2024年度 活動レポート 第84号:茨城大学

2024年度活動レポート(一般公募プログラム)第84号 (Bコース)

低頻度大規模噴火に関するインドネシアとの共同研究

茨城大学からの報告

茨城大学理学部では、2025年2月~3月の3週間、ガジャマダ大学地理学部の学部生8名と教員1名を招へいしました。アジアの火山大国であるインドネシアと日本で起こった巨大噴火を比較研究し、将来の防災対策を考えるというテーマに取り組みました。

2月22(土)早朝、成田空港へお迎えした際に最初に聞いた日本の印象は、「寒い」でした(笑)。熱帯から来たみなさんの率直な感想です。大学の宿泊施設に到着した後は、週末でキャンパスが開いていないため、弘道館や偕楽園などの史跡を見学し、日本の歴史と文化に触れてもらいました。

本プログラムは、1週目のフィールドワーク(野外調査)、2週目の室内分析、そして3週目のワークショップ(研究発表)からなります。野外調査と室内分析では巨大噴火の専門知識とスキルを身につけてもらい、得られた知識とデータをもとにワークショップで活発な議論を行いました。

【フィールドワーク】

最初に、1700万年前の火山の名残である「袋田の滝」を訪れ、迫力ある氷瀑を見ながら「水中自破砕溶岩(ハイアロクラスタイト)」の産状を学びました。その後は、那須地域で約100万年前に発生した巨大噴火(白河火砕流)の堆積物を観察。珍しい岩石・鉱物もさることながら、初めて見る雪景色にみなさん感動を隠せない様子でした。

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白河火砕流に含まれる岩石・鉱物を真剣に観察する様子

野外調査後は、つくばにある産業技術総合研究所の「地質調査センター」を訪問。日本最大の地学総合博物館である「地質標本館」を堪能した後は、特別に所内の研究施設をご案内いただきました。地質調査センターの皆様には、それぞれの装置の仕組みや得られた最新の成果を英語で分かりやすく解説いただき、学生からの質問にも親切に答えて頂きました。

フィールドから帰った後は、茨城大学理学部の学部長と大学院生(TA)も交えて、意見交換会を行いました。「将来留学するならばやはり日本を選びたい」という意見をもらい、とても嬉しく感じました。

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地質調査センターのカリウム・アルゴン年代測定システムを見学する様子

【室内分析】

2週目は、フィールドで採取した岩石試料の化学組成と古地磁気学方位を測定しました。ここでは、茨城大学のTAがやさしく丁寧に、試料の処理法・測定法・解析法を教えてくれて、とてもよいデータを得ることができました。

また、本学で「はやぶさ2」プロジェクトのサンプルを分析した藤谷渉先生の実験室も見学し、貴重な分析機器や隕石サンプルを触らせていただきました。

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分析が終わって外に出るとちょうど桜が咲きはじめていました

【ワークショップ】

これまでの野外調査と室内分析で得られた成果をワークショップで発表し、両国における巨大噴火の特徴や考えうる防災対策などを議論しました。ガジャマダ大学のみなさんは、正装(ユニフォーム)で発表に臨み、プレゼンテーションの技術も非常に高く、日本の学生が学ぶところが多いと感じました。

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さくらプログラムの修了証を授与

寒く、楽しく、充実した3週間もいよいよ終わりを迎え、最後は「科学未来館」を訪れました。地球科学に関する展示も多く、「自然ハザード対策」に資する人材育成は喫緊の課題と認識。本プログラムの意義もあらためて確認できました。国際宇宙ステーション内で撮影されたドキュメントムービーも感動的で、みなさん見入っている様子でした。われわれは誰もが「宇宙船地球号」の乗組員であり、未来に恥じない生き方をしないといけません。

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未来館のジオ・コスモスを背景に

最後は、羽田空港でお別れ。最後にみなさんから頂いた率直な感想は「短い」、「もっと日本にいたい」でした(涙)。もっと成長して必ず日本に戻ってください!

JST、茨城大学、国立那須甲子少年自然の家、産総研地質調査センター、ほかご協力頂いたすべてのみなさまに感謝申し上げます。ありがとうございました。