2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第159号 (Bコース)
水環境汚染物質の検出に向けたナノバイオセンサに関する国際共同研究
九州工業大学大学院生命体工学研究科
准教授 池野慎也さんからの報告
令和5年11月24日から12月14日までの3週間、交流協定校であるマレーシアプトラ大学から大学院生2名と引率教員1名、同じくマレーシアサインズ大学から大学院生2名と引率教員1名、そして新たにマレーシアイスラム科学大学から大学院生1名と引率教員1名、合計8名を招へいして国際共同研究活動を実施しました。マレーシアでは水環境汚染の問題が深刻であり、プラスチックゴミや焼却ゴミから出る環境ホルモン、工業排水中の重金属類や船舶の船底塗料を発生源とする海洋環境汚染が深刻となっています。これら、環境問題を解決するためには、先進国が持つ優れた先端科学技術や英知を開発途上国での環境問題解決に活用し、経済発展以上に研究開発力の向上を加速化していく必要があるため、ナノバイオセンサに関する共同研究活動に取り組んでいます。本事業では、マイクロプラスチック問題で問題が再燃している水環境における環境ホルモン汚染に着目し、これらと特異的に結合できるペプチドの設計とその合成方法を取得することを取りかかりとして国際共同研究に着手しました。
来日前にオンラインミーティングで、自己紹介、渡航に関する注意点、日本での生活や研究活動における注意点に関するオリエンテーションを実施し、来日後の活動の準備をしました。11月24日に来日し、キックオフミーティングとして滞在中の共同研究内容について打ち合わせを行いました。週明けの月曜日(4日目)は、午前中にプレゼンテーションミーティングを実施し、午後から検出するための生体分子素子を創る技術、センサのための生体分子を発現させる技術、そして、センサのための生体分子を合成する技術の3つのチームに分かれて、本学の大学院生と一緒に共同研究を実施しました。
本事業では共同研究活動に加え、多角的な視点から循環型社会に適応するサイエンスを身近に感じ、知見を深めていただくために学内外の研究施設を訪問しました。学内施設として本学の研究センター(合成生物工学研究センター、グリーンマテリアル研究センター)を訪れ、研究室を見学しました。材料研究、微生物研究、植物バイオテクノロジーなど各センターの様々な分野の研究の紹介をいただき、知的好奇心を満たすことができました。また、学外研究施設では、世界でも有数のバイオ研究の拠点である東京工業大学大学院生命理工学院を訪問・見学しました。この訪問で、世界をリードする日本の科学技術の理解と関心を深めていただけたと思います。
共同研究の最終日には、グループごとに得られた成果の発表を行いました。研究室の学生、教員が参加し、活発な質疑応答がなされました。このディスカッションでは、新たな目的や展望が挙げられ、とても充実した共同研究活動であったことを証明できました。特に、今回新たに参画したマレーシアイスラム科学大学とは、分子の設計技術に関してより強力に共同研究活動を推進していく話が進みました。そして、研究成果発表会の終了後には修了証の授与を行いました。
本事業を通じて、招へいした学生さんは、意欲的に活動に取り組み、多くの方と話しあい、その姿から今後の共同研究への発展に大いに期待が持てました。また、研究室の日本人大学院生にとっては、研究の取り組み方や考え方の相違を身近に感じることでグローバルな感性を身につけていただけたと思います。このプログラムで招へいした院生・教員からは、多くの感謝の言葉を頂きました。
最後に、このような機会を与えていただいた科学技術振興機構、ご協力いただきました東京工業大学大学院生命理工学院の皆様、本学の教員・学生・事務の皆様にこの場を借りて心から感謝の意を表します。