2025年度 活動レポート 第15号:東京大学

2025年度活動レポート(一般公募プログラム)第15号 (Aコース)

「総合知」の創造と実践-人文社会科学の新たな役割

東京大学大学院人文社会系研究科からの報告

日時:2025年11月16日(日)~11月22日(土)

プログラム

11月16日(日)  午前 到着ガイダンス
午後  特別講義 "Developing Devanagari AI-OCR"
加藤隆宏(インド哲学仏教学研究室・教授)
11月17日(月) 午前 特別講義 "Introduction to Digital Humanities"
塚越柚季(次世代人文学開発センター・講師)
午後 東京大学総合図書館見学
アジア研究図書館にてレクチャー(板橋助教)
11月18日(火) 午前 国立博物館見学
午後 「日本語文章表現」
鎌田美千子(次世代人文学開発センター・教授)
11月19日(水) 午前 文学部学生と交流会
午後 東京大学インド人学生会・インド人卒業生を交えた研究会と意見交換会
Keynote Lecture, Dr. Seetha Ram (UTokyo Alumna)
"Study and Life in Japan"
Ms. Mangalleibi Sagolsem (Researcher, UTokyo)
"War Manga: Constructed Memories and Conflicting Identities"
Deepjyoti Roy (PhD DU)
"Strengthening Resilience and Advancing Innovation: The Impact of ISRO-JAXA Collaboration on Disaster Management and Environmental Monitoring"
Anjali Singh (PhD, DU)
11月20日(木) 午前 歓迎の辞
村本由紀子(大学院人文社会系研究科長)
特別講義 "Use of 3D Models for Archaeology"
根岸洋(考古学研究室・准教授)
午後 "Comparetive Buddhism"
トーマス・ニューホール(インド哲学仏教学研究室・講師)
11月21日(金) 午前 特別講義 "Study of Ancient Greek and Roman Sculpture with 3D Models"
芳賀京子(次世代人文学開発センター・教授)
11月21日(金) 午後 都内見学
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滞在期間中は晴天に恵まれました

【プログラムの概要】

東京大学大学院人文社会系研究科・文学部では、人文科学・社会科学の広範な分野において、最先端の科学技術を積極的に導入した革新的な研究が進められています。本招へいプログラムは、こうした研究の現場をデリー大学の学生に直接見学・体験してもらい、今後の人文科学・社会科学の学問的可能性について理解を深めるとともに、日印間の学術交流を一層促進することを目的として実施されました。

東京大学とデリー大学は1980年代から全学協定を締結し、これまで哲学・宗教学・歴史学・文学など多様な分野において部局間協定を通じて交流を行ってきました。今回の招へいは、長年の学術的協力関係をさらに発展させる取り組みとして位置づけられています。

本プログラムは、東京大学人文社会系研究科が主導する国際人文学プロジェクトの認定を受け、研究科をあげてのサポートを得ることができました。

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村本研究科長による歓迎の辞

今回の研修の中心となったのは、伝統的な人文科学・社会科学の研究に最先端のテクノロジーを融合させる「総合知」の実践です。考古学における3Dモデルの活用、三次元測定技術を用いた古代彫刻研究、デジタル・ヒューマニティーズ(Digital Humanities)の実践、AIを活用したデーヴァナーガリー文字OCR(光学文字認識)の開発など、文理融合を超える革新的な取り組みが展開されました。

こうした多様な最先端研究に触れることで、参加学生は、人文学・社会科学の新しい姿を学ぶと同時に、科学技術と人文学が相互に照らし合い、新たなイノベーションの創出につながる可能性を実感することができました。2023年度・2024年度と継続して実施してきた本プログラムは、今回も国際交流促進に大きな手ごたえを得る成果となりました。

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根岸洋先生による特別講義
3Dモデルを用いた最先端の考古学研究について学びました。
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芳賀先生による特別講義
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東京大学アジア研究図書館見学。板橋先生にご案内いただきました。

本プログラムを通じて、参加したデリー大学学生は、東京大学が推進する人文社会系の最先端研究について多角的な学習機会を得るとともに、日本の大学院教育や学術環境に対する具体的な理解を深めることができました。参加学生からは、「今後日本で学びたいという意欲が高まった」「デジタル・ヒューマニティーズやAIを活用した文献研究の可能性に強い関心を持った」「東京大学のインド人研究者・留学生の経験談が進路選択の参考になった」といった多くの前向きな声が寄せられました。

長年続く東京大学とデリー大学の学術交流は、今後も日印間の人的ネットワークを支える基盤となることが期待されます。本研修をきっかけとして、将来的な長期留学・共同研究・博士課程進学など、より深い学術交流の展開が見込まれます。

本招へいプログラムの実施にあたり、ご支援をいただいたさくらサイエンスプログラム関係者の皆様に深く感謝申し上げます。本プログラムで得た貴重な経験と知見を今後の学術活動に活かし、日印の教育・研究交流のさらなる発展に貢献していく所存です。

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修了式にて