2025年度活動レポート(一般公募プログラム)第1号 (Cコース)
佐渡島の豊かな海を舞台に海洋環境モニタリング手法を学ぶハイブリッド型フィールド研修
新潟大学佐渡自然共生科学センター臨海実験所からの報告
新潟大学佐渡自然共生科学センター臨海実験所(佐渡臨海)では、2025年7月22~29日にかけて、インド、バングラデシュ、マレーシア、ベトナム、香港の5ヶ国・地域の7大学から12名の学部生と大学院生を招へいし、日本国内の大学生とともに海洋生物多様性とそのモニタリング手法を学ぶ国際臨海実習を開催しました。
研修には新潟大学の学部生・大学院生6名も参加し、また国外3名(うち1名はオンライン)、国内1名の教員・研究者を講師として招へいしたことで、合計21名が佐渡の海を舞台に研修を行いました。さらに、研修の一部をオンライン併用のハイブリッド型で開催し、海外から57名が参加しました。
本年度は、深刻化・多様化する海洋環境問題に対応できる人材の育成を目標に掲げて、プログラムの内容を刷新しました。磯での生物採集、調査船でのプランクトン採集といった恒例のメニューに加えて、海洋プラスチック汚染や藻場の減少といった新たな問題に関連したメニューを実施しました。
■佐渡島でのフィールド研修(研修2~6日目)
研修2日目、国内外の参加者が佐渡臨海に集いました。まずは研修に関するガイダンスや日本海の特徴、動物の多様性・分類に関する講義を行いました。3日目の午前はシュノーケリングによる磯生物の採集を行いました。好天に恵まれ、佐渡の海の美しさを堪能することができました。午後は佐渡臨海近くの砂浜でマイクロプラスチックの採集を行いました。その後、フランス国立開発研究所のSylvain Agostini研究員とオンラインでつなぎ、日本近海のマイクロプラスチック汚染に関する講義を受けた後、持ち帰ったサンプルを観察しました。夕食後はハノイ国立教育大学のNguyen Lan Hung So准教授から海鳥の生態と、環境の豊かさの指標としての重要性について講義を受けました。この2日間はオンライン配信を併用し、海外の参加者と一緒に佐渡の海洋生物多様性とそのモニタリング方法を学びました。
4日目の午前中は調査船を用いて透明度の測定やプランクトン、ベントスの採集を行いました。船上からの測定を通して、20m近い透明度を誇る佐渡の海の美しさを実感できました。午後からは磯で採集した海藻と、その中に生息する付着生物の観察を行い、藻場が海洋生物の生育の場として重要であることを学びました。その後、金銀山史跡の見学と、実験所周辺のジオパークの巡検を行い、佐渡島の多様な海岸地形とその成因を学びました。夕食後は砂浜海岸で採集したウミホタルの生物発光を観察しました。ウミホタルの放つ幻想的な光に参加者から大きな歓声が上がりました。
5日目の午前中は、富山大学のIshwar S Parhar教授から化学物質が水生生物の発生や生殖に与える影響について講義を受けました。マイクロプラスチック汚染に引き続き人間活動が海洋生物に与えるインパクトを学んだことで、参加者は海洋環境モニタリングの重要性を改めて認識しました。その後、これまでの採集・観察で得た海洋生物に関する知見をグループで整理し、その成果を発表しました。短い準備期間にもかかわらず、どのグループも研修の成果を実感させる素晴らしい発表でした。
■新潟市・東京での研修(研修7~8日目)
7日目は佐渡島を離れて、新潟市水族館「マリンピア日本海」を見学しました。水族館では佐渡臨海が協力した佐渡島に関する企画展が開催中であり、見学を通じて佐渡島を含む日本周辺の海洋生物多様性への理解を深めることができました。8日目は東京に移動し、国立科学博物館にて生物の進化史や日本の科学技術に関する展示を見学しました。
本研修を通して、参加者は海洋生物多様性と、それを脅かす諸問題ついて理解を深めることができました。また、国や専門分野の異なる学生がともに活動する貴重な体験から、佐渡島での学びがより印象深いものになったと思います。この研修が日本への留学を考えるきっかけになることを期待しつつ、佐渡臨海では今後もこのような交流プログラムを継続・発展させたいと考えています。最後に、本研修の実現にご尽力いただいたJSTさくらサイエンスプログラム関係者の皆様、および、ご協力いただいたすべての方に感謝申し上げます。