2023年度 活動レポート 第196号:東京海洋大学

2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第196号 (Cコース)

GNSSサマースクール

東京海洋大学からの報告

 2023年度のGNSS国際サマースクールは、8月28日~9月2日の6日間、東京海洋大学越中島キャンパスで開催されました。ここ最近はオンライン開催をしていたため、約3年ぶりのオンサイト開催となりました。

 年々世界的に好評価が拡がり、さらに3年ぶりのオンサイト開催となったため、今年も100名以上の奨学金申請がありました。その中から、さくらサイエンスプログラムの資金により9名、企業からのサポートで10名、計19名の奨学生を決定しました。さらに自己負担による海外の参加者2名、日本人の参加者9名を含め、総勢30名の参加登録となりました。

【初日】

 サマースクールの初めに6日間のプログラムの概要などを紹介しました。続いて、初学者向けにGNSSの概要と、GPS/GNSSの受信原理・位置導出原理の講義が行われました。その後、自己紹介に引き続き、歓迎パーティーを開催し、参加者同士・講師陣と親交を深め合いました。

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プログラム概要の紹介

【2日目】

 GNSS受信機から出力される観測データを用いて、最も基本的な測位である単独測位を実際の測位演算プログラムを利用して参加者が自ら行いました。単独測位プログラムの中身について詳しく解説され、最後に講師の専門分野である電離層のGNSSへの影響について紹介しました。その後、内閣府の代表の方より日本の測位衛星であるQZSSの現在と今後についての講義が行われました。

【3日目】

 GNSS受信機の動作原理(信号捕捉、信号追尾部)に関して詳しい講義が行われました。一般的にソフトウェアGNSS受信機と呼ばれている分野です。その後、GPS/GNSS気象学の専門家である気象庁の方よりGNSSと気象学の関連についての紹介がありました。最後にセプテントリオ社より、低コストかつ高精度な汎用GNSS受信機の紹介がありました。この会社は欧州で1、2番に入る受信機メーカーで、参加者にとって大変よい経験となりました。

【4日目】

 オープンソースプログラムであるRTKLIBの紹介と、その使用法についての説明がありました。昼食後は2グループに分かれて、交互に東京湾にてリアルタイムでの高精度測位実習を行い、あわせて最新の航海計器の動作を見学しました。その後、東京湾の航海実験で取得した、RTK測位結果、QZSSの高精度測位結果をもちより、QZSSの高精度補強測位の性能がcm級であることを全員で確認しました。1時間程度の2回の航行でしたが、良好なcm級の測位結果をリアルタイムで取得することができたので講師らは安心しました。

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高精度測位実習、東京湾クルーズ中の船にて

【5日目】

 ソフトウェアGNSS受信機に関する講義が行われました。この講義は、3日目の信号捕捉や信号追尾の講義の実習に相当するもので、参加者にとっては受信機を身近に感じる内容でした。その後、システム・デザインの講義とグループ・ディスカッションが行われ、6グループに分かれて問題の提起とGNSSの位置情報を利用した解決策を模索し、グループごとに成果を発表しました。

 終了後はお別れパーティーを開催し、さらに親交を深め合いました。

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システムデザインマネージメントのグループ・ディスカッション
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成果の発表

【最終日】

 GNSS信号の脆弱性の問題についての講義とスマホを使った高精度測位のデモがありました。その後、海外からの参加者9名により、自国および自身のGNSS応用事例・研究事情が報告されました。最後に、修了証の授与で無事スクールの幕を閉じました。

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最終日の記念撮影

 GNSS技術はわが国のみちびきシステムの展開とあいまって、必須のインフラとなりつつあり、今後さらに重要性が高まるものと思われます。受講生の満足度は非常に高く、国際的技術貢献、国際交流の一助として、最新技術をフォローすべくレベルアップを図りながら継続的に進めて行きたいと思っています。この活動は国際連合の下部組織である宇宙局からも高く評価されています。