2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第187号 (Aコース)
高齢化社会の未来を支える、日中科学技術交流
東京工業大学
助教 JIANG MINGさんからの報告
2024年1月4日から10日にかけて、「さくらサイエンスプログラム」の支援により、中国の大連理工大学の李沐先生が引率する学生および研究者10名が東京工業大学を訪問しました。
日本での1週間の滞在で訪問者たちは、学術的・文化的な観点から多くの体験をしました。1月5日には、東京工業大学のキャンパスツアーが行われ、訪問者たちは機械工学や材料科学の研究室を見学することで、燃料電池、機械加工、福祉機器開発などの分野の知識を広げました。
平井秀一郎先生の研究室では、訪問者たちは燃料電池において発電時に生成される水の一部が液体として電池内部に滞留してしまいガス供給の妨げとなってしまうという研究課題を学び、発電時における燃料電池内部の水分布をX線により可視化する実験装置を見学しました。史蹟先生の研究室では、平行磁場を利用して金属薄膜をより均一に塗布する装置などを見学し、機能性金属薄膜についての見識を深めました。井上剛良先生の研究室では、FRP材料やヒートパイプの伝熱特性を解明するための実験方法が紹介され、応用先として液体水素貯蔵タンク用断熱構造の開発やモーター回転子の冷却デバイスの開発などがあることを学びました。平田敦先生の研究室では、カーボンオニオンのトライボロジー応用やナノ炭素材料による超精密研磨、高機能アモルファスカーボン膜などが紹介され、表面加工に関する見識を深めました。武田行生先生の研究室では、歩行や立ち上がり、家事などの日常生活動作を支援する様々な福祉機器を見学・体験し、高齢化社会の課題に対する関心を高めました。
翌6日には、バッテリー技術と福祉機器開発の融合をテーマに、東京工業大学の研究者や学生と一緒にブレインストーミングを行いました。このセッションでは、燃料電池や太陽光発電などがどのように福祉機器に応用できるか、またウェアラブル機器における電池の発熱問題への対処方法などに関して議論を行い、互いのアイデアや研究の視点について意見を交換しました。
1月7日と8日の2日間では、日本科学未来館、Panasonic GREEN IMPACT PARK、つくばエキスポセンター、JAXA筑波宇宙センターなどを訪問し、ヒューマンマシンインタラクションや宇宙開発などに関する先端技術を見学しました。中でもPanasonic GREEN IMPACT PARKでは、二酸化炭素排出量の可視化、再生可能エネルギーの活用に関連する技術を学び、カーボンニュートラルの重要性やSDGsに対する日本企業の工夫などについて理解を深めました。
1月9日には東京工業大学で成果報告会が開催され、両校の博士後期課程の学生が研究成果を発表し、研究内容に対してディスカッションをしました。また、訪問者を代表して学生のZhang Haotianさん、Li DonghaoさんとTao Fengさんが滞在中の交流や見学の成果について報告し、その後、訪問者全員にさくらサイエンスプログラムの修了証明書が授与されました。
この交流プログラムは、中国と日本の学生や研究者にとって学術的な交流の機会を提供するとともに、文化的理解を深める架け橋となりました。大連理工大学からの来日は、将来の共同研究展開の道を開き、国際的な学術ネットワークを強化するものとなりました。今回の交流をきっかけに、今後も継続的な協力と交流を通じて、研究と教育の取り組みをさらに充実させていく所存です。