2025年度活動レポート(一般公募プログラム)第5号 (Aコース)
九州から北アフリカへ:持続可能な農業とアグリツーリズムの学際交流プログラム
九州大学からの報告
2025年9月12日から18日にかけて、モロッコのアル・アハワイン大学(AIU)およびチュニジアのメディテレーニアン・スクール・オブ・ビジネス(MSB)から学生2名・教員2名を招へいし、「九州から北アフリカへ:持続可能な農業とアグリツーリズムの学際交流プログラム」を実施しました。本プログラムは、九州大学国際戦略企画室が中心となり、本学農学研究院・芸術工学研究院、立命館アジア太平洋大学、国東半島宇佐地域世界農業遺産推進協議会の協力を得て実施しました。
【9月12日】
参加者の皆さんは、羽田空港周辺の天候不良により前夜遅くに到着したにもかかわらず、翌朝福岡空港に到着し、意欲的にオリエンテーションに臨みました。オリエンテーションでは、プログラムのスケジュールと達成目標を共有しました。
【9月13日】
本学伊都キャンパスにおいて、世界農業遺産(Globally Important Agricultural Heritage Systems:GIAHS)に関する講義を行いました。GIAHSの理念、国際的な意義や認定基準についての解説に加え、日本、チュニジア、モロッコの各地域が抱える農業や農村の課題を共有しながら、持続可能な農業のあり方や地域産品の価値向上、食文化の継承、アグリツーリズムの可能性について学びました。参加者は、各国の事例を通じて、農業が単なる生産活動にとどまらず、地域の文化や経済、暮らしと深く結びついていることを再認識しました。
【9月14日】
GIAHS(世界農業遺産)の理念や国際的な意義、認定基準を踏まえ、モロッコとチュニジアのグループに分かれて、それぞれの地域における農業遺産候補地や特産品について検討・発表するワークショップを行いました。グループごとの発表を通じて互いの地域の強みや課題を共有し、活発な意見交換が行われました。
午後には、日本有数の売上高を誇る農産物直売所「伊都菜彩」を訪問しました。現地では、地域の農産物がどのようにブランディングされ、消費者に届けられているかを実際に見学しながら、持続可能な農業マーケティングの実践例を学びました。
【9月15日- 17日】
連携科目「創造農村デザイン演習」は、八女茶発祥地として600年の歴史を持つ八女市黒木町笠原地区の「えがおの森」を拠点に農作業×芸術活動を組み合わせた合宿式の演習に参加しました。プログラムでは、地域の伝統文化や農村の暮らしに触れることを通じて理解を深めることを目的に、招へい者は八女茶山歌や踊りの体験、竹林の剪定作業、薪割り、食事の準備などに取り組みました。
村内を歩きながら、自らが魅力的と感じる場所を選び、それらを「インスピレーションスポット」として写真、言葉、音声で記録するアートプロジェクトが実施されました。記録されたスポットは共有され、他の参加者が選んだ場所を訪れることで、視点の違いや地域の多様な魅力を改めて発見する機会となりました。
総括セッションでは、3日間にわたる現地での体験を通じて、現代社会において農村資源や文化を継承することの意味について、参加者それぞれの視点から活発な議論が交わされました。都市空間の均質化が進む中で、地域固有の文化や資源が果たす役割を再考し、食料安全保障や環境保全、文化的アイデンティティの維持、さらには多文化共生の可能性といった多様な観点から、その継承の必要性と根拠を探りました。
【9月18日】
本学筑紫キャンパスにおいて、本プログラムのフィードバックセッションと修了式を執り行いました。
【総括】
参加者からは、日本留学への意欲や交流事業の継続など、前向きな声が寄せられました。本プログラムを契機として、さらなる国際的な学術交流の発展に向けて取り組みを継続していきます。最後に、本プログラムの実現にご尽力いただいたJSTさくらサイエンスプログラム関係者の皆様ならびに、協力いただいたすべての方々に心より感謝申しあげます。