2024年度活動レポート(一般公募プログラム)第34号 (Aコース)
都市・農村の連携による環境問題解決に資する科学技術を学ぶ
京都大学からの報告
急速な発展を遂げているベトナムでは、その経済的な繁栄の陰で、大量に発生する廃棄物による環境汚染や貧富の格差拡大といった環境問題・社会問題が大きな課題となっており、対策の構築は喫緊の課題です。これら複合的かつボーダレスな環境・社会問題の解決には、従来の専門学術分野の深化に加えて、社会・制度的対応も視野に入れた学際的かつ国際的な取り組みの中で高度な学術知識を集結する必要があります。
本交流プログラムは、環境問題に対する日本の実践現場における研修やベトナム人留学生との交流などを通して、日本の最先端の科学技術への関心を高め、海外の優秀な人材の日本への留学を促すことを目的として、2024年11月17日~23日現地研修を実施しました。参加者は、フエ農林大学から4名、フエ科学大学から2名、ダナン大学工科大学から2名の計8名でした。
現地研修に先立つオンライン講義計3回では、来日時の研修概要説明に続き、地理情報システムの原理、日本の農業と環境、日本の農村・里山と環境、日本の都市と環境、日本の農村地域における新たな建築の試みと環境について、当研究科の教員が説明しました。現地研修では、京都市南部クリーンセンター環境学習施設(さすてな京都)および滋賀県湖南中部浄化センターといった環境関連施設を見学しました。合わせて、町でのゴミの分別の様子を目の当たりにして、本国でゴミ処理についてなすべきことが多くあることに気づいたようでした。
京都市郊外の農村を訪れた際には、獣害によって減少したチマキザサを、地域・行政・大学が共同で回復させようとする取り組みを紹介したり、茅葺き家屋の維持に必要な茅を収穫したりする作業にも自ら取り組みました。里山の景観保全にも力を注いでいるお菓子屋さんラコリーナ近江八幡では、里山の知恵を生かした建築について学びました。少子高齢化に伴い、里山の営みの維持が難しくなっている中でも、意欲的に取り組む地域の人々に触れられたことに感謝していました。
いずれの研修にも、ベトナム滞在経験のある本学学生が参加し、ともに学ぶ機会を提供しました。また、当研究科に現在留学中のベトナム人大学院生との交流の機会も提供し、留学に対する具体的なイメージが喚起されるようにしました。
現地研修最終日には、4グループに分かれて、成果を発表しました。その各テーマは、京都市郊外の農村景観、廃棄物処理、自然に溶け込んだ建築、ゴミの分別に関するもので、各発表後には、本実習に参加した本学学生や教員と活発な質疑応答がありました。現地研修終了後は、当研究科主催の国際シンポジウムにおいて、オンラインで成果を発表しました。これらの活動により、日本への留学意欲がさらに高まったようでした。