2025年度 活動レポート 第3号:関西学院大学

2025年度活動レポート(一般公募プログラム)第3号 (Bコース)

クリーンエア・プロジェクト ― インドの子どもたちの笑顔と健康を守る国際共同研究

関西学院大学からの報告

この共同研究は、科学技術振興機構(JST)のさくらサイエンスプログラムから生まれました。2024年9月、ビヤニ女子大学の学生6名と引率者であるティワリ・スミリティ博士が来日しました。この出会いがきっかけとなり、12月には我々がジャイプールで開催された日印学術交流イベント「BICON2024」へ招待されて参加しました。

そこで我々はインドで大気汚染が蔓延している状況を目の当たりにしました。急速な経済成長を遂げるインドにおいて、大気汚染は深刻な問題となっており、大気品質指数(AQI)が危機的なレベルに達すると学校閉鎖を余儀なくされるケースもあります。「State of Global Air 2024」によると、大気汚染は世界中で年間約810万人の命を奪っており、中でも5歳以下の子どもたちが最も悪影響を受けています。触媒を専門とする私が「インドの空を綺麗にしたい」という思いを告げると、教育者のティワリ博士は「一緒に子どもたちの笑顔と健康を守りましょう」と応えました。この言葉が、この国際共同研究の礎となりました。

さくらサイエンスプログラムBコース・共同研究活動の一環として、2025年7月21日から8月1日まで、ティワリ博士とアミティ大学およびビヤニ女子大学の学生たち、総勢8名を日本に迎えました。12日間の滞在中、彼らは関西学院大学の私の研究室に加わり、自動車用触媒の試作と評価をしました。また、HORIBA滋賀工場とダイハツ池田工場を訪問し、大気質改善のための企業活動を見学・実習しました。

活動レポート写真1
自分たちで貴金属ナノ粒子触媒をつくりました
活動レポート写真2
ダイハツ工業で自動車エミッション試験を経験しました
活動レポート写真3
堀場製作所にて粒子状物質(PM)分析を実習しました

事前のオンライン交流のおかげで、交流プログラムは初日からスムーズに進みました。田中研究室の学生たちに加えてビヤニ大学からの先輩留学生2名が準備を手伝い、ベジタリアン向けの食事を用意するなど、ゲストの快適な滞在をサポートしました。訪問者8名のうち3名が日本で誕生日を迎え、学生たちがサプライズパーティーを企画してくれました。

特に印象に残ったのは、近江八幡市への文化交流訪問です。参加者たちは、れんがのおうち「子ども食堂」を訪問して、地元のボランティアの方と一緒に本場のインドカレーとスイーツを調理しました。子どもたち23名をはじめ総勢50名が、テーブルを囲んで食事を共にしました。この経験は、言語、国籍、年齢の違いを超え、人々の間に真の絆を育むことを実感させてくれました。子どもキッチンの主催者である前田尚美(よしみ)さんは、「この素晴らしい出会いに深く感謝しています。食と文化を共に分かち合うことで、私たちは真の絆で結ばれていると感じました。今ではインドのニュースを聞くと、とても身近に感じます」と感謝の意を表しました。

ティワリ博士もまた、「今回の訪問は、深く心に響く経験でした。私たちが示された親切、おもてなし、そして心遣いは、本当に素晴らしいものでした。子どもキッチンで子どもたちに料理を作ったことは、特に心温まる体験でした。日本で3人の誕生日を祝えたことは、さらに思い出深いものとなりました。また日本での留学先を探すため教授陣と面談でき、感謝しています。このプログラムは、私たちの研究協力だけでなく、友情と相互尊重の絆も深めることができました。私たちは、この思い出を永遠に大切にします」と振り返りました。

活動レポート写真4
ナマステ!「子ども食堂」インドカレー食事会 笑顔が素敵すぎる!

プログラム終了後、9月には両国の学生たちはジャイプールで開催されたBICON2025で再会し、揺るぎない友情と、科学と教育を通じた大気質改善への共通の決意を再確認しました。このプロジェクトは、日本とインドの学生たちが地球規模の環境課題に取り組む上で、いかに協力できるかを示す事例となるでしょう。学生たちは共通の学びと相互理解を通して、すべての子どもたちにとってより綺麗で健康的な未来への希望を育んでいます。

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