2024年度活動レポート(一般公募プログラム)第26号 (Aコース)
半導体技術や宇宙観測技術における日本の先端科学について学ぶ体験交流
広島大学からの報告
2024年9月1日から7日にかけて、広島大学東広島キャンパスの宇宙科学センターと半導体産業技術研究所は、インドのSR大学とコルカタ工科管理大学から学生6名と教員2名を受け入れました。
広島大学では従来半導体研究が盛んで、インドからの引率教員2名(SR大学 Sandip Bhattacharya教授、コルカタ工科管理大学 Subhajit Das准教授)もそれぞれ広島大学に在籍して半導体研究を行った経歴を有しています。また、キャンパスの近隣にマイクロンメモリジャパンの主力工場があり、その親会社が設立したマイクロン・テクノロジー財団と広島大学は学術協力協定も締結しています。
一方、宇宙科学センターは最先端の半導体検出器を用いた多波長天文学研究を推進しており、口径1.5mの「かなた」望遠鏡を備えた東広島天文台も運用しています。今回の招へい者は、日本における最先端の半導体工学に興味をもつ大学生、大学院生であり、本プログラムによって広島大学との学術交流がさらに活性化し、大学院生やポスドクとしての往来や産学も含めた研究交流が自然に発展していくことが期待されます。特に、最新の半導体工場の設備や最先端の半導体検出器が応用されている天文観測施設や装置開発現場を見学し、現地の研究者や学生と意見を交わすことによって好奇心や向上心を刺激し、実践力を備えた研究者や技術者に育っていくための後押しにもなるよう、日程を組みました。
【1日目】
招へい者一行が、羽田空港を経由して広島空港へ到着。その後、東広島キャンパスに移動してゲストハウスにチェックインしました。広島空港では本プログラムの実施担当者である宇宙科学センターの川端弘治 教授と、連絡担当者である半導体産業技術研究所の三宅正尭 准教授が出迎え、ゲストハウスまで案内しました。
【2日目】
東広島キャンパスにて、参加者の自己紹介とプログラムの概要説明、キャンパスツアーを行ったあと、東広島天文台へ移動して、かなた望遠鏡やその観測装置、4D宇宙シアターに触れながら、天文学と観測技術に関するセミナーを実施しました。講師の一人として、先進理工系科学研究科の高エネルギー宇宙観測グループに在籍しているインド出身のポスドクAbhradeep Roy氏にも協力していただいて、X線・ガンマ線観測天文学や、最新の観測衛星で用いられている半導体検出器の解説も行いました。日没後、かなた望遠鏡を用いた眼視での天体観望を楽しんでもらったあと、東広島天文台を後にしてゲストハウスへと戻りました。
【3日目】
国内最新鋭の大型望遠鏡とその観測装置群を見学するため、招へい者と実施担当者一行は岡山県浅口市にある竹林寺山を訪れました。ここには、口径3.8m「せいめい」望遠鏡を擁する京都大学岡山天文台と、1.88m望遠鏡などを擁する国立天文台ハワイ観測所岡山分室があります。現地では、国立天文台の泉浦秀行 准教授に案内していただきました。せいめい望遠鏡では、18枚の分割鏡で構成される国内最大の主鏡が圧巻でした。また、1.88m望遠鏡では、普段は温度管理をしているクーデ室への入室を特別に許可していただいて、高分散分光器HIDESの光学系を間近に見学することができました。東広島天文台では観測装置の中を見ることはできなかったこともあり、招へい者の学生からは分光器を構成する光学素子やその仕組みについて様々な質問がなされました。また、HIDESでの正確な波長キャリブレーションに用いられるレーザーコムの装置にも興味を抱く人も多かったことが印象的でした。最後に、岡山天文博物館を訪れ、様々な展示物を見学して帰途につきました。
【4日目】
厳重に情報管理された最先端の半導体製造工場、マイクロンメモリ広島工場を招へい者が連絡担当者らと共に訪れました。20名近くのスタッフに温かく迎えられ、まずは交流会を行いました。招へい学生たちからインターンシップの機会などについて多くの質問が寄せられました。
その後、クリーンウェア(クリーンルーム内で着用する専用の服)を着てクリーンルーム(微細な粒子を極力排除した作業環境)に入りました。招へい者らは、同じ種類の装置だけでも何十メートルも先まで立ち並ぶ規模感に驚き、半導体ウエハーが自動搬送ロボットによって次から次へと運ばれていく様を間近で目の当たりにしました。
【5日目】
翌朝は、広島大学半導体産業技術研究所(RISE)のクリーンルーム(写真参照)に入り、同研究所教授により、小回りの利く研究用の設備を活かした解説を頂きました。招へい者らは前日とは違った視点で非常に感心していました。
午後は同研究所のJ-Innovation HUB棟にて、最先端の半導体評価用の計測装置や、無線通信の研究用の電波暗室等を見学しました。その後、交流室多目的スペースにて日印双方の参加学生に自己紹介をしてもらいました。学生同士が自然に交流することができ、非常に良い驚きでした。
同日夕方には、学内施設のミライクリエにて、成果発表会および交流会を実施しました。1日目から5日目までの招へい者目線での体験を参加者全員で共有することができ、非常に有意義な時間となりました。
【6・7日目】
6日目は学内の総合博物館を見学後、広島市へ移動し、平和記念公園と平和記念資料館を訪れ、被爆者の経験した地獄とその後の苦悩について学びました。最終日は、連絡担当者が羽田空港まで同行し、手荷物検査場にて招へい者8名を見送りました。
以上の7日間をもって、日印双方の参加者にとって長く記憶に残る体験となりました。このような貴重な交流の機会を与えていただいたJSTの皆様、並びに、ご支援・ご協力をいただいた多くの関係者の皆様に深く感謝申し上げます。