2025年度 活動レポート 第16号:島根大学

2025年度活動レポート(一般公募プログラム)第16号 (Aコース)

地球科学と文化遺産の融合による学際的教育の推進

島根大学総合理工学部 地球科学科からの報告

島根大学総合理工学部地球科学科のSilpa A. S.助教が主催した「さくらサイエンスプログラム」は、科学交流、地質フィールドワーク、そして文化体験を融合させた充実の1週間を経て、成功裏に幕を閉じました。本プログラムでは、インド・コーチン科学技術大学(CUSAT)海洋地質・地球物理学科からRatheesh Kumar R.T.博士と6名の大学院生を迎え、学際的な学びと実践的な地質調査を中心に展開しました。

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キャンパスツアー

プログラムの活動内容には、日本列島の起源と進化、日本海の形成過程、ならびにそれを取り巻く複雑なテクトニクスの研究が含まれていました。日本は約1,500万~2,000万年前に形成された比較的若い島弧システムであり、30億年以上前に形成された古い大陸地殻を有するインドとは顕著な対照を成しています。この大きな差異により、参加者は全く新しいテクトニクス体系を学ぶ貴重な機会を得ることができました。参加者は松江市の風光明媚な島々である桂島および大根島を訪れ、独特な火山地形と豊かな地質史を背景に、火山活動や沿岸地形の観察・分析を行いました。これらの島々は、自然そのものが「実験場」となる貴重なフィールドです。

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島根県松江市桂島にて野外巡検
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大根島由志園にて

さらに、科学的探究に加えて、日本の文化遺産にも深く触れる機会が設けられました。松江城や、日本最古の神社の一つである荘厳な出雲大社を訪れ、自然と調和した静謐な空間を体感しました。特筆すべき体験の一つは、稲佐の浜の訪問です。同地は、地質学的特徴、雄大な景観、そして神話が見事に調和する場所として知られています。日本海を望む壮麗な海岸地形と美しい景観を有するこの浜は、神々が集う地として神話に深く根付いています。自然の美と文化的意義が融合したこの体験は、日本の地質学的歴史と精神的伝統の結びつきを示すものであり、参加者に深い感銘を与えました。

プログラムでは日本人学生とのインタラクティブな文化交流セッションも実施されました。この交流では、訪問者がけん玉などの日本の伝統的遊戯を体験し、日本人学生はヒンディー語、マラヤーラム語、タミル語、テルグ語、の4つのインド言語で自らの名前を書く方法を学びました。この活動は、言語および文化の多様性に対する相互理解を深め、学術的な協力を超えた温かく有意義な交流の場となりました。

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日本人学生との文化交流セッション

最後のワークショップでは、地質学的成果の発表に加え、文化的な洞察や日本に対する印象を共有し、さらに本プログラムが今後の研究、キャリア、そして人生にどのような影響を及ぼすかについて議論しました。本プログラムは、国際的な協力を通じて科学的好奇心と文化理解を育むことを目的としており、学術的な絆を強化するとともに、若手研究者がグローバルな視点を持ち、協働する姿勢を養う場となりました。

国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の支援を受けて実施されたこの取り組みを、科学技術分野の次世代リーダーを育成するための重要な交流の場として、今後も継続していきます。本プログラムでは、地球科学と海洋科学を融合し、自然と文化の中で体験的に学びを深めることができました。プログラム終了に際し、参加者はこの貴重な機会に感謝の意を表し、日本滞在中に得た知識と人とのつながりを今後の研究に活かしたいという希望を語りました。

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大谷学長(前列中央)表敬訪問