2024年度活動レポート(一般公募プログラム)第12号 (Aコース)
タマサート大学の学生が精密合成法を利用した高分子合成を学ぶ
大阪工業大学からの報告
JSTさくらサイエンスプログラムを利用して、タマサート大学(タイ)との国際交流を2024年8月5日~2024年8月11日までの日程で行った。本プロジェクトではアニオン重合を基盤とする材料開発、SPring-8の施設見学を通じて、日本の高い技術力をタマサート大学の学生に知ってもらうこと、さらに日本人の学生に対して英語でのコミンミュションに基づくグローバルな人材育成を目指すことを目的とした。大阪工業大学、タマサート大学からそれぞれ8名の学生が参加した。
本プログラムを円滑に進めることを目的として、2024年7月30日にオンラインにおいて本プログラムの日程および実施内容の説明、自己紹介を行った。画面越しではあったものの、活発に英語での交流が繰り広げられた。
8/5から対面での交流を展開した。8/5の初日は宿泊施設にタマサート大学の学生を引率した後、意見交換会を行った。事前オンライン交流会の成果もあり、学生間で活発な国際交流が行われていた。
プログラム2日目の8/6より本格的なプロジェクトを開始した。実験内容の説明、安全講習、グループ分けを行った後、大阪工業大学内の施設見学を実施した。その後、8/6の午後から8/8までの日程を利用して、スチレンのアニオン重合に取り組み末端官能基のそれぞれ異なるポリスチレンを調製した。ポリスチレンを有機溶媒に溶解し、ガラス基板上に高湿度気流下でキャスト膜の調製を行った。調製した膜の表面構造解析を走査型電子顕微鏡より観察したところ、各グループともハニカム状の周期構造が観察されていた。
8/9の午前中に実験より得られた成果の報告会を行い、優れた口頭発表を行ったグループに対して賞を与えた。
8/9の午後はバスで我が国が誇る最先端施設であるSPring-8に移動し施設見学を行った。半日という短い時間であったが、ビームが停止している期間ということもあり、普段の見学では立ち入ることが許されない、実験ハッチ、電子加速器、SACLAを間近で見学することができた。アニオン重合の体験およびSPring-8の施設見学の刺激もあり、タマサート大学の一部の学生からは「日本の博士課程に進学したいが研究室を紹介してほしい」との声が上がった。タイの学生に対して、日本の高い科学技術力をアピールできたと思われる。
8/10はタマサート大学の学生に日本の文化を学んでもらうことを目的として、伏見稲荷大社、金閣寺、清水寺、八坂神社を見学した。タマサート大学の学生に対しての文化的な紹介はもちろん、日本人学生が英語を駆使して自国の文化紹介に努めたことから、大きな教育効果があったと確信している。
最終日はタマサート大学の学生を空港まで送迎し、国際交流プロジェクトを閉会した。大阪工業大学の学生も本プロジェクト開始時点では英語でのコミュニケーションに不安を抱えていたようであるが、本プロジェクト後半では積極的に意見交換に努めていた。大学教育、特に学部の学生においては海外の学生と長期に渡り交流する機会が著しく少ない現状がある。その中で、JSTさくらサイエンスプログラムを利用して本プロジェクトが推進できたことは、大学教員としても貴重な経験であった。このようなプログラムが将来様々な大学で展開されることを期待したい。