2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第205号 (Aコース)
ガーナの学生が母子保健を中心とした看護分野における日本の先端技術を学ぶ
筑波大学医学群看護学類からの報告
筑波大学医学群看護学類では、2024年2月4日から10日の7日間において、「母子保健を中心とした看護分野における日本の先端技術について学ぶ体験交流」を実施しました。本学には、アフリカからの留学生が多数在籍しており、African Students Associationという学生組織が存在します。この組織のPresidentであるガーナ出身の留学生と教員との対話により実現した今回のプログラムでは、ガーナの大学・専門学校で看護学を学ぶ学生と教員6名を招へいし、学類生・大学院生・教員と交流しました。
本プログラムでは、1)母子保健サービス提供施設の訪問、2)母子保健を中心とした看護教育研究についての講義と演習、3)日本文化の紹介と体験を、カリキュラムの3本柱としました。
母子保健サービス提供施設として、筑波大学附属病院(総合周産期母子医療センター)、なないろレディースクリニック(分娩入院施設、院内助産院、産後ケア施設)、助産院ナカヨシ、つくば市子育て総合支援センターの合計4施設を訪問・見学しました。各施設の担当者からの説明を受け、妊娠期から子育て期までの切れ目のない育児支援の実際を学ぶ機会になったと考えます。また、訪問診療・訪問看護・訪問介護・有料老人ホーム等を経営している施設としてメドアグリケアを訪問・見学し、施設入所者に提供される日本食をご馳走になりました。
母子保健を中心とした看護教育研究についての講義と演習では、日本の看護師・助産師・保健師教育、母子保健に関する世界の動向についての講義を通して、両国間の共通点と違いについて討議しました。また、乳房モデルを用いた授乳ケア、新生児モデルを用いた日本式の沐浴、分娩介助シミュレータを用いた分娩介助、胎児超音波診断ファントムを用いた妊婦の超音波診断の演習を行いました。乳房モデルを装着しての演習は初めての経験ということで、新生児モデルを各自が抱っこしながらポジショニング(横抱き、交差横抱き、縦抱き、フットボール抱き)の演習を楽しく行うことができました。
日本文化の紹介・体験として、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、浅草浅草寺、スカイツリーを訪問・見学しました。満員電車に乗車したこと、日本食を食べたこと(特に苺は初めての経験だったそうです)、降雪と寒さの経験も、招へい者にとっては貴重な文化体験となったようです。
最終日には、ガーナの看護教育の歴史と現在について等の内容を含む研修成果を発表してもらい、両国の学生・教員間で意見交換を行いました。招へい者からは、「日本人の平均寿命が長い事や、妊産婦死亡率の低さなどの背景にある工夫が知りたい」「予防接種の実施者は誰か」等の質問がある一方で、本学の学類生・大学院生・教員からは、ガーナの病院環境や看護教育についての質問があり、活発な討議が行われました。
本プログラムに参加した感想として、本学からは、「ガーナの母子保健について日本との違い等を知ることができた」「同世代のガーナ人と交流出来た」等の肯定的なものの他に、「英語の訛りを理解するのが難しかった」などの感想も聞かれました。また、プログラム参加により得られたものとしては、ガーナやアフリカへの関心、国際交流や海外留学への関心、英語コミュニケーション力の向上、国際的な視野や経験の深まり等があげられました。招へい者からは、「両国の看護教育やヘルスケアシステムについての意見交換が有意義だった」「国際的な視野が深まった」「日本への留学や就職を選択肢として考えたい」などの感想が得られました。
本プログラムの実施により、ガーナからの招へい者は母子保健を中心とした自国の問題を外の視点で捉え直し、母国の課題解決に向けたより具体的な筋道を考える機会を提供したのではないかと考えます。そして自らのキャリアデザインの選択肢として、日本の大学への留学を具体的に意識させることに貢献しました。日本人学生に対しては、日本の母子保健が世界的には「当たり前」ではなく、途上国の制約条件下でどうするかを具体的に考える機会になったのではないかと考えます。両国の参加者にとって、グローバルな視点で自らのキャリアを考える動機づけを行うことができたと思います。
閉会式には、駐日ガーナ公使と参事官、本学の副学長と国際担当の教員も参加し、将来的な国際交流について話しました。私たちは、今回の招へいプログラムの経験を活かし、今後も両国の間での文化交流や技術交流を継続し、さらなる協力関係の構築を目指していきます。