2024年度活動レポート(一般公募プログラム)第80号 (Aコース)
畜産と養蚕の伝統産業融合が創出する先端的感染症防除法がもたらす農業振興
東京農工大学からの報告
2025年2月26日から3月4日にかけて、ガーナ大学、フィリピン大学、ベトナムのカントー大学より、教員・研究者・大学院生の計9名を日本にお迎えしました。今回のプログラムでは、「組換えカイコによる経口ワクチン開発」をテーマに、カイコおよび養蚕に関する講義・実習、獣医領域での感染症防除に関する講義、さらには組換えカイコを用いた小鳥用経口ワクチンの開発に関する実験体験を実施しました。
プログラムは、カイコと養蚕に関する講義・実習からスタートしました。参加者9名のうち8名が獣医師であり、これまでカイコに触れる機会がなかったこともあり、未知の世界に対して強い関心を示していました。カイコの卵から幼虫、蛹に至る各段階の標本を実際に手に取りながら、養蚕の奥深さを学んでいただきました。また、実体顕微鏡を用いたカイコの解剖や、蛍光色素を組み込んだ組換えカイコの発光観察も行いました。

東京農工大学科学博物館の見学では、日本の養蚕の歴史や皇室との関わり、実際に使用されてきた器具や製糸・機織り機械などを見学しました。中でも、製糸技術の進歩がトヨタ自動車の発展に繋がっているという説明には、参加者一同深い感銘を受けていました。

意見交換会では、手巻き寿司を中心に交流を深めました。おでん、鶏の照り焼き、菜葉のお浸しなども用意され、日本の食文化を通じた温かな交流の場となりました。参加者同士で具材や巻き方を工夫し合いながら、親睦をさらに深めることができました。

後半のプログラムでは、バイオセキュリティに関する講義を行い、感染症防除の現場として東京農工大学小金井動物救急医療センターを見学しました。CTやMRI、放射線治療装置、最先端の手術室、感染症専用の診察室など、日本の高度な動物医療設備を実際にご覧いただきました。

また、カイコで発現させたタンパク質を用いた小鳥用ワクチンの研究の一部を体験していただきました。参加者は、鳥の白血球分離、次世代シークエンサーによるデータ解析、宿主遺伝子発現のリアルタイムPCR、さらにタンパク精製装置AKTAを用いた精製操作にも取り組みました。

プログラム終盤では、今後の国際共同研究の可能性について、予算候補の説明や研究テーマに関するディスカッションを行いました。今後の連携強化に向けて、実り多い時間となりました。招へい者による最終発表をもってプログラムを締めくくり、空港までの送迎にて名残を惜しみながらお別れしました。
最後に、本プログラムの実施にあたり、多大なるご支援を賜りました「さくらサイエンスプログラム」ならびに、東京農工大学の教職員および学生の皆様に、心より厚く御礼申し上げます。
