2023年度 活動レポート 第241号:桜美林大学

2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第241号 (Aコース)

社会課題に挑む日本の中小企業~外国人経営者・社員からみた「日本の魅力」~

桜美林大学からの報告

 本プログラムは、日本の中小企業研究を専門とするリベラルアーツ学群所属の堀潔教授が指導にあたり、プログラム全体のデザインやコーディネーションを担当した。「社会課題に挑む日本の中小企業~外国人経営者・社員からみた「日本の魅力」~」をテーマとし、日本の中小企業で経営者または従業員としてビジネスに携わる外国人の多様な視点から、世界にアピールできる日本の魅力と、日本の経済と中小企業の再活性化の方途を考察する目的でデザインした。

 昨年度は、「社会課題に挑む日本の中小企業~女性経営者・従業員が生み出す多様性の価値~」のテーマで、本学協定校のオランダ、フィンランドのビジネススクールから招へいした。今年度は引き続き両校から、日本でのビジネスに関心を持つ教員・学生10名が参加し、本学学生も運営スタッフとして参加した。一方的なインプットではなく、招へい者から企業に質問・提案したり、3カ国で学び合ったりできるような環境を作り、多面的・多角的な交流を重視した。

 オンラインでの事前研修では、プログラム概要や来日に伴う手続きの説明および自己紹介を実施した。学びの成果を最大化するため、日本文化と生活を紹介する動画や企業からいただいた課題や資料を参加者に共有し、事前学習に取り組ませた。

 来日後のプログラムでは、ロッテルダム応用科学大学Kostas Kaimakis教授によるデザイン思考、東フィンランド大学Markus Raatikainen教授によるサプライチェーン・マネジメント(SCM)、本学堀潔教授による中小製造業の国際化と事業再構築に関する講義を実施いただいた。ディスカッション、ワークショップ、ケーススタディを通じ、参加学生はビジネスを行う上の基盤スキル、学生の専攻および本プログラムに関連する専門知識を習得した。

 また、参加者は期間中、企業訪問などの機会を通して、日本における中小企業や外国人起業家の実態、日本で働く外国人の想いや課題などを非常に具体的なレベルで知ることができた。訪問先と具体的な活動状況は概ね以下のとおりである。

 埼玉県にある大和合金株式会社では、代表取締役社長の萩野源次郎氏による企業紹介の後、参加者は航空宇宙分野や自動車産業関連の素材を製作する工場を見学した。その後、多数在籍している外国籍社員と、彼らの日本での働き・暮らし、その魅力と課題について対話した。

活動レポート写真1

 中小企業に関する幅広い調査研究と政策提言を行っている日本政策金融公庫総合研究所では、研究員の青木遥氏による公庫の紹介、研究主幹の深沼光氏による外国人経営者の実態に関する調査結果を発表いただいた。参加者からは外国人が日本で起業する際の規制の有無や支援策について活発な質問があった。

活動レポート写真2

 中川ジャパン株式会社は日本製包丁専門店の「タワーナイブズ」を経営する会社。カナダ出身、代表取締役社長のビヨン・ハイバーグ氏によるご自身の経歴や創業理念の講演、包丁の試し切りに加え、東京ソラマチにある実店舗を案内いただいた。

活動レポート写真3

 株式会社スリーハイは横浜市に本社を置く産業用ヒーターの専門メーカーである。営業統括本部の松本英嗣氏、齋藤恭子氏、同社が受け入れた外国人インターン生による会社紹介および質問応答を通じ、参加者は日本企業の海外展開における外国籍メンバーの役割を理解できた。

活動レポート写真4

 最終発表では、招へい学生は一週間の振り返りに、各自が感じた日本の魅力、社会・文化・ワークライフにおける母国との比較、企業への提案等について発表した。日本のおもてなし、時間厳守、秩序のある国民性や環境に良い意味でのカルチャーショックを受けた学生が多く、留学や就職で日本に戻りたいといった声も多く寄せられた。実際、そのうち学生1名が今年日本でインターンシップをする予定である。

 一方、プログラムに参加した本学学生2名のうち、1名はすでに留学の経験があり、1名は近く留学する予定である。今回は彼らにとっても英語力を実践し、異文化を理解する経験となり、海外学生の積極的な学ぶ姿勢に良い刺激をもらったと感想を述べていた。

 招へい教員と学生の事後アンケートでの満足度は非常に高く、今後の再来日や相互の学生交流、研究交流に繋がることを期待する。