2023年度 活動レポート 第216号:芝浦工業大学

2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第216号 (Cコース)

福祉機器・リハビリテーション機器と生体信号の応用に関する技術体験

芝浦工業大学 システム理工学部生命科学科からの報告

 2024年2月25日~2024年3月5日、インドネシアのスラバヤ工科大学から学生9名、教員1名を招いて10日間のさくらサイエンスプログラムを実施した。芝浦工業大学の英語授業Embedded Control Systemの一環とする形式とし、芝浦工業大学の学生9名、Teaching Assistance(TA)の学生4名、教員5名が参加した。具体的な講習の内容は、MATLAB/SIMULINKによるArduinoマイクロコントローラによるDCモーターの制御を行うこと、そのDCモーターを搭載したライントレーサーの制御を行うこと、福祉・リハビリテーションへの応用を考えることである。

 プログラムの初日は教員2名が成田空港まで出迎え、ホテルまでの送迎を行った。2日目から大宮キャンパスでのプログラムを開始した、芝浦工業大学の機械制御システム学科と生命科学科の紹介を実施し、大宮キャンパスツアーを行った。環境システム制御研究室(伊藤教授)、流体パワーシステム研究室(川上教授)、生活支援ロボット研究室(髙木准教授)、バイオ流体科学研究室(渡邊教授)の研究室見学会を実施した。またスラバヤ工科大学から参加のAchmad Arifin教授によるリハビリテーション関係の研究紹介が行われた。本プログラムの概要説明、参加者同士のIce braking、MATLAB/SIMULINKプログラミングの使用方法の演習も実施した。

活動レポート写真1
Arifin教授による講演

 3日目は、花房が芝浦工業大学での医療福祉機器・リハビリテーション機器の研究の現状について紹介を行った。また午後には国立障害者リハビリテーションセンターの見学会を実施し、日本の福祉機器・リハビリテーション機器の紹介とともに障害者リハビリテーションの現状を理解いただいた。

 4日目はMATLAB/SIMULINKによるマイクロコントローラ(Arduino)による入出力制御方法について実習した。またスイッチ入力、LEDのPulse Width Modulation(PWM)による明るさ制御、トランジスタを用いたDCモーターのPWMによる速度制御方法の実習を行った。

 5日目はDCモーターの機能および特性(ステップ応答、および周波数特性)の講義、およびキットを用いた計測実験を行った。さらにDCモーターのPID制御による速度制御、および位置制御の講義と実験を実施した。

活動レポート写真2
MATLAB/Simulink演習

 6日目には、インドネシアの学生と日本学生のペアでチームを組んで、ライントレーサーの操作方法の講義を受けたのち、キットによる実験演習を実施した。

活動レポート写真3
ライントレーサーによる実験演習

 7日目には、午前中各グループによって製作したプログラムによる、指定されたサーキットの競技会を実施した。コースを一周するのにかかった時間を基準にグループの順位を決め、午後には芝浦工業大学の豊洲キャンパスとKawasaki Robostageの見学を行い、日本の最先端ロボット技術の現状を理解いただいた。

 8日目は、上野の国立科学博物館を見学した。常設展の、日本の自然、科学技術史などを視察し、応用されている技術や新規開発されている技術にも触れていただいた。スラバヤ工科大学の学生には、体験記と医療福祉機器との関連についても記述いただいた。

 9日目午前は、発表の準備を行い、午後から全9グループによる7分の発表と3分の質疑応答を実施した。本プログラムの実施内容の振り返りと、①作成したライントレーサープログラムで工夫した点、②福祉リハビリテーションへの応用可能性、について発表した。②では、車いすの移動システムや、病院内のベッド等の機器の移動システムへの応用が取り上げられた。

活動レポート写真4
最終発表会

 夕刻からは、意見交換会と修了証の贈呈式を実施した。意見交換会では参加者全員に感想を述べていただいたが、ほとんどの学生が初めての海外体験、また日本学生との初めての共同作業であり、非常に印象深い体験であったとの感想であった。

 最終日の10日目は、早朝の大宮発のバスを利用して成田空港に移動し、帰路についていただいた。この移動では芝浦工業大学の教員が引率を行った。

 まとめとして、今回実施した本プログラムの特徴は、見学や説明だけでなく、受講者自身にArduinoマイコンを利用したDCモーターの制御演習、各グループスラバヤ工科大学と芝浦工業大学の学生が議論しながらライントレースのプログラミングを実施したところにある。より新しい技術への興味と理解を進め、異なる国、文化の学生同士による共同作業で、よりお互いの理解を深めることができたと考える。参加者へのアンケート結果でも、「このプログラムを通じて、日本の科学技術とイノベーションについての理解は深まりましたか」という問いに対して、参加者10人中9人がYes、 very much。と回答した。また、「日本への再訪」に関しての項目でも、同じく10人中9人がDefinitely wish、StudentまたはResearcherとして再訪したい、を選択しており、今後のスラバヤ工科大学の学生との交換留学、研究留学に結びつけることが、大いに期待できるプログラムとなった。貴重な機会をいただいた「さくらサイエンスプログラム」に深く感謝申し上げます。