2023年度 活動レポート 第188号:鳥取大学

2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第188号 (Aコース)

過疎・少子高齢化地域の活性化戦略を学ぶ体験プログラム

鳥取大学からの報告

 2024年1月21日から27日の7日間、マレーシアプトラ大学(大学院生2名、学部生4名、引率教員1名)から合計7名を招へいしました。鳥取県内で推進する地域の活性化の取り組みを体験学習し、また同課題に関連するマレーシアの事情を共有しました。

■オリエンテーションと課題の導入

 研修初日は、オリエンテーションと鳥取の地域活性化の取り組みに関する概要説明を行い、日本の過疎・少子高齢化、鳥取県、鳥取大学についての背景知識、研修の活動情報や関連する事前知識を身につけました。また、ムスリム参加者のためのハラル食事についての説明や屋外活動に備えて、ロングコートやジャンパー、長靴などの試着や傘などの貸し出しも行いました。

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開会式後の記念撮影

■地域活性化プロジェクト現場の視察:森のようちえんまるたんぼう、恋山形駅(恋みくじ)

 研修2日目は、鳥取県智頭町にある地域活性化プロジェクトの現場を視察しました。「森のようちえんまるたんぼう」では、幼稚園が管理する森へ園児と一緒に「登園」し、山道を登っていきながら、園児の自主的活動を遠くから観察し、フォレスト・キンデルカーテン(森のようちえん)のコンセプトについてのブリーフィングを聞きました。このコンセプトに賛同する親が国内外から子どもを通園させるために鳥取県に移住してきている話を伺い、自然の中で学ぶ子どもの成長およびその効果について、参加者は幼稚園の経営者に活発に質問をしていました。

 次に、「恋」をテーマに地域の活性化を図っている「恋山形駅」を訪れました。写真スポット、おみくじなどさまざまな工夫に関心を示しながら、参加者たちはなぜピンク色を主体に選んだかについて特に関心を持っていました。

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森のようちえん・園児を離れて視察

■相互発表による地域活性化の講義とワークショップ

 2日目の午後には、鳥取大学地域学部馬場芳准教授による講義が行われ、地域活性化プロジェクトについての企画、実行、および評価の仕方について学習しました。特に、智頭鉄道株式会社と連携する恋おみくじのプロジェクトについて参加者たちは、午前中に現地観察してきた感想も含めて馬場准教授の研究室の学部学生と意見交換をしました。
 講義ののち、参加者によるプレセンを行い、マレーシア、マレーシアプトラ大学について、およびマレーシアでの地域活性化について紹介しました。

 研修3日目は、前日で紹介したおみくじプロジェクトの実習として、おみくじの制作について学習しました。その後、参加者は前日につづき、マレーシア地域活性化の研究事例を詳しく発表しました。この日は、地域学部から馬場芳准教授、川口夏希講師、農学部からは安延久美教授、アスレス准教授、木原奈穂子講師および関連ゼミの日本人学生が参加し、地域活性化の持続性などについて活発に意見を交わしました。

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相互発表による地域活性化のワークショップ

■南部町の地域活性化責任者と交流、イスラムにもとづく生活スタイルの紹介

 当初、研修3日目午後から鳥取県南部町へ移動し、4日目まで視察および住民との交流と計画していましたが、大雪警報発令に伴い、鳥取大学では教育活動中止の方針が出されたため、南部町での活動を急遽中止せざるを得ませんでした。120キロの移動は、往復ともにリスクが伴い、道路の積雪と通行止めによっては計画通りの帰国にも支障が出る可能性があったからです。
 研修4日目夜に計画していた「イスラムにもとづく生活スタイルの紹介」を場所と対象を変更し、鳥取大学の宿泊施設である湖山クラブにて、鳥取大学の教員と学生に対して行いました。マレーシア料理のナシレマを共同で制作し、マレーシアの生活スタイルについて紹介しました。
 4日目に予定していた南部町との交流は、オンラインで行いました。「てま里」の責任者井上さんが里山地域活性化の取り組みについて説明し、それに対して参加者たちはマレーシア事情、生活スタイルについてのプレゼンをし、意見交換を行いました。

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南部町の関係者とオンラインで意見交換

■鳥取県・鳥取市の活性化取り組みに関連する施設の視察

 大雪に伴い中止された活動への補填として、研修4日目の午後に市内の関連施設を視察しました。わらべ館では、子育て推進との関連で、全国でも珍しい子ども文化(わらべうた、唱歌、日本の学校制度、子どもの遊び、日本の生活様式などを展示)に特化した取り組みを視察しました。県立博物館の常設展では、鳥取県にある市町村の全体像について学び、活性化のテーマとして用いられる地理、文化、産業の特徴について学習しました。

■最終発表・地域課題と多様性ワークショップ:比較視点からの提案

 本研修では、日本・マレーシアと相互に発表することによって地域活性化、特に多様性社会との比較交流に重点を置きました。何よりもマレーシアに先行する研究課題である日本の過疎・少子高齢化地域の活性化について、参加者に意識を植え付けたことに効果がありました。最終発表では、二つのグループに分かれ、この研修でなされた視察、講義、そして双方向の交流についてまとめをし、感想を発表してもらいました。日本での視察に触発され、参加者が自国ではあまり知られていない取り組みの新しい事例(来日前に準備した発表内容にはないもの)を取り上げるまでになりました。また、自分の国での地域活性化に対する課題を再認識するようになりました。終了後アンケートからも「地域活性化はトップ・ダウンでなされるものと思ったが、ボトム・アップ、つまり地域住民が主体になることの重要性を改めて認識した」という感想があり、本研修によって、国を超えて協働することの重要性を確認できたと思います。今回深めることができた交流関係を、機関同士の関係性の発展に繋げていきたいと考えています。

 最後に、本研修の実施にあたり、参加者らに熱意を持って取り組みを説明してくださった先生方や地域企業の方々、そしてこのような機会を与えてくださったJSTさくらサイエンスプログラムに、心より感謝申し上げます。

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鳥取大学の宿泊施設、湖山クラブにて記念撮影
マレーシア料理のナシレマを共同で制作し、マレーシアの生活スタイルについて紹介しました