2024年度 活動レポート 第24号:早稲田大学

2024年度活動レポート(一般公募プログラム)第24号 (Cコース)

ベトナムの若手教員のための環境分析装置および先端分析手法に関する研修

早稲田大学からの報告

 2024年9月30日から10月8日にかけて、ベトナム国家大学ハノイ校の自然科学大学(VNU-HUS)を中心とした8名の教員が日本を訪れ、環境分析装置および先端分析手法に関する研修を行いました。VNU-HUSはベトナムの自然科学分野におけるトップ校であり、今回の研修は、環境問題や食品汚染といった課題に対応するための分析化学技術の向上を目的としました。この訪問は、従来から続くVNU-HUSとの交流関係を基盤に、さらなる技術教育の発展を目指したものです。参加者の皆さんは、初日から日本の文化にも触れて、その細やかな配慮や技術の高さに深い感銘を受けていました。

活動レポート写真1

【株式会社堀場製作所訪問】

 ラマン分光法の座学講習と実機を使ったマイクロプラスチック分析のトレーニングを実施しました。分光法の基礎理論と応用について学び、同社のラボで装置を用いた実践的な分析手法を体験しました。

【東亜ディーケーケー株式会社訪問】

 大気および水質モニタリングの技術について研修を受けました。大気モニタリングでは、PM2.5、SO2、NOx、CO、O3の環境モニタリングガイドに基づく測定方法や装置のメンテナンスについて学習しました。水質モニタリングでは、NPW、COD、OPM、SS、pH、EC、DOといったパラメーターの測定手法と維持管理の重要性を学び、実機を使用した操作訓練を通じて具体的な技術を習得しました。同社での講習では、多種類の分析装置に実際に触れる機会があり、参加者の皆さんはベトナムとの違いなどについて、多くの質問をされていました。

活動レポート写真2
環境分析装置の講習1
活動レポート写真3
環境分析装置の講習2

【日本分光株式会社訪問】

 赤外分光法に関する講義と模擬マイクロプラスチックサンプルを用いた実習が行われました。マイクロプラスチックは最近ベトナムでも環境汚染の問題として注目されており、研修ではその測定方法と分析技術の習得に重点が置かれました。参加者は赤外分光光度計を用いて、マイクロプラスチックの定性解析やサンプルの特性評価を実習形式で学び、装置の操作方法からデータ解析までの一連の流れを体験しました。

【早稲田大学北九州キャンパスでの研修】

 マイクロデバイス技術の座学講習を受け、PDMS(ポリジメチルシロキサン)を用いた液滴実験や空圧ポンプの操作に関する実習を行いました。また、高感度分析の熱レンズ計測法の講義では、分析技術の原理と応用について学びました。参加者の中には、ベトナムでマイクロデバイスを用いた研究を行っている方もおり、興味深そうに講習に取り組んでいました。
 熱レンズ計測の実習では、環境分析用のモリブデン検出キットを用いた測定を通じて、高感度測定の手順を学びました。使用した装置は1マイクロリットルレベルの液量でも測定可能な熱レンズ計測装置で、精密な計測技術の実体験に役立ちました。

活動レポート写真4
液滴の実験風景
活動レポート写真5
PDMSデバイスの作製

 最終日には、参加者から「今後も研究やプロジェクトを通じて継続的に交流を深めたい」という意見が寄せられました。現在、VNU-HUSと早稲田大学を中心に、ベトナムの環境問題の解決を目指すSATREPSプロジェクトが進行中で、今回の参加者の中にはこのプロジェクトに携わっている研究者も含まれています。また、今回のさくらサイエンスの研修で行った環境分析は、このプロジェクトの課題とも共通しており、参加者からは今回の講習で得た知識や技術を今後ベトナムでの研究や教育活動に役立てたいという声もありました。このように、技術協力と教育のさらなる発展が期待されます。本研修が成功裡に実施されたのは、JSTをはじめ、多くの方々のご支援のおかげです。この場を借りて深く感謝申し上げます。