2023年度 活動レポート 第161号:鳥取大学

2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第161号 (Aコース)

乾燥地での園芸作物栽培における日本の研究開発・普及について学ぶ体験交流

鳥取大学からの報告

 12月11日から18日まで、鳥取大学・乾燥地研究センターは、ウズベキスタンのサマルカンド国立大学の学生たち10名を受け入れました。
 サマルカンド国立大学は、1927年に創立され、25,535人の学生が学ぶ、ウズベキスタンでも有数の大学です。水資源に限界がある同国では食料安全保障が重要であり、イノベーティブな農業研究開発を強化するため、ウズベキスタン政府もその整備に力を注いでいます。そこで、同大学と2023年2月に学術交流協定を締結した鳥取大学は、サマルカンド国立大学のアグロバイオテクノロジー食料安全保障研究所で学ぶ学部生5名、大学院生4名を乾燥地研究センターで受け入れました。同研究所長の引率により初めて来日した学生たちは終始感激していました。
 来日の主な日程は、以下のとおりです。

11日 来日(関西空港)
12日 オリエンテーション、乾燥地研究センター施設見学
鳥取砂丘、鳥取県立博物館の見学
13日 サマルカンド国立大学学生と鳥取大学の教員によるプレゼンテーション
意見交換会、圃場実験の見学
14日 青谷町の梨農園、北栄町の鳥取県園芸試験場の見学
鳥取大学生との交流会
15日 ICP−MSの操作講習
学んだことの発表・修了式
16日 出雲大社、松江城、和鋼博物館見学
17日 鳥取から泉佐野に移動
18日 離日

 12月12日は、乾燥地研究センターでのオリエンテーションの後で、鳥取砂丘や県立博物館を見学し鳥取県や山陰の地域の自然や歴史を学びました。

活動レポート写真1
乾燥地研究センターの圃場:留学生の実験の方法を学ぶ

 13日は、自分たちの関心について各自がプレゼンテーションを行いました。また、鳥取大学の教員から、日本による中央アジアへの国際協力、モンゴルを拠点にした黄砂や牧草地の研究、中央アジアでの灌漑水管理、効率的な水管理技術などについて概要を聞き、乾燥地科学の面白さについて学びました。

 14日は、青谷町の梨農園や北栄町の鳥取県園芸試験場を見学しました。梨農園では、接ぎ木などの実際の梨の栽培技術や管理の方法を聞いて、鳥取県の特産品である梨の栽培について知りました。園芸試験場では、鳥取の風土に適するように開発されたイチゴの新品種の栽培方法についても学びました。こうして、学生たちにとって関心の高い園芸作物について、日本での研究開発と農家レベルでの普及について、現場で貴重な体験交流ができました。

活動レポート写真2
青谷町の梨農園:
特産品である梨栽培の実態を学ぶ
活動レポート写真3
鳥取県園芸試験場:
鳥取に適したイチゴの品種の栽培方法を学ぶ

 15日は、元素濃度を測定するICP−MSの操作方法について講習を受けた後、3つのグループに分かれて、鳥取で学んだことと、今後ウズベキスタンに帰国後に、それらをどう活用するかについての発表をしました。その後、辻本乾燥地研究センター長から、修了証書が授与されました。

活動レポート写真4
乾燥地研究センターの分析室:高度な分析手法を学ぶ

 ウズベキスタンは、農地の7割が乾燥・半乾燥地帯にあります。気候変動が激しくなる中で、水が不足し用水や土の塩性化が進み、農業は年々困難になっています。こうした中で、ウズベキスタン政府は、換金作物の綿花栽培だけでなく、農家に裨益する園芸作物栽培の技術開発とその普及を重視しています。サマルカンド国立大学と学術交流協定を締結した鳥取大学は、このような現地の課題解決をサポートしています。

 ウズベキスタンからの学生たちは、鳥取の空気が新鮮なこと、人々が親切なこと、日本人が時間を守ることなどの美徳にも感動していました。また、どこでもとても熱心に質問し、日本の経験を吸収しました。そして、鳥取大学に将来留学したいという希望を持ちました。
 世界の乾燥地の課題解決に取り組む鳥取大学は、これからも乾燥地科学の分野で、発展途上国から学生や若手研究者を受け入れていく予定です。