2024年度活動レポート(一般公募プログラム)第82号 (Aコース)
乾燥地ジブチの森林保全を担う次世代の人材育成
東京農業大学
助教 檜谷 昂さんからの報告
本プログラムは、深刻な森林劣化と砂漠化の問題に直面しているジブチ共和国において、森林保全と持続的な管理に貢献できる次世代人材を育成することを目的に実施されました。東京農業大学は、過去30年にわたり同国での砂漠緑化プロジェクトを展開しており、今回のプログラムは、これまでの研究協力の実績とネットワークを生かしたものです。招へい者はジブチ大学理学部の学部生7名と教員1名で、2025年1月22日から29日までの8日間にわたり、東京農業大学(世田谷キャンパス)を拠点に各種プログラムが実施されました。
初日には交流プログラムの趣旨説明と研究施設の見学を行いました。東京農業大学に併設されている「食と農」の博物館では、日本の農業、食文化、環境に関する展示や、バイオリウム内の乾燥地植物などを見学しました。また、同日には学生交流会も実施され、招へい者によるジブチの自然環境や文化、社会に関するプレゼンテーションが行われました。日本人学生からも日本文化や森林資源に関する紹介があり、互いの国の特徴について理解を深める貴重な機会となりました。

続く3日間(1/24〜1/26)は、森林科学を主軸とした実践的なワークショップが実施されました。1日目は「木材解剖学と年輪気候学」と題し、樹木年輪から気候情報を読み解く手法を学びました。2日目は「安定同位体による植物の水利用起源解析」をテーマに、水の安定同位体比を用いた乾燥地植物の水利用特性に関する実習が行われました。3日目は「樹木年輪による気候復元」と題し、年輪セルロースの抽出方法や安定同位体比質量分析計(IR-MS)などの先端機器を用いた分析手法を体験しました。


1月27日には、ジブチと日本の学生が混成チームを組み、「ジブチの森林と生物多様性保全」をテーマとしたブレインストーミングおよび発表を行いました。異なる背景を持つ学生同士が対話を通じて理解を深め、協力して課題解決を目指す力を養う機会となりました。また同日の午後には、日本科学未来館を訪問し、環境技術や持続可能な社会に関する展示を見学しました。

1月28日には、学外見学として森林総合研究所および筑波実験植物園を訪問しました。森林総研では藤間剛研究員による講義と施設案内を通じて、日本における森林研究の最前線に触れることができました。続いて訪問した筑波実験植物園では、奥山雄大研究主幹の案内のもと、多様な気候帯の温室群を見学し、さまざまな植物の特性や適応戦略について学びました。ジブチ共和国には我々のよく知る植物園のような施設はありません。植物の保存、展示、教育機能を備えた施設を訪れるのは招へい学生にとって初めての経験であり、植物多様性保全の重要性を実感する貴重な機会となりました。


最終日(1/29)には意見交換会を実施し、参加者は1週間の活動成果を振り返るとともに、今後の学術的展望や進学意欲について意見を共有しました。本プログラムは、ジブチにおける森林保全および環境分野に携わる次世代人材の育成と、日本との研究・教育連携の強化に資する重要なステップとなりました。
本プログラムの実施にあたり、ご支援・ご協力を賜りましたすべての関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。特に、本事業の実現にあたり多大なご支援をいただいた科学技術振興機構(JST)ならびに学外見学を受け入れてくださった森林総合研究所および筑波実験植物園の皆様に深く御礼申し上げます。

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