2024年度 活動レポート 第33号:福山平成大学

2024年度活動レポート(一般公募プログラム)第33号 (Aコース)

先端的な情報通信技術(ICT)を活用した持続可能な高齢者ケア

福山平成大学からの報告

 2024年11月10日から16日にかけて、福山平成大学福祉健康学部福祉学科がタイのプリンスオブソンクラー大学(PSU)医学部の学部生7名、教員1名を招へいし、日本における先端的な情報通信技術(ICT)を活用した持続可能な高齢者ケアを学ぶプログラムを実施しました。事前に2回のオンライン会議を開き、両国の学生・教員が日本やタイの医療制度、高齢者ケアについて学び、当日を迎えました。

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第2回 オンラインミーティングの様子

 滞在期間中、日本の高齢者ケアにかかる制度や介護現場で導入が進みつつある先端的なICTやAI機器について、講義や演習、高齢者施設への見学を通して学びました。今回の講義・演習で取り上げた機器は主に4種類あります。

 一つは、高齢者の体動を検出し、睡眠状態を可視化するセンサーです。ベッドマットレスの下に敷いたシート状のセンサーで人の体動(寝返り、呼吸、脈拍など)を検出し、睡眠状態を測定します。センサーを用いた見守り支援システムは助成の対象にもなっており、全国で導入が進んでいます。今回の演習では、「眠りSCAN」を使用し、施設では「LIFELENS」の実際の運用を見学しました。

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眠りスキャンの使用方法を解説する様子

 二つ目は、排泄予測機器です。これは超音波センサーを使用して膀胱内の尿のたまり具合を測定し、排尿のタイミングを通知・分析する機器です。排尿のタイミングを「見える化」することで、通知をもとにトイレ誘導やおむつ交換を適切に行うことが可能になります。今回は「DFee」を使用しました。

 三つ目は全自動運転体圧可視化ロボティックマットレスです。従来の床ずれ防止エアマットレスは操作が難しく、除圧ができているかの確認が可視化できませんでした。新しいマットレスは全自動運転が可能で、さらに見守り機能が付いており、臀部周辺の圧の可視化が体圧分布モニターによって可能です。それにより確実な圧対策とポジショニングケアが実現でき、教育にも活用できます。モニターで体圧を色と形で確認できることにPSUの方々も驚いていました。今回の演習では「スコープ」を使用しました。

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スコープを使って体圧分布の状況をはかる演習

 四つ目は、ノーリフティングケアで用いる移動・移乗に関する介護ロボットです。介護者一人で移乗・移動のケアが可能なことを理解するために、演習では立位保持をサポートする「移乗サポートロボットHug」、座位のままベッドから便器に移乗できる「排泄サポートリフトonbu」、ベッドから車いすへの移乗に床走行式電動リフトを使用しました。PSUの方には主に介護される側を体験してもらいましたが、安全で心身に負担が少ないことを体感したようです。

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移乗サポートロボットHugを使った演習

 大学内での講義・演習の後は、広島県内でICTを導入した先駆的な取組みをしている高齢者施設に出向き、施設でICT等の機器がどのように使われているかを学びました。

 室内に見守りカメラやセンサーが設置されている施設では、必ず本人の許可を得て設置していること、終末期にはセンサーを活用しながら、本人への負担を少なくするケアを行っていること等を職員から聞きました。複数の機器を組み合わせることで、利用者が安全に暮らせるよう、工夫されていました。PSUのメンバーからは、機器を導入する費用や対象となる人の選定等、多くの質問が寄せられました。

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施設見学の様子

 本プログラムでは、多くの活動を日本人学生と一緒に取組みました。休憩時間には、互いに好きな日本のアニメを説明し、お勧めの日本食の話をするなどして、交流を深めました。
 医学を学ぶPSUの学生からは、「日本の取組みを学べてよかった」、「将来医師となる自分にとってこの体験は貴重だった」といった感想が述べられました。彼らは、どのプログラムにも熱心に取り組み、その姿勢は一緒に活動した福山平成大学福祉学科の学生にもよい影響がありました。本プログラムを実施するにあたりご尽力いただいた関係者の皆様に感謝申し上げます。

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訪問先の施設で職員とともに記念撮影