2025年度活動レポート(一般公募プログラム)第11号 (Cコース)
汚染された水源から安全な水を作る膜分離技術の研修
長崎大学からの報告
長崎大学大学院総合生産研究科水環境科学コースは、令和7年11月2日(日)~11月7日(金)にインドネシアのバンドン工科大学産業技術学部の学部生3名および講師1名、ベトナム国家大学ハノイ校科学大学化学学部の学部生2名、タイのチェンマイ大学工学部環境工学科の学部生2名(合計8名)を長崎に迎え、「汚染された水源から安全な水を作る膜分離技術の研修」と題したC.科学技術研修コースのプログラムを実施した。本プログラムでは、招へいする学生に対し、産学官(水処理企業・長崎大学・長崎県内の水道局)が一体となって日本が誇る高度水処理技術に関わる研修を提供することで招へい者の膜分離技術に係る能力を引き上げ、研究者またはエンジニアとして再来日に繋げることを目的とした。
研修の対象としては、汚染した水源を浄化して安全な水道水を作るために適した逆浸透膜(孔径=<1nm)やナノろ過膜(孔径=1~2nm)を選定した。招へい者には渡日前にオンデマンドの講義を受講して課題を課していたため、来日直後から専門用語で議論ができ、さらに実験室における実習を難なく実施することができた。
実習では、逆浸透膜やナノろ過膜のろ過条件(膜透過流束)を招へい者自ら変更し、その変更に対する塩分除去の変化を記録し、グループ毎に実験レポートを提出してもらった。提出された実験レポートに対するコメントや修正アドバイスを通して、招へい者は初めて研究におけるレポートの書き方を知る機会となったようであった。指導した長崎大学の大学院生にも積極的に質問をしており、学生同士の交流を深めたようであった。机上で学んだことを実体験したことで膜分離に対する理解が深まったように見えた。
膜処理のプラント設計では、学生が母校で使用したことがあるソフトウェアを駆使してプラントフローを詳細に描いており、見た目は実際の技術者が描いたレベルであった。さらに、来日してから学習した逆浸透膜ソフトウェアを使うことで目標水質を満たすだけの膜エレメント種類・本数・運転条件の決定方法を学ぶことができ、より実践的な設計体験の機会を提供できた。
また、佐世保市水道局の山の田浄水場の見学を通して実際の膜処理設備や水源に触れることで、セラミック膜ろ過設備のみならずその前処理の重要性を学ぶ機会が得られた。最終日のシンポジウムでは、一般社団法人産学官国際水環境技術推進協議会の会員からの事業紹介の他、3つのグループに分けられた招へい者たちによる各大学の紹介・実習のまとめ・グループ課題の成果発表を行った。
本プログラムでは、短期間の研修にも関わらず招へい者の技術への興味の強さと成長が感じることができ、本学の大学院生にも招へい者の積極的な姿勢が伝わって刺激を受けていたことから、非常に有意義なプログラムとなった。