2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第202号 (Aコース)
南太平洋大学の学生9名が資源循環をテーマとした科学技術交流に参加
公益財団法人 国際環境技術移転センターからの報告
2024年1月17日から24日にかけてフィジーにメインキャンパスを置く南太平洋大学から学生9名と引率の大学職員1名を受け入れ、「循環型社会への転換による太平洋島しょ国の持続可能な経済発展」をテーマに研修を実施しました。
太平洋島しょ国では輸入に頼ったライフスタイルへの変化に伴い廃棄物発生量が増加する一方、廃棄物のほとんどをゴミ捨て場や埋立処分場に運んでおり、それらの残余容量もひっ迫しつつあります。現在もプラスチックの焼却や、不法投棄等による環境汚染が問題となっています。島しょ各国の健全な循環型社会形成に向けて、正しい廃棄物管理や資源循環の手法の取得を目的として、太平洋島しょ国の未来を担う優秀な学生を招へいし、日本における資源循環に関する科学技術の事例を学びました。また最終日には、研修を通して学んだことを踏まえ、今後自国で循環型社会促進のために実施したい事業アイデアを発表する、アクションプラン発表会を開催しました。
【1日目】
参加者たちは、自国の資源循環や廃棄物管理の状況の共有を行い、最終日に控えたアクションプラン発表会に向け、研修を通して学びたい内容を明確にしました。
【2日目】
研修2日目は、岐阜市リサイクルセンター、(株)岐阜リサイクルセンター、輪之内町を訪問しました。
プラスチック容器包装リサイクル法に関して、地方自治体による回収や圧縮梱包技術、再生プラスチック製造技術について見学を通して学びました。
【3日目】
午前は四日市大学にて、海洋プラスチック汚染問題を背景に、世界の状況やマイクロプラスチックが生物に与える影響、海洋プラスチックの調査手段について学びました。また同学の学生と昼食を取りながら交流し、日本のキャンパスライフを楽しみました。
午後は(株)大栄工業を訪問し、工場見学を通して食品廃棄物を使用したバイオガス発電の仕組みを学び、未利用バイオマスの有効利用について理解を深めました。食品廃棄物を原料とする発電技術に、参加者たちは高い関心を抱きました。
【4日目】
弊センターが三重県から受託している「グローカル人材育成講座」受講生と合同で鳥羽水族館での講義、見学に参加しました。海洋プラスチックごみ問題等に関する講義を受講後、グローカル人材育成講座の受講生と共に意見交換・館内見学を通して国際交流を行いました。参加者たちからは、講座に参加していた多くの三重県の若者と交流することができ、大変有意義な時間になったとの感想が寄せられました。
また午後には(株)REMAREを訪問し、漁具等の廃プラスチックをボールペン等新たな商品にアップサイクルする技術と、そのビジネスモデルについて学びました。廃プラスチックに新たな命が吹き込まれる技術には関心が高まっていました。
【5日目】
(株)EBILABから講師を招き、最新のデータ分析事業、DX需要予測を活用したフードロス対策やその効果について学びました。フィジーのレストランやホテルでもこの技術を利用したいとの感想が出ました。
講義後は椿大神社を参拝し、日本文化に触れました。参加者たちは初めて見る日本の神社に、自国との違いや共通点を見つけ充実した文化体験となりました。
【6日目】
三重大学にて先進バイオマス利用研究である木質ストローについて、講義・実験を通して学びました。実際に木質ストローの成形を体験し、プラスチック素材の代替として取り組まれている木質製品の開発について理解を深めました。講義後には同学学生と昼食をとりながら交流を行いました。
午後には、三重県庁にて三重県のプラスチック資源循環に向けた取組みを学びました。その後、協栄J&T環境(株)が運営する西日本PETボトルMRセンターを視察し、ボトルtoボトルリサイクル技術について学びました。参加者はその高い技術に驚き、活発な質疑応答が行われました。
【7日目】
午前はNTN(株)を訪問し、再生可能エネルギー利活用に資するモノづくりを学びました。また同社の自然エネルギーの循環型モデルを体現した施設の見学も行い、その技術力の高さに圧倒されている様子でした。
午後は研修の集大成としてアクションプラン発表会を行いました。発表会では合計4つのアクションプランが発表されました。いずれも詳細まで考えられており、短い研修期間で多くのことを学び、吸収できたことが分かる発表会となりました。
翌日、修了証の授与後、中部国際空港まで参加者を見送り、無事に研修を終えることができました。
帰国後も、現地で収集した情報を踏まえアクションプランの精査を行う他、アクションプラン実現に向けて大学教授や関係者と協議を進める参加者もおり、研修終了後も意欲的に活動を継続しています。
また弊センターでは、今後も南太平洋大学との意見交換を継続していく予定です。
科学技術振興機構(JST)のご支援の下、弊センターと南太平洋大学の友好を深める機会を得ましたこと、また、ご協力いただきました関係者の皆様にこの場をお借りしてお礼申し上げます。