2023年度 活動レポート 第162号:東京工業大学

2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第162号 (Aコース)

日本型工学教育研究の体験

東京工業大学からの報告

 2023年12月11日から12月15日までの5日間、エジプト日本科学技術大学(E−JUST)のエネルギー資源工学科(ERE)より、学科長Hamdy Hassan教授、3年生7名と4年生2名の計10名を招へいしました。
 E−JUSTは、日本政府の支援でエジプトのアレキサンドリアに2010年に開学した新しい国立大学です。東京工業大学は、2009年から現在に至るまでJICAプロジェクトPhase1–3によりEREを支援してきました。現Phase3では、「教員、大学院学生、学部生をメンバーとする研究室を中心とした教育研究体制を構築する」ことを支援の目的の一つとしています。
 その一環として、「日本型工学教育研究の体験」と題した本プログラムでは、(1)学生の研究発表と議論を中心とするゼミや、学部生が研究室に所属して卒業「研究」をするなどの日本式工学教育研究を体験することと、(2)国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)福島再生可能エネルギー研究所(FREA)を見学して再生可能エネルギー分野の先端科学技術に触れることを目的としました。

【1日目】

 空港でSIMカードと交通系ICカードを調達、大学近くのホテルへ移動しました。近隣のスーパーマーケットで食料品などを調達、翌日以降の活動についてオリエンテーションを受けて来たる活動に備えました。

【2日目】

 午前中、物質理工学院応用化学系の関口秀俊教授によるゼミに参加しました(写真1)。冒頭、関口教授から、関口研ゼミのシステム(出席者、ゼミの頻度、各学生の発表の頻度など)について説明を受けました。その後、東京工業大学とE−JUSTの学生による研究発表と、発表内容についての議論からなる、いわゆる研究室ゼミが行われました。ゼミで研究への理解を深めた後に実験室を見学し、研究室がその研究分野に特化した独自の実験設備を構築して研究を高度化していることを学びました。

活動レポート写真1
関口研実験室の見学にて、実験装置の説明をする東京工業大学の学生と

 午後のキャンパスツアーでは、鳥人間コンテストなどの課外活動で学生が自由に使える工作機械を備えた「ものつくり教育研究支援センター」、図書館、学生が主体の国際交流拠点Taki Plaza、広く綺麗な学生食堂、専門書やコンピュータ、白衣まで購入できる店舗、一般の学生や教職員がスポーツを楽しめるグラウンドなど、学生生活を支える施設を見学しました。
 キャンパスツアー後、工学院システム制御系の小酒英範教授によるゼミに参加しました。冒頭で小酒研ゼミのシステムについて説明があった後、研究発表と議論からなる研究室ゼミ、さらに実験室見学をしました。

活動レポート写真2
小酒研ゼミで研究発表をする様子

【3日目】

 午前中には、科学技術創成研究院未来産業技術研究所の齊藤卓志教授によるゼミと実験室見学、午後は物質理工学院応用化学系の森伸介准教授によるゼミと実験室見学、大川原真一特任教授によるゼミと実験室見学にそれぞれ参加しました。

活動レポート写真3
齊藤研ゼミにて
活動レポート写真4
森研ゼミにて
活動レポート写真5
大川原研ゼミで研究発表をする様子

【4日目】

 新幹線でFREAへ。技術実証フィールドにおいて太陽光発電設備、風力発電設備や水素貯蔵設備等を、屋内において地熱発電や水素貯蔵材料などの技術展示を見学して、再生可能エネルギー分野の最先端技術を学びました。

活動レポート写真6
産総研FREAの技術実証フィールドにて様々な再生可能エネルギー設備を見学
(右後方は風力発電施設)

【5日目】

 ラップアップでは、さくらサイエンスプログラム修了証の授与とアンケートをしました。学生からは、「研究室ゼミがとても活発で組織化されている」「FREAでこれまで勉強してきた様々なエネルギーシステムを実際に見て興味深かった」「Overall it was a lifetime experience that enriched my knowledge about science and Japanese culture」などの声が寄せられました。ほぼ全員が、日本の大学院で勉強したい、日本で研究者として働きたい、日本の企業で働きたいなどと回答したのは、本プログラムの大きな成果です。日本へ来て、大学や研究所を見て、研究に触れてもらう、体験をしてもらうことが、優秀な科学技術人材を日本へ惹きつけるのだとあらためて感じました。彼等には、近い将来、是非希望を叶えて欲しいと思います。