary Meeting)を開き、プログラム全体を振り返りました。参加者それぞれが、本プログラムでの成果を発表し今後の展望をまとめました。最後に修了証を授与しました。今日の実習と意見交換会の様子を北大広報担当者が取材に訪れました。
【10日目】
いつの日かの再会を約束して名残を惜しみつつ千歳空港から帰国の途につきました。
常夏のマレーシアから極寒の北海道へ来て10日間も過ごせるのかと危惧していましたが、参加者は最初から最後まで皆明るく元気に本プログラムに取り組みました。
最先端の装置を自ら操作するという貴重な体験を得ることができました。また、技術もさることながら、研究者と技術職員(オペレーター)が議論しながら測定を進めていくスタイルに感化されたことも成果のひとつです。ここで得た技術・知見・測定に対する姿勢をマレーシアでも実践することが大いに期待できます。