2023年度 活動レポート 第189号:九州大学

2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第189号 (Aコース)

E‑JUST連携センターを核とした中東・東南アジアイスラム圏への理工学研究ネットワークの伸長

九州大学大学院総合理工学研究院からの報告

 九州大学大学院総合理工学研究院は、中東・アジアのトップ大学との理工学研究のネットワーク伸長を目的として、2024年2月4日~8日の5日間、JSTさくらサイエンスプログラムの支援を受け、交流イベントを実施しました。本プログラムは、中東や東南アジアに幅広いネットワークを有する本学総合理工学研究院IFC部門のエジプト人若手研究者アブデルラーマン特任准教授が中心となり企画したもので、エジプト2大学(エジプト日本科学技術大学E‑JUST、アスワン大学)、マレーシア2大学(マレーシア工科大学UTM、マラ工科大学UiTM)に加え、これまで本学とはまだ交流実績が少ないカタール大学の計5大学から学生5人、教員5人の計10人をお招きしました。

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九州大学伊都キャンパスウェスト2号館の前で

 初日の2月4日午前中には、参加者全員を対象としたオリエンテーションを実施しました。まず、本学筑紫キャンパスの国際推進担当教員から、九州大学の紹介および総合理工学府の実施する国際教育プログラムや国際共同研究の事例紹介を行った後、参加5大学の教員がそれぞれ、同様に自身の大学紹介を行い、その後に大学間国際交流について意見交換を行いました。

 その日の午後から翌日は、電子物性デバイス工学の研究室(総合理工学府デバイス理工学メジャー 吉武剛教授)において、参加者は電子材料とデバイス、さらにはデバイス創製のための要素技術等に関連する様々な装置を使った実験を体験し、その解析手法を学びました。この際は、本学の大学院生がTAとして実験や解析の指導を行いました。

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初日の歓迎会にて

 2月5日昼には、参加者の中でも教員スタッフ5名を学府長主催のランチオンミーティングに招き、九州大学総合理工学府と5大学との具体的な連携の方向性についてディスカッションしました。学生の派遣受入、大学院生のjoint supervision、教員同士の共同研究を喚起するための仕組み作りなど、幅広い可能性が話題に上がりました。一方、残りの学生参加者5人は、筑紫キャンパスで学ぶマレーシアや中東からの留学生との交流ランチに参加しました。ここでは、日本での生活や食事、大学の教育研究環境などについて、自由に情報を収集する機会となりました。さらに同日夕方には、キャンパス内の喫茶スペースにて歓迎会を実施し、参加者は本学教員とともに、ハラールフードの和食を楽しみました。

 3日目は、九州大学のメインキャンパスである伊都キャンパスのツアーを実施しました。まず、午前中にカーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I2CNER)を訪問し、施設の説明を受けた後、松本広重教授、Selyanchyn Roman准教授、渡邊 源規准教授のラボの見学を行いました。キャンパス内のハラールフードレストランで昼食を取った後は、超顕微解析研究センターにおいて、最先端の大規模な電子顕微鏡を見学しました。その後、参加者はE‑JUSTの事業サポートを目的に本学が設置しているE‑JUSTセンターのオフィスにて意見交換を行った後に、中央図書館を見学しました。

 4日目には筑紫キャンパスの大型実験設備の見学ツアーを実施しました。まず、高温プラズマ理工学研究センターの国内最大規模の球状トカマク装置QUESTを見学しました。体育館のような巨大な建物に格納された装置の規模に参加者は皆、大いに興味を惹かれたようです。その後、さらに電子顕微鏡、クリーンルームの見学を行いました。

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筑紫キャンパスQUESTの見学

 最終日の午前中に参加者らは、総合理工学府水環境工学研究室(エルジャマル オサマ准教授)を訪問し、ナノ粒子を活用した水処理や廃棄物からの資源回収に関する研究プロジェクトについての講演を聴くとともに、実験の様子を見学しました。

 同日の午後には、クロージングセミナーを実施しました。ここでは、参加者と本学府国際推進担当教員が一堂に会し、参加者による滞在中の研究活動の成果についてのプレゼンテーションを聞き、今後の連携についてさらに意見交換を行いました。「本学の研究教育環境のハード面だけでなく、キャンパス内や福岡の街が清潔で整然としている様子、それを支える人々の道徳や規律に強い感銘を受けた。自分の大学の学生にこの社会を見せて学ばせたい」という参加者のコメントが特に印象に残りました。メールやオンラインによるコミュニケーションだけでは得られない、日本を訪問したからこそ伝えられたものが有ったのだ、とプログラム実施担当者の苦労が報われる思いがしました。

 本プログラムの実施により新たに構築したネットワークを、今後は長期的な研究教育の国際連携に繋げるよう、引き続き取り組んで行く予定です。

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最終日のクロージングセミナーで発表する参加者