2025年度活動レポート(一般公募プログラム)第4号 (Aコース)
ベトナム3大学とのさくらサイエンス交流
北九州市立大学環境技術研究所からの報告
北九州市立大学では、国際環境工学研究科を中心に10年間にわたりベトナムの大学とさくらサイエンスプログラムによる交流を続けている。招へいしたベトナムの学生をさらに選抜し、同大学院で実施している「戦略的水・資源循環リーダー育成事業」に文部科学省の国費留学生として留学させるスキームはたいへん魅力的で、ベトナムの有力大学や本学と緊密な関係にある北九州市で高く評価されている。戦略的水・資源循環リーダー育成事業は、北九州市等が実施する水環境や資源循環の国際協力事業に本学が教育研究を通じて支援することを狙いの一つとしている。例えば、北九州市上下水道局が実施するベトナムハイフォン市の上下水処理プロセス高度化には、さくらサイエンスプログラムをきっかけに国費留学生として来日した学生が参加し、学位を取得した。おおむね、さくらサイエンスプログラムで招へいした学生の5%が国費留学生に選定されている。
2025年度のプログラムは、9月1日から7日まで実施し、ベトナムの3つの大学(ベトナム国家大学ハノイ校科学大学、ハノイ建設大学、フエ科学大学)から教員2名、学生6名が参加した。これまでの経験を活かし、ベトナムの大学で受講しにくい実習・実験に注力した。
まず、9月1日の朝に福岡空港にてベトナム側からの来訪者を出迎え、日本文化の学習をかねて太宰府天満宮を見学した後、別府の地熱地帯を見て、宿に入った。ベトナムから福岡空港に来る飛行機は深夜便であまり眠れないことが常であるが、移動の貸し切りバス内で休めたこともあり、みなさん元気に宿に入れた。この宿では、別府名物の地獄蒸しができ、近くのスーパーで自分たちで食材を買って調理も自分たちで行った。始めて日本に来た学生にとっては、買い物自体が新鮮な体験のようであった。翌日は、別府海地獄を見学した後、北九州市内平尾台地区の千仏鍾乳洞に入洞した。ここは、洞内に冷水が流れる鍾乳洞で暑い夏の訪問先として良い場所であった。この過程で後日の分析用に水のサンプルを採集した。
9月3日から5日は本学の環境工学分野と情報工学分野の教員と留学生が連携して研究紹介と研究室の見学を行い、また、環境技術の発展と普及に力を入れる北九州市の下水処理場やエコタウンセンター(リサイクル工業団地の見学施設)を訪問した。この中で初日と2日目にサンプリングした環境水の水質分析を行うとともに、下水処理で反応の主体となる微生物の活性を本学施設で分析・検鏡した。また、下水処理場の「運転訓練シミュレータ」を用い、下水処理場の各プロセスにおける運転の最適化や操作不良による処理水質の悪化を体験した。この「運転訓練シミュレータ」は本学が関わった過年度の国交省事業の研究をもとに作成したもので、ハノイ科学大学から留学した当時の留学生がシミュレータの操作画面をベトナム語に翻訳したものである。このように、過去の留学生の成果を実際に見ることで今回参加学生の新たな留学への意欲が増したことと思う。
9月6日は研究発表会である。招へいした学生が送り出し機関でおこなっている卒論・修論テーマを本人の将来ビジョンを交えて発表してもらい、さくらサイエンスプログラムを経由して本学に留学したベトナム人や他国の学生、また、日本人学生も含めて研究交流を行った。この研究発表会は、招へい者が本学に留学する際の研究室マッチングを助けるととともに、本学学生の高度な研究内容を招へい学生に印象づけさせることで再来日・留学の意欲を高めることも意図している。今回も研究発表会は盛り上がり、翌日の帰国に向けて良い思い出となった。