2025年度 活動レポート 第40号:芝浦工業大学柏中学高等学校

2025年度活動レポート(一般公募プログラム)第40号 (Aコース)

日本の建築技術を世界へ
~伝統的技術と先進的技術の融合~

芝浦工業大学柏中学高等学校からの報告

冬の柔らかな日差しが降り注ぐ中、本校のパートナーシップ校であるベトナム・FPT高校から、7名の生徒と1名の引率教員を「さくらサイエンスハイスクールプログラム」としてお迎えしました。彼らとの交流は、この招へいから遡ること半年、本校生徒とのオンラインでの顔合わせから静かに始まっていました。毎年2月に開催される本校の「SSH探究発表会」での共同研究発表という大きな舞台を目指し、画面越しに言葉を交わしてきた彼らにとって、日本の土を踏む瞬間は、まさに待ちわびた再会の時でもありました。
 今回の探究テーマは「建築」。しかし、それは単なる図面上の学びではありません。台風や洪水といった自然災害の脅威と隣り合わせで生きる日本とベトナム、両国の若者たちが「大切な故郷をどう守るか」という切実な問いに向き合う、心と心の対話でもありました。

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共同研究発表会の様子

プログラムの前半では、浅草寺や五重塔、スカイツリー、そして上野の国立西洋美術館を巡りました。生徒たちの瞳が最も輝いたのは、古い木造建築と現代のタワーが、実は「同じ知恵」で繋がっていると気づいた瞬間でした。 五重塔の揺れを吸収する「心柱」の原理が、最新のスカイツリーの制振システムに応用されていること。そして、ル・コルビュジエが設計した歴史的建築である西洋美術館が、目に見えない地下の免震装置によって守られていること。「古いものを壊すのではなく、知恵を借りて未来へ繋ぐ」。日本の職人や技術者たちが積み重ねてきた地道な努力と、文化財への深い愛情に触れ、生徒たちは何度も熱心にシャッターを切り、メモを取っていました。

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西洋美術館にて

中盤に訪れた「首都圏外郭放水路」での体験は、彼らにとって特に感慨深いものとなりました。地下に広がる巨大な貯水槽、そして圧倒的な存在感を放つタービン。その「地下神殿」とも称される壮大な光景を前に、生徒たちからは多くの質問が飛び出しました。
 実は、ベトナムもまた、激甚化する台風や水害に悩まされている国です。参加した生徒の中には、自らも水害で辛い思いをした経験を持つ者がいます。目の前の巨大な施設が、人々の生活を、命を、静かに守り続けている。その事実に、彼らは自分たちの未来を重ねていたようです。

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東京外かく放水路にて

プログラムの後半は、芝浦工業大学や企業の研究施設を舞台に、より実践的な学びに浸りました。 芝浦工業大学志手研究室では、大学院生や学部生の皆さんが、まるでお兄さん、お姉さんのように優しく寄り添ってくれました。3D画像で建物を解析し、仮想空間の中で不具合を見つけ出す作業。初めて触れる最新のパソコン操作に戸惑いながらも、学生たちと笑い合い、共に画面を覗き込む姿は、国籍を超えた「科学の絆」そのものでした。

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芝浦工業大学志手研究室訪問の様子

さらに、清水建設の研究所では、これまでの旅の点と線が一つに繋がりました。浅草寺の屋根を軽くして地震に強くする工夫、西洋美術館を支えるダンパーの構造。理論と実践が結びついた瞬間、生徒たちの口からは「日本人はすごい!」という感嘆の言葉が漏れました。風速30メートルの強風を体験し、巨大な地震装置を間近で見学し、より良い音響を求めてミリ単位の調整を続ける。よりよい構造体建設のための妥協のない姿勢に、彼らは「技術」以上に大切な「誠実さ」を学んだのではないでしょうか。清水建設訪問中、社員の方がおっしゃった「新技術は災害が起こった後に発展する」という言葉は、私たち全員の心に深く響きました。悲しみを乗り越え、それを力に変えてきた日本の歩み。それは、これから発展を遂げるベトナムの若者たちにとって、何よりの励ましとなったはずです。

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清水建設にて

「日本の建築技術を世界へ~伝統的技術と先進的技術の融合~」 このテーマに沿って駆け抜けた一週間は、単なる知識の修得以上の収穫をもたらしてくれました。日本人の優しさと、未来を切り拓く強さ。その両方を肌で感じたベトナムの高校生たちが、いつか母国で素晴らしい建築の花を咲かせることを信じています。