2023年度 活動レポート 第209号:神奈川大学

2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第209号 (Bコース)

中国科学院大学との共同研究プログラム
~5‑fs光を用いるペロブスカイトの超高速分光~

神奈川大学からの報告

 神奈川大学化学生命学部応用化学科では、さくらサイエンスプログラムの支援を得て、1月30日から2月13日まで、中国科学院大学 国科大杭州高等研究院からDu Juan教授をはじめ3人のメンバーをお迎えし、国際共同研究を実施しました。
 Du教授らは、二次元物質やペロブスカイト太陽電池材料を対象に、テラヘルツ光領域での分光測定に関する研究を行っています。可視、および紫外光領域での研究を行うことで、これまで観測できなかった現象が可視化できると期待し、神奈川大学において我々が独自に開発した超短パルスレーザーと分光装置を用いた計測を試みました。
 まず、超短パルスレーザーと分光装置の紹介、次に、これらの装置を用いた分光測定の応用についてのセミナーを行いました。また、Du教授らとの議論を深め、滞在中の研究計画を洗練しました。

活動レポート写真1
セミナーの様子

 最初の実験として、可視超短パルスレーザーの調整を共に行い、測定されたレーザーパルス幅が期待する時間分解能を得るのに十分であることを確認しました。新たに導入した高速CCD分光器を用いて、標準試料の時間分解吸収分光測定を行いました。しかし、ペロブスカイト太陽電池材料からの信号は弱く、解析可能な信号を得ることはできませんでした。

活動レポート写真2
可視超短パルスレーザー実験の様子

 そこで、近紫外超短パルスレーザーを用いた分光装置を用いました。その結果、ペロブスカイト太陽電池材料からの非常に高品質な信号が得られました。得られた信号は、多くの測定波長および広範な時間領域の豊富な情報を含んでいるが、滞在中に可能な範囲で行った予備的な解析結果においても、十分に興味深いデータが確認されました。

活動レポート写真3
活動レポート写真4
近紫外超短パルスレーザー実験の様子

 実験最終日に、神奈川大学において得られた測定データの解析結果についての報告会を開き、今後の解析方針に関する議論を深めました。報告会終了後、本プログラムの修了証を授与しました。

活動レポート写真5
修了証授与

 中国に帰国後も、継続的にオンラインで議論しながらデータ解析を進めており、共著科学論文としての成果をまとめたいと考えております。今回、JSTさくらサイエンスプログラムがきっかけとなり、実際にDu教授らと共同研究を綿密に実施する機会をいただくことができたことは大変光栄です。本プログラムを契機として、継続してDu教授らの研究グループとの国際共同研究を続けることで、さらなる新奇な科学的発見に繋がることを期待します。