2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第171号 (Aコース)
地域住民を対象とした在宅ケアと災害看護における日中交流
広島大学からの報告
1.交流の概要
2023年12月11日から17までの7日間、「JSTさくらサイエンスプログラム」の支援により、中国の「985プロジェクト」と「211プロジェクト」「双一流」構築大学である武漢大学の看護学院から教員1人と大学院生7人を招へいし、「地域住民を対象とした在宅ケアと災害看護における日中交流」のプログラムを開催しました。広島大学教員による講義や関連施設の視察を通し、知識や技術に触れていただく研修を行いました。中国の大学院生にとって貴重な体験となり、日本への関心が深まり、今後の留学や再来日、就職などにつながることを目指すプログラムとなりました。
2.広島大学教育施設の見学
歓迎セレモニーの後、保健学科棟実習室と広島大学病院を見学しました。在宅看護を学ぶ実習室では日本文化の和室や在宅介護用トイレや浴室を見学し、大学病院の視察を通して日本の医療ビジョンや看護の雰囲気を感じてもらいました。
3.在宅ケアと災害看護の講義
在宅ケアの講義については、日本の在宅ケア・制度・体制に関する講義を広島大学で行い、訪問看護ステーション所長と理学療法士を講師に招いて、日本の在宅療養者を対象とした専門職のケアについて紹介しました。災害看護の講義では、広島大学大学院医系科学研究科の2名の教員が、2018年に発災した西日本豪雨災害や、2020年からのCOVID−19について実際に看護職が対応した援助や対応について講義し、理解を深めました。さらに、日中両国の医療職人材育成制度の意見交換では、両国の看護教員が講義を行い、看護・医療人の養成と教育制度を紹介して比較することで、相互の先進的分野からの学びを共有しました。
4.子どもから高齢者までの社会資源の理解と視察
現地で日本の在宅ケアを体験するため、訪問看護ステーショングリーンピースとコモンデイサービスセンターを視察しました。訪問看護ステーショングリーンピースでは、日常的な事業運営の内容や訪問看護師の仕事の様子を直接見聞しました。コモンデイサービスセンターは児童から高齢者までが利用できる共生型福祉施設です。当施設で福祉施設の利用者や職員の様子を見て、デイサービスや高齢者介護に関することを意見交換しました。また、招へい者は利用者と一緒に、指の関節を動かす効果がある「新聞紙ぐるぐる巻きゲーム」なども体験しました。
5.広島市豪雨災害伝承館の視察訪問と体験学習
広島市豪雨災害伝承館は、2014年8月20日豪雨により犠牲になられた方々への哀悼と鎮魂の場となるシンボル的な拠点施設として開設されました。展示スペースでは、土石流の映像を見ながらの説明や被災者の語りから自然災害に対する知見を深めました。災害体験プログラムから防災・減災の正しい知識や技術を学習しました。
6.世界遺産スタディーツアー
日本歴史体験として、世界遺産に指定されている厳島神社を訪ねました。また、平和記念資料館と原爆ドームを訪問し、世界恒久平和を希求し続けている広島の文化に深く触れてもらうことができました。
7.意見交換会
研修最終日にはこのすべてのプログラムを通して勉強できたこと、今後の学習目標などを発表してもらい、実施担当者である教授がJSTサクラサイエンスからのプログラム修了証書を手渡しました。
8.今後の展望
本交流により、超高齢社会の国の在宅ケアと災害対策の技術に触れることで、招へいされた大学院生のみなさんにとっては貴重な体験となり、日本への関心を深めることができ、今後の留学や再来日、就職などに繋がると考えます。本プログラムを通して、広島大学と武漢大学との日中の大学院生の交流が広がり、日中双方がさらなる交流へと発展していくことを期待します。
最後に、申請を採択していただきました国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)へお礼と感謝を申し上げます。