2023年度 活動レポート 第157号:名古屋大学

2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第157号 (Bコース)

物質循環を考慮した持続可能な分離材料に関する研究交流を通して国際連携を発展

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学
未来社会創造機構 マテリアルイノベーション研究所
助教 萩尾健史さんからの報告

 さくらサイエンスプログラムの支援を受け、2024年1月5日から1月23日までの19日間、タイ王国の4機関(チュラロンコン大学(CU)、プリンスオブソンクラー大学(PSU)、コンケン大学(KKU)、タイ・シンクロトロン光研究所(SLRI))から4名の大学院生、1名の若手研究者、1名の若手引率研究者の計6名を招へいし、物質循環を考慮した持続可能な分離材料に関する研究交流を行いました。

 CUは1992年に大学間学術交流協定を、KKUとSLRIは2020年に筆者の所属する未来社会創造機構マテリアルイノベーション研究所と部局間協定を結んでおり、これまでにも積極的に交流を行ってきました。また、PSUはSLRIとの連携を介して新たに連携を始めた大学であり、今後のさらなる交流の活性化を期待している機関です。本交流プログラムは、これらの各機関との学術交流活動と国際連携教育・指導のさらなる活性化および国際共同研究テーマの具体化に繋げることを目的に実施しました。

<名古屋大学の研究環境を知る>

 国際連携教育のさらなる活性化に向けて、名古屋大学を学生によく知ってもらうため、筆者所属の名古屋大学のマテリアルイノベーション研究所や研究室、ノーベル賞記念館などの施設を紹介しました。研究施設の見学を通して、本学での研究活動への関心を高め、具体的な研究環境を感じることができました。

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未来社会創造機構マテリアルイノベーション研究所・研究室見学の様子

<日本産業の歴史学習と実用化意識の醸成>

 世界最大級の企業であるトヨタ自動車(株)の軌跡である、織機から自動車産業への変遷の歴史を学ぶため、また、研究の実用化に対する意識を醸成することを目的としてトヨタ産業技術記念館を訪問しました。実用化に立ちはだかるハードルを如何にして乗り越えたかを逸話を実際の製造装置を見学しながら学習しました。実物の装置が見れる場は珍しく、参加者も興味深そうに見ていました。

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トヨタ産業技術記念館見学の様子

<物質循環を考慮した持続可能な分離材料の合成・評価>

 近年の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向け、物質のリサイクルや環境浄化を可能にする吸着材などの分離材料に関する学習、研究を経験しました。本学が所有する合成技術や分析機器などを実際に使用し、当該分野の知見を持つ教員や学生含む若手研究者と一緒に、一人一テーマを受け持つ形で実験を進めました。また、その中で、今後協働できそうな新しい研究テーマのアイデアやアプローチの探索も試みました。日本での研究室生活を通して、当研究室学生とも交流を持つことができ、日本の研究生活を肌で感じることができました。

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研究室で実験に取り組む様子

<日本の多様な分野での先端技術を学ぶ>

 日本の多様な分野での先端技術を学ぶため、日本科学未来館を訪問しました。幅広い分野における最先端技術に触れる機会は、学生にとって異分野を知る貴重な経験となりました。また、異分野に対して自身の研究がどう応用できるか考える機会にもなりました。

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日本科学未来館見学の様子

 本交流プログラムでは、招へいした各種機関との間における学術交流活動と国際連携教育・指導のさらなる活性化および国際共同研究テーマの具体化に繋げることを目的として、先端大学から大学院生を、タイ有数の研究機関から若手研究者を招へいしました。参加した大学院生および若手研究者にとって、他研究室の技術を自身の研究に取り込むことで新たな研究テーマを考える良い機会となりました。さらに、日本での研究生活や成果報告の体験は、新規の共同研究および日本での研究に対する意欲も高められました。本交流は、参画した各種機関と本学の協働による研究・教育活動の活発化に貢献することが期待できる結果となりました。

 多機関交流という貴重な機会を与えてくださった、JSTならびに関係者の皆様に深く感謝申し上げます。