2023年度 活動レポート 第170号:横浜市立大学

2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第170号 (Aコース)

インドネシアの看護学生が日本の緩和ケア(Palliative Care)を学ぶ

横浜市立大学からの報告

 横浜市立大学では2020年度からインドネシアのハサヌディン大学の学生を招へいしてさくらサイエンスプログラムを実施しています。過去数年はコロナ禍によりオンラインで交流を続けてきましたが、2023年度はハサヌディン大学を招へいしてから、初めて対面でプログラムを開催することができました。本年度は、「日本のPalliative Careの現状と課題(胎生期から老年期まで)」をテーマに、医学部看護学科小児看護学領域と国際交流を推進する全学組織「グローバル都市協力研究センター(GCI)」が主体となり、ハサヌディン大学看護学部から、学生9名と教員1名を招へいして実施しました。プログラムの目的は、ハサヌディン大学と横浜市立大学の学生が文化交流を通して相互理解を深めながら、各国のPalliative Careの現状と課題について考察し、今後のPalliative Careの在り方について検討することとしました。

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主な日程

1月14日 来日
1月15日 オリエンテーション、講義(日本の医療と看護、インドネシアと日本におけるPalliative Careについて)
1月16日 横浜こどもホスピス、横浜市立大学附属病院見学
1月17日 藤沢湘南台病院緩和ケア病棟、横浜市立大学附属市民総合医療センター 見学
1月18日 横浜市立大学看護学科2年生との合同講義・グループワーク
1月19日 日本文化理解のための浅草散策、マギーズ東京 見学
1月20日 帰国

■横浜こどもホスピス

 日本で3か所しかないこどもホスピスを見学し、日本のこどもホスピスの現状や設立の経緯、施設の利用方法について講義を受けました。施設見学では、施設に込められた意味や家族の利用の様子について説明をいただきました。

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■横浜市立大学附属病院

 病院内での緩和ケアチームの取り組みと集中治療の現状について講義を受けた後、手術室、集中治療室、遠隔集中治療室などの施設を見学しました。インドネシアでは緩和ケアチームの数が限られており、日本の緩和医療提供体制について感銘を受ける参加者が複数見られました。また、インドネシアにはなく、国内でも先進的なテレメディシンのシステムに触れ、参加者は終始、興味深く見学を行っていました。

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■藤沢湘南台病院・緩和ケア病棟

 講義や緩和ケア病棟の見学を通して、大学病院とは異なる地域に密着した病院の役割について学びました。緩和ケア病棟では日本の四季に応じたアクティビティの開催、通常病棟とは異なる木目調をベースとした病室、家族との最期の過ごし方についての説明を受けました。

■横浜市立大学附属市民総合医療センター

 日本の助産や産科医療について講義を受け、総合周産期母子医療センター、救急外来、ヘリポート、ドクターカーを見学しました。

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■横浜市立大学の看護学科の学生とグループワークと発表

 横浜市立大学医学部看護学科2年生と「緩和ケア体制とチーム医療」「死亡場所の希望と実現方法」「良い死の定義」の3つのテーマについて議論を行いました。宗教や家族観などの違いが反映されやすい緩和ケアや死について議論することで、双方の文化に対する理解を深めることができました。ハサヌディン大学の学生にとっては、施設見学だけでなく、日本の学生とのグループワークや発表を通じて、日本での経験をアウトプットし学びを深める機会となりました。

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■日本文化理解のための浅草散策

 ハサヌディン大学の学生と横浜市立大学の学生が、お互いに母国語ではない英語を使用しながら、国内の代表的文化施設である雷門の見学や日本料理のお寿司を楽しむことで、異なる文化や宗教を理解しました。

■マギーズ東京

 がんを経験した人とその家族や友人など、がんに影響を受けるすべての人がとまどい、孤独を感じる時に気軽に訪れ、自分の力を取り戻すためのサポートを行うマギーズ東京を訪問しました。施設の活動に関する講義と施設見学を通して、参加者は自国でも同様の施設の必要性を感じていました。

■まとめ

 今年度のプログラムでは緩和ケアというセンシティブなテーマを扱いましたが、これから医療従事者となるハサヌディン大学の学生が、日本の緩和ケアに関する施設を訪れ自国にはない取り組みやシステムを知り、自国の特徴や課題、必要な対策を理解する貴重な機会となりました。また、ハサヌディン大学だけでなく、横浜市立大学の学生にとっても、双方の文化や価値観を尊重しながら、医療に関わる議論を英語で行う得難い体験となりました。本プログラムで経験した日本の緩和ケアの先進的な取り組みが、参加者らの手によってインドネシアに取り入れられ、彼らの国、あるいはアジア圏の緩和ケアの質が向上することが期待されます。

 本プログラム実施にあたりご支援いただいたJSTのさくらサイエンスプログラムご担当者様、施設見学を受け入れてくださった各施設の皆様、横浜市立大学の関係教職員の皆様に深く感謝申し上げます。

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