2023年度 活動レポート 第164号:東京大学

2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第164号 (Aコース)

「総合知」の最先端を体験する(デリー大学学生研修)

東京大学大学院人文社会系研究科からの報告

日時:2023年12月18日~24日

プログラム
19日
JST-MS9「東洋の人間観と脳情報学で実現する安らぎと慈しみの境地」
に関するレクチャー(蓑輪教授)とディスカッション
19日
東京大学総合図書館見学
アジア研究図書館にてレクチャー(RASARL板橋助教)
20日
東京大学文学部の学生と意見交換会(研究発表とディスカッション)
20日
東京大学インド人留学生会と交流会
21日
東京大学文学部次世代人文学開発センター(大向准教授・塚越助教)
人文情報学に関するレクチャーとディスカッション
21日
東京大学本郷キャンパス内を見学(赤門、安田講堂、懐徳堂)
22日
科研費基盤(B)「デーヴァナーガリー文字OCRの実用化と文献データベースの利活用にむけた応用研究」に関するレクチャー(加藤)とディスカッション
22日
東京国立博物館・国立科学博物館見学
活動レポート写真1

■プログラムの概要と報告

 日印学術交流については、これまで、理工系学部が中心となって進められてきたが、昨今のインドにおける様々な研究分野の発展などを見るに、広く人文社会系を含む総合的な学術交流が必要と考え、人文社会系研究科が受け皿となるプログラムを提供したいと考えた。
 東京大学大学院人文社会系研究科・文学部においては、人文科学、社会科学分野において最先端の科学技術を応用した先端的な研究が行われている。本プログラムは、文理の枠組みを超えたこうした取り組みから生み出される最先端の「総合知」に触れ、これからの人文科学や社会科学のあり方について学ぶ機会を得ることを第一の目的とする。

 今回の研修プログラムでは、人文社会系研究科で取り組まれている以下の取り組みを中心にレクチャーやディスカッションを通じて学んだ。

  • 1)JST−MS9プロジェクト「東洋の人間観と脳情報学で実現する安らぎと慈しみの境地」(研究代表者・今水寛教授、研究分担者・蓑輪顕量教授)では、最新の脳科学と文献学にもとづく知識の融合とその社会実装について
  • 2)人文情報学部門(大向一輝准教授)では、同部門で先導するデジタル・ヒューマニティーズの教育と研究について
  • 3)科学研究費基盤(B)「デーヴァナーガリー文字OCRの実用化と文献データベースの利活用にむけた応用研究」(研究代表者・加藤隆宏〔招聘実施担当者〕)では、AIによるディープラーニングを用いたデーヴァナーガリー文字(ヒンディー語などに使用されるインドの代表的文字)の光学文字認識アプリケーションの開発とその応用研究について

 今回の研修で見学・体験したのは、いずれも人文科学・社会科学における伝統的な学問手法に最先端のテクノロジーを導入することにより、単なる文理融合を超えるような「総合知」を生み出すことが期待される研究分野である。こうした取り組みにより、人文科学・社会科学における研究はこれまでとは異なる広がりをもって展開・発展することが予想されるが、それと同時に、「総合知」の進展によって科学技術そのもののあり方が照らし返され、まったく新しい科学技術イノベーションの創出につながる可能性を秘めている。

 今回の招へいプログラムを通じて、インド側の学生たちは新しい人文科学・社会科学のあり方を考えるきっかけを得ることができた。また、プログラムの一環として実施された学生同士の研究交流会は、インド側学生のみならず、日本側の学生たちにとっても極めて貴重な学びの機会となった。
 近年のインドにおける科学技術分野の進展は目覚ましく、今後は日本にとってあらゆる意味でインドが重要なパートナーとなっていくと考えられる。欧米とは異なる独自の文化的背景をもつ日本とインドが協力し、世界に向けて新しい価値を共に創出することが期待される。今回の学生交流は、そうした次世代の日印パートナーシップを担う人材育成、さらには人的ネットワークの構築という意味でも大きな意義をもつものとなった。

【プログラムの風景】

 本プログラムは、東京大学人文社会系研究科が主導する国際人文学プロジェクトの認定を受け、研究科をあげてのサポートを得ることができた。写真は納富信留研究科長からの歓迎の辞。

活動レポート写真2
蓑輪顕量教授による特別講義
活動レポート写真3
アジア研究図書館・総合図書館を見学

 アジア研究図書館の板橋先生と総合図書館の大澤主査にレクチャーをいただいた。

活動レポート写真4
文学部学生との交流会
活動レポート写真5
東京大学インド人留学生会との交流

 東京大学に留学中の学生から、日本での研究生活などについてレクチャーをいただいた。また、東京大学の卒業生(Seetharam先生)から将来のキャリアパスなどについてアドヴァイスをいただいた。

活動レポート写真6

 このほか、本学学生の協力により、さまざまな課外活動にも参加することができました。サポートいただいたみなさんに感謝いたします。また、このような貴重な機会を与えてくださったさくらサイエンスプログラム関係者のみなさまに感謝いたします。