2024年度 活動レポート 第70号:広島大学

2024年度活動レポート(一般公募プログラム)第70号 (Dコース)

さくらサイエンスプログラムD.相補的年間交流コース活動レポート

広島大学大学院先進理工系科学研究科
教授 大下 浄治さんからの報告

今回、2024年度のD.相補的年間交流コースに採択され、2024年12月から2025年3月にかけて相互訪問を核とした交流を実施することができました。広島大学とインドのBITS Pilani(バーラ技術科学大学ピラニ校)で行われた本交流事業は、有機元素化学をベースとした材料開発、および有機合成と光機能評価というそれぞれの大学の研究者が持っている強みを生かして、積極的な共同研究を推進することを目的としており、このため新規の有機π電子系ホウ素錯体の合成と光触媒機能の評価を新しいテーマとして具体的に設定し、広島大学とBITS Pilaniの教員と複数の学生がそれぞれの大学を相互に訪問し、単にセミナーなどによってお互いの知見を交換するだけではなく、実践的な学術交流を進めることを強く意識して、共同実験を行いました。

活動レポート写真1
広島大学にて

広島大学大学院先進理工系科学研究科の有機元素材料化学研究室とBITS Pilani化学科のKumar教授の研究グループとの間では、発光機能を持つ新しいπ共役系材料の合成に関して、5~6年間にわたる共同研究の実績があり、2報の共同論文をすでに発表しています。今回の交流事業では、まず、分子軌道計算に基づく分子設計など、双方での予備検討の結果を踏まえて、オンライン会議などを利用して具体的な共同実験の実施計画を確認しました。
その後、それぞれ10日間程度の相互訪問で、BITS Pilaniでオリジナルな手法によって合成された新規な配位子を用いたホウ素錯体の合成をBITS Pilaniの大学院生が広島大学で行うとともに、広島大学で合成している別の新規有機π電子系ホウ素錯体の光触媒機能の評価を広島大学の大学院生がBITS Pilaniで実施しました。また、それぞれの教員が訪問先で講演会を開催し、さらに研究室メンバーとのセミナーで、より深いディスカッションを行いました。最後にまとめのセミナーをオンラインで開催し、各大学における実験の成果を報告するとともに、今後の活動方針などについて話し合いました。

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広島大学にて
活動レポート写真3
BITS Pilaniにて
活動レポート写真4
BITS Pilaniにて

このような相互訪問による交流活動の結果、実験的な成果が得られたことは言うまでもありませんが、教員・大学院生の間での相互理解が急速に深まり、新しい展開を含めた将来的な共同研究の構想を共有することができたことは有益な成果だったと考えています。この活動は、共同研究の活性化以外にも、それぞれの大学院生の実験技術や知識の面でのスキルアップ、視野の拡大、国際的コミュニケーション能力の涵養といった観点でも、双方にいい影響があったと強く感じています。

また、直接かかわっているホスト研究室にこだわることなく、それぞれの訪問先で、多くの研究者・大学院生と幅広く学術交流・ディスカッションを行うことができました。ほかにも各大学のマネジメント層との意見交換も行うことができ、本交流事業が新しい共同研究・頭脳循環などの良いきっかけとなるとも期待しています。最後に、今回、短い準備期間の中で効率的な交流事業を実施することができましたが、御協力・御支援いただいた関係部署の皆様に感謝申し上げます。

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