2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第151号 (Aコース)
「次世代無線・光通信システムによる高速データ転送」を学ぶ実験的交流プログラム
山梨大学からの報告
さくらサイエンスプログラムは、科学技術を通じた国際交流を推進するプログラムで、科学技術を核にした文化的および教育的交流を促進することを目的としています。今回、山梨大学工学部電気電子工学科では、以前より親交のあったバングラデシュ・クルナ大学の電気通信工学分野所属学生9名と引率教員1名の計10名をお招きしてA.科学技術体験コースのプログラムを実施しました。
プログラム初日、招へい者10名が香港経由で約10時間かけて成田空港に来日。入国にかなり時間がかかりましたが、迎えに来た日本側の実施担当者と無事に合流した後に、さらに陸路で5時間近くかけて山梨県甲府市まで移動しました。
プログラム二日目にいよいよ実際の活動が始まります。午前中は招へい団に加えて本学学生や複数の教員が参加するオープニングセレモニーとキャンパスミニツアーを実施。山梨大学研究推進担当の副学長・理事による挨拶の後、招へい団引率者の教授よりバングラデシュの紹介と参加者の自己紹介でプログラムの幕が開き、参加者間の絆の形成が始まりました。午後からは招へい学生からの研究発表とグループディスカッションを含むワークショップを実施。参加者たちはそれぞれの専門分野や文化について深く掘り下げた議論を行いました。これらのディスカッションは、参加者にとって非常に有意義なものとなり、翌日の研究室ツアーに向けた期待を高めました。夜には情報交換会も実施。配膳を待つ間に午後のワークショップの様子が地元テレビニュースで放映されたのも招へい者たちには貴重な機会となりました。
三日目は、山梨大学内の6つの研究室を訪問し、AI応用や半導体、光メモリ、超伝導フィルタ、光通信など、招へい学生たちの所属する電気通信工学分野の様々な最新技術やその研究成果について学びました。午後には、再度グループディスカッションも行われ、参加者は日本とバングラデシュ、それぞれの大学間でのコラボレーションの可能性について意見を交わしました。
四日目以降は様々な場所を訪れて見識を広める活動を行いました。まず四日目には、山梨県内にある世界的に高いシェアを誇る電気電子産業関連企業を訪れ、日本の先端技術がどのように実用化・製品化されているかを学びました。最先端技術の工業製品がどのように製造されているのかを実際に見ることは、日本に来なければ決して得られない貴重な体験であったという意見が多く聞かれました。
五日目、参加者は富士山科学研究所を訪問し、富士山の成り立ちや噴火時に予想される事態、災害時の通信システムの重要性について学び、科学的知見と日本の自然美を結びつける機会となりました。帰国前日は東京を訪問し、スカイツリーと浅草寺の訪問を通じて、日本の歴史と現代技術の融合を感じ取ることができました。帰国日には固く再開を約してお別れしました。
今回の招へい団はイスラム教とヒンドゥー教の方で構成されており、宗教戒律によって食事には厳しい制約がありました。山梨大学在学中のクルナ大学からの留学生や大学生協食堂などのご支援を頂きながら、なんとかすべての食事を、お招きした方々の文化的背景を尊重して提供することができました。
このプログラムを通じて築かれた絆と学びは、参加者の将来において計り知れない価値を持つでしょう。科学技術を通じた国際交流がもたらす可能性の広がりを、この一週間で存分に体験した参加者たちは新たな技術的な知見を得るだけでなく、自身の持つ限りない可能性に気づきを得て帰国したことと思います。招へい者の皆さんからは国際共同研究の実施や、さらに長期間のB.共同研究活動コース実施への高い期待が寄せられています。今後は大学間国際交流協定の締結も含め、山梨大学とクルナ大学の交流をさらに深めていく予定です。