2025年度 活動レポート 第41号:上智大学

2025年度活動レポート(一般公募プログラム)第41号 (Aコース)

JSTさくらサイエンス交流を通じたFSM代表団による女性リーダーシップおよびブルーフード強靭化の推進

上智大学からの報告

ミクロネシア連邦(FSM)代表団は、ポンペイ州政府のヨーグ・アンソン氏を団長として、上智大学アイランド・サステナビリティ研究所(ISI)を受入れ機関とする「さくらサイエンスプログラム」A.科学技術体験コースのプログラムに参加いたしました。本交流プログラムは、水産分野における制度的能力強化、ブルーフードシステムの高度化、そして女性リーダーシップの推進を目的として実施したものです。

FSMのような小島嶼開発途上国(SIDS)において、水産業は食料安全保障、生計維持、経済の強靭性の中核を成しております。近年は、気候変動の影響拡大や災害リスクの上昇、輸入依存の増大が顕在化しており、産業の多角化および包摂的なガバナンスの構築が重要な課題となっております。

■ プログラムの目的

本プログラムは、以下の目的に基づいて実施いたしました。

  • 水産バリューチェーン全体(水揚げ・検査・加工・販売)における女性参画の拡大
  • 日本の水産管理、加工技術、食品安全に関する先進的取り組みを通じたブルーフード強化
  • 災害後復興モデルの検討
  • ISI–ポンペイ州政府間のMoUに基づく制度的連携の深化

■現地視察による学び

宮城県において、気仙沼漁港、阿部長商店、石巻魚市場を視察いたしました。宮城県は、2011年の東日本大震災後に水産業を再建した代表的事例であり、気候脆弱性の高いFSMにとって多くの政策的示唆を得られる地域です。

【気仙沼漁港】

電子競り、トレーサビリティ、効率的物流など、先進的な水産管理体制を視察いたしました。特に「ジェンダーフリー」方針のもと、女性が事務、競り、検査、物流、販売に幅広く参画している点が印象的でした。

主な学び:女性参画を制度化することは、ガバナンスの安定性ならびに市場競争力の向上に寄与することが確認されました。

活動レポート写真1
気仙沼魚市場で競りの様子を視察しました

【阿部長商店】

震災後に再建を果たし、事業の多角化を実現した企業であり、従業員の80%以上が女性である点が特徴的です。女性が中心となり、高付加価値化と雇用創出を両立していました。

主な学び:女性主導の加工・高付加価値化は、地域経済の回復と国内付加価値の保持に貢献することが示されました。

活動レポート写真2
阿部長商店で食品加工工場を見学しました

【石巻魚市場】

再生可能エネルギー導入、廃棄物管理の高度化、HACCP体制の整備状況を確認いたしました。

主な学び:統合的な食品安全管理は、国際市場へアクセスするための基盤として重要であることを再確認いたしました。

活動レポート写真3
震災後の石巻魚市場の再建についてのお話を当時の責任者の方に伺いました

■女性リーダーシップと人材育成

日本では、女性が加工、起業、技術革新、協同組合運営、食育など多岐にわたり活躍しております。一方、FSMにおいては高等教育機会や技術分野での女性参画が限定的であるため、本交流は政策適用可能な多くの実践モデルを提示する機会となりました。

今後の重要な方向性として、以下が確認されました。

  • 加工・高付加価値分野における女性雇用の拡大
  • 若年女性の高等教育進学の促進
  • 水産ガバナンスへの女性リーダーシップの統合

■ 今後の展開

  • FSM水産分野における女性参画強化に向けた政策提言の策定
  • 小規模加工施設整備の可能性の検討
  • ISI–ポンペイ州政府MoUに基づく継続的な連携
  • FSMにおける相互訪問を通じた実践モデルの適用可能性の検証

■ 結論

本プログラムは、技術革新、協同組合型ガバナンス、そして女性リーダーシップが相互に補完し合い、水産分野の強靭性を支えることを明らかにしました。宮城県の事例は、FSMにおけるブルーフード強化、食料安全保障向上、そして包摂的かつ気候強靭な地域社会形成に向けた実践的示唆を提供するものとなりました。