2024年度 活動レポート 第40号:名古屋大学

2024年度活動レポート(一般公募プログラム)第40号 (Aコース)

コンクリート構造物の建設・維持管理技術に関するインド大学生との交流

名古屋大学からの報告

 名古屋大学工学研究科土木工学専攻コンクリート研究室では、2024年11月24日から1週間にわたってインド工科大学(以下IIT)デリー校土木工学科にてコンクリート材料工学を学ぶ大学院生(全てPhD学生)7名、教員1名を招へいした。インドでは、現在高速鉄道を始めとしたインフラ整備が急速に進められている。一方、日本では建設だけでなく維持管理に重点を置いた研究や技術開発が多くなってきている。このような現状を踏まえて、双方の研究の現状を教員・学生が理解するとともに、名古屋大学の様々な取り組みや、日本の建設技術・維持管理技術の理解を深めてもらうようなプログラムを行った。ここでは期間中の主な活動を紹介する。

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名古屋大学とIITデリー校の教員と学生

① 両大学の大学院生および教員による研究発表

 名古屋大学およびIITデリー校の大学院生がそれぞれの研究内容について発表し、討論を行った。また、教員による日印のコンクリート工学研究の現状についての講義も行われ、日印双方の学生が熱心に耳を傾けていた。研究発表や講義をきっかけに互いの研究内容に関心を持ち、お互いの知見をどのように活かせるかとの意見交換から、今後の共同研究へと発展させる議論も行われた。

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IITデリー校院生による研究発表

② 名古屋大学の研究・教育施設の見学

 土木技術に関係する学内施設として、巨大地震や風水害の被害や軽減策を学ぶことができる減災館の見学を行った。南海トラフ地震が発生した際の被害想定、免震などの耐震技術などに参加者は大きな興味を示した。また、土木工学専攻の各研究室の実験室の見学を行い、コンクリート実験室の見学では、研究発表に関連した実験装置を直接見て改めて具体的な質問をしていた。

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コンクリート実験室で説明をする日本人女子学生

③ N2U-Bridgeによるコンクリート橋の維持管理研修

 N2U-Bridgeとは、橋梁の維持管理研修を目的に名古屋大学内に設置されている多様な劣化パターン有する実橋梁を使用したモデル橋である。参加者は、点検ハンマーや赤外線サーモグラフィーなどを用いた実際に点検現場で行われているのと同様の空洞探査などにも取り組んだ。急速に交通インフラの整備が進むインドにおいても必要になる技術であり、実践的な研修内容に意欲的に取り組んでいた。

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赤外線サーモグラフィーを用いた空洞検査に取組む

④ 鉄道橋梁の架け替え工事とトンネル建設工事の現場見学

 JR東海東海道線の橋梁の架け替え工事を見学した。参加者からは鉄道が運行されていない深夜帯での作業や既設構造が存在する条件下での工事方法などについての質問が寄せられた。また、長期に使用するインフラでは建設時に改築も想定した設計が大切であることなどの説明には参加者全員が大いに納得していた。

 同日に東海環状自動車道養老トンネル南工事の現場見学も行った。参加者は特に、履工の工程における防水シートの設置やその後のコンクリート吹付作業に関心を持った様子で、工事担当者に詳細について質問していた。

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トンネル吹付工事の説明

 全活動終了後に参加者からは、コンクリート工学分野における日印間の共同研究を進めるべきだとの声や、インドにおける鉄道や道路などのインフラ整備においては50年度、100年度を見通した計画・設計・施工が必要だと実感したとの感想があった。また名古屋大学関係者も土木工学分野における日印共同人材育成の重要性を再認識した。最後に、このプログラムを実施するにあたりご尽力いただいたJSTさくらサイエンスプログラムおよび名古屋大学の皆様に感謝申し上げます。