2024年度 活動レポート 第30号:新潟大学

2024年度活動レポート(一般公募プログラム)第30号 (Cコース)

豊かな佐渡島の海を通してインド・太平洋の海洋生物多様性を学ぶ
ハイブリッド型フィールド研修

新潟大学からの報告

 新潟大学佐渡自然共生科学センター臨海実験所(以下、佐渡臨海)では、2024年9月20~29日にかけて、インド、バングラデシュ、マレーシア、ベトナム、香港の5カ国・地域の6大学から12名の学部生と大学院生を招へいし、海洋生物多様性とその調査手法を学ぶ研修を実施しました。

 本研修の前半(9/21-25)は、佐渡島の海をフィールドに国際臨海実習を実施しました。実習には、自己資金招へい者として国外の大学から3名、国内の大学から1名の教員を講師として招くとともに、佐渡臨海に滞在中のチャットグラム獣医動物科学大学(バングラデシュ)の研修生3名、公開臨海実習として参加した国内の5大学の学生5名、新潟大学の学生8名も参加しました。さらに、昨年度に引き続き、実習の一部をオンライン併用のハイブリッド型で実施し、海外から計34名が参加しました。

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臨海実験所前での集合写真。国内外合わせて32名が現地参加しました。

 後半(9/26-28)は、新潟大学理学部が主催する国際会議「The 5th International Congress on Natural Sciences with Sisterhood Universities 2024 (ICNS2024)」に出席しました。本会議には、新潟大学理学部と交流協定を結ぶアジア11カ国29大学からの学生・研究者125名を含む281名が参加し、本研修の招へい者もここで研究発表を行いました。

【研修2~6日目】

 2日目は、本研修のガイダンスを行った後、日本海の特徴、動物の多様性と分類について講義を行いました。3日目の午前は、コーチン科学技術大学(インド)のA.A. Mohamed Hatha教授から持続可能な水産養殖の取り組みに関する講義があり、その後、佐渡臨海前の岸壁で海洋生物を採集しました。午後は、大阪公立大学の安房田智司教授が魚類の多様な繁殖様式についての講義を、また、バングラデシュ農科大学のMd. Shahjahan教授が水産魚種の気候変動に対するストレス応答についての講義を行いました。加えて、ウニの人工授精と胚発生の観察、午前中に採集した海洋生物の観察を行うとともに、代表的な海洋生物の動物門ごとの特徴を解説しました。この2日間の実習はハイブリッド型で開催し、現地参加者とオンライン参加者を交えて佐渡島の海や海洋生物多様性について学習しました。

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オンライン参加者の集合写真

 4日目の午前は、シュノーケリングによる磯生物の採集を行いました。初めて海に入る参加者もいましたが、実演を交えて採集方法を細かく説明していたため、楽しく安全に取り組むことができました。午後は、佐渡島内の特徴的な海岸地形を巡検した後、モナッシュ大学マレーシア校の曽我朋子准教授から魚類をモデルとした社会的ストレスの神経生理学研究についての講義を受けました。夜はウミホタルの生物発光の観察を行いました。

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シュノーケリングによる磯採集

 5日目の午前は、調査船アイビスⅡを利用して、プランクトンの採集と海洋データの計測を行いました。午後からは、これまでの採集・観察で得た知見をグループでまとめて発表する成果発表会を行いました。各グループが一つの動物門を担当し、各自が描いた生物のスケッチを示しながらその特徴を解説しました。どのグループも各動物門の要点をおさえた内容となっており、研修の成果がよく表れていました。

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グループ発表の様子

 6日目は、新潟に移動して国内からの参加者と解散した後、新潟市水族館「マリンピア日本海」を訪問しました。日本各地の海岸線を再現した展示を通して、海洋生物多様性について理解を深めました。

【研修7~9日目】

 新潟大学五十嵐キャンパスで開催された国際会議ICNS2024に参加し、自身の研究について口頭発表を行うとともに、アジア各国の学生、研究者と専門分野を超えた交流を行いました。

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ICNS2024会場での集合写真

【オンライン報告会】

 11月8日に事後報告会をオンラインで実施し、それぞれの近況や日本での経験を今後のキャリアにどう生かしていくかについて発表しました。また、本プログラムに参加していた研修生3名が佐渡臨海での研究について発表しました。

 本年は、ハイブリッド型研修の継続に加えて、国際会議ICNS2024への参加、オンライン報告会など新規の取り組みもあり準備や進行が大変でしたが、その甲斐あって従来よりも国際交流の輪を大きく広げることができました。また、佐渡島での実習を通して、海洋生物多様性の重要性や研究の面白さを感じてもらえたと思います。この研修が将来の日本への留学のきっかけになることを期待しつつ、佐渡臨海では今後もこのような交流プログラムを継続・発展させたいと考えています。最後に、本研修の実現にご尽力いただいたJSTさくらサイエンスプログラム関係者の皆様、およびご協力いただいたすべての方に感謝申し上げます。