2025年度活動レポート(一般公募プログラム)第6号 (Bコース)
新材料創成を目指した萌芽研究の探索
静岡大学からの報告
静岡大学では、2025年9月15日~2025年10月5日、SRM科学技術大学(インド)から大学院生5名、ポスドク2名、教員1名、計8名を招へいし、B.共同研究活動コースのプログラムを実施しました。
【初日(9月15日)】
さくらサイエンスプログラムの初日、2025年9月15日午後10時に中部国際空港に到着し、日本への旅が正式に始まりました。みなさんは快適な空の旅の後、眼下に広がるライトアップされた街並みが、興奮と期待感に包まれていたそうです。入国審査や手荷物受取など、空港での手続きはスムーズに完了しましたが、職員の効率性と整然とした環境は、日本の規律とホスピタリティを反映して感銘を受けたそうです。
空港から宿泊施設へ送りましたが、途中の道路は静かで交通量が少なく、清潔で整然とした環境が目に留まったそうです。街灯が手入れの行き届いた景観を照らし、自然と近代的なインフラが調和した日本の姿を垣間見ることができたとのことです。この短い移動で、日本の細部への配慮と環境への敬意を改めて感じたそうです。
【2日目(9月16日)】
午前中はオリエンテーションを行い、さくらサイエンスプログラムのビジョンと目的を紹介しました。オリエンテーションの後、集合写真撮影を撮影しました。午後は静岡大学浜松キャンパスのキャンパスツアーを行いました。
【3日目(9月17日)】
午前のセッションでは静岡大学高柳記念館を訪問しました。高柳記念館では初期の実験から現代の応用に至るまで、テレビ技術の歴史を魅力的な形で辿ることができるため、感銘を受けたそうです。
午後のセッションでは、静岡大学浜松キャンパス内の共同機器利用センターにてX線回折(XRD)装置、ラマン分光装置、電界放出走査電子顕微鏡(FESEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、X線光電子分光装置(XPS)、電子線マイクロプローブアナライザー(EPMA)などを見学しました。
【4日目(9月18日)】
午前のセッションでは、研究計画を作成しました。今回のプログラムではグループに分かれ、研究テーマ、目的、方法について議論しました。
午後のセッションでは、教員や他の参加者と研究に関するディスカッションをしました。各グループには当初の計画を共有し、研究をどのように改善できるかについても検討しました。
【5日目(9月19日)】
午前と午後のセッションでは、研究室で研究のための試料の作製をしました。計画された手順に従い、テーマの背景、研究目的、そして使用する方法に注意を払って行って行いました。
【6日目(9月20日)】
午前中のセッションでは、電子工学研究所の池田教授の研究室を訪問しました。教授の研究室は先端材料研究に重点を置いており、施設、機器、そして進行中のプロジェクトについて説明を受けました。午後のセッションでは、私(脇谷)の研究室を訪問し、実験装置と現在行われている研究分野について紹介を行いました。
【7日目(9月21日)】
7日目は午前中のセッションでは日本人の学生が浜松城を案内しました。午後のセッションではグループごとに研究内容の打ち合わせを行いました。
【8日目(9月22日)】
午前中のセッションでは、浜松共同利用機器センターの職員がXRD測定の原理と粉末X線回折計の取り扱い方法の指導を行いました。その後、作製した試料の構成相の分析を行いました。
午後のセッションでは、浜松共同利用機器センターの職員が電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)の原理と装置の取り扱い方法の指導を行いました。その後、作製した試料の微構造観察を行いました。
【9日目(9月23日)】
9日目は、グループ内で進行中の研究の進捗状況の発表、これまでの研究を振り返り、そしてそれらが研究室のより広範な目標とどのように整合しているかを検証し、今後の研究の進め方について議論をしました。
【10日目(9月24日)】
[10:00~11:00] 電子工学研究所の中村教授の研究室を訪問しました。最初に中村教授が研究室、研究者、そして研究分野について紹介しました。続いて、博士課程の学生であるカルナカラン氏が研究室で使用している2ゾーンおよび3ゾーンの化学気相成長(CVD)装置、原子層堆積(ALD)装置、そしてホットウォール堆積装置の装置について説明しました。
[11:00~12:00] 創造科学技術大学院の近藤教授の研究室を訪問しました。近藤教授は、表面弾性波(SAW)に関する研究と、そのセンサー技術における多様な応用について、プレゼンテーションを行い、参加者はSAW技術の理論的側面と実験的側面の両面について包括的に理解することができました。
[14:00~15:30] 電子工学研究所の青木教授の研究室を訪問しました。青木教授からは放射線情報科学分野、特にCdTe X線検出器に関する専門知識について詳細な説明を受けました。
[15:30~17:00] 国際連携推進機構を訪問し、静岡大学における奨学金や国際プログラムに関する様々な機会について話を聞きました。研究生向けの文部科学省奨学金に関する情報提供も行われましたが、応募には静岡大学の教員による推薦・指名が必要です。また、静岡県の産業界と地方自治体が連携して実施するアジアブリッジプログラム(ABP)とダブルドクタープログラムについても説明を受けました。これらのプログラムは、静岡とアジア諸国との連携を強化するとともに、理工学的な視点に立った技術力と経営能力を融合させた人材育成を目指しています。
【11日目(9月25日)】
午前中のセッションでは、共同利用機器センターの職員がEPMA分析装置を備えた電界放出走査電子顕微鏡(FESEM)の原理や使用方法および注意事項を説明し、その後、固体ペレットおよび粉末試料のEPMA分析を実施しました。この実践的な経験は、研究目的で高度な分析機器を活用するための知識とスキルを大きく向上させるものとなりました。
午後のセッションでは浜松共同利用機器センターのラマン分光法の実践的な実習と、準備したサンプルの分析を行いました。15:30~17:00には創造科学技術大学院の原教授の研究室を訪問しました。原教授は、コールドウォール化学蒸着システムの概要と、研究室で現在行われている研究活動について説明しました。
【12日目(9月26日)】
[10:00~15:30] 共同利用機器センターのEPMA分析の続きを行いました。
[15:30~17:00] 電子工学研究所のモラル教授の研究室を訪問しました。モラル教授の研究室は、分子・原子スケールにおける未来のエレクトロニクスのための機能と応用の開発に重点を置いています。
【13日目(9月27日)】
午前中はスズキ歴史館を訪問し、黎明期から現在に至るスズキ自動車の発展の歴史を学びました。午後は方広寺と竜ヶ岩洞を訪問し、浜松の歴史と自然に親しみました。
【14日目(9月28日)】
午前中は、私(脇谷)と研究の進捗状況についてディスカッションを行いました。午後は徒歩で佐鳴湖に行きました。
【15日目(9月29日)】
午前中のセッションでは、福田工学部長、近藤創造科学技術大学院長、青木電子工学研究所長を訪問し、これまでの静岡大学とSRMISTとの人的交流や、今後の科学と教育におけるグローバルパートナーシップの重要性について意見交換を行いました。午後のセッションでは、測定したデータの整理と解析を行いました。
【16日目(9月30日)】
午前中のセッションではラマン分光分析の続きを、午後のセッションではFE-SEM測定の続きを行いました。
【17日目(10月1日)】
これまでに測定した結果についてディスカッションを行った後、発表の準備を行いました。
【18日目(10月2日)】
さくらサイエンスプログラムの講演会(Japan-India Sakura-Science Lecture on Materials Science)が開催されました。最初に脇谷が挨拶を行った後、午前中は静岡大学の坂元准教授による講演「Nanostructure and crystal structure analysis for ceramic materials by TEM」が、午後は東京科学大学の久保田助教による講演「Development of Low-Impact Solution Processes for Inorganic Coatings Using Thermochemical Calculations」と名古屋工業大学の高井教授による講演「Design and Characterization of Hollow Silica Nanoparticles for Emerging Functionalities」が行われ、活発な質疑が行われました。
【19日目(10月3日)】
午前中のセッションでは、研究成果発表会が開催され、7名の研究者がそれぞれさくらサイエンスプログラムの研究成果を発表しました。この発表会では、熱電、水分解、計算研究、色素増感太陽電池など、幅広いトピックが取り上げられました。Priyadharshini S氏とAmuthan氏は熱電に関する研究を、T. Govindaraj博士は電気触媒を用いた水分解に関する研究を、T. Susikumar氏は光触媒によるCO2還元に関する研究成果を、Kanagaraj博士は熱電に焦点を当てた計算手法を、Naskath Sithara氏は光検出器に関する研究を、Athulya O. K氏は色素増感太陽電池に関する研究を発表しました。発表会にはM Navaneethan教授、S Harish准教授と脇谷が参加しました。発表は、個々の研究の進捗状況を示すだけでなく、チーム全体で魅力的で建設的な議論を促し、知識の交換、潜在的な協働の可能性の模索、そして研究全体の方向性の強化につながりました。午後のセッションでは、研究報告書の作成を行いました。
【20日目(10月4日)】
午前中に研究報告書を作成し提出した後、午後は浜松まつり会館を訪問し、大きな凧や御殿屋台を見学しました。その後、浜名湖に浮かぶ弁天島を訪れました。
【21日目(10月5日)】
さくらサイエンスプログラムを通して得た数え切れないほどの豊かな経験の思い出を胸に、一行は日本に別れを告げました。静岡大学で過ごした日々は、貴重な研究体験だけでなく、日本の伝統と現代性の調和への理解を深める文化的洞察も与えてくれたものとなりました。このような機会を与えてくれたさくらサイエンスプログラムに感謝申し上げます。