2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第148号 (Aコース)
インドの工学・情報技術を担う高度人材のための最新技術体験と交流促進プログラム
東京大学大学院工学系研究科
教授 古市由美子さんからの報告
東京大学大学院工学系研究科では、2023年12月20日から12月26日まで、インド工科大学カンプール校、ハイデラバード校より合計10名の学生(大学院学生2名、学部学生7名)と教員1名を招へいしました。
本プログラムは工学系、情報理工学系に関連する学術的な背景を持ち、日本文化、社会への関心が高く、日本語学習経験がある優秀なインド人学生を対象に、東京大学大学院工学系研究科の教員と連携し、最新の研究成果の共有と各研究室で情報交流を図ることを目的としました。工学者として、各専門の観点から日本の災害とその復興を含む様々な技術開発の成果に触れ、さらに日本の社会的、文化的背景について知識を深める機会を提供しました。
12月20日に10名が来日し、21日に東京大学でのさくらサイエンスプログラムが開始されました。午前、オリエンテーション後に、日本人学生によるキャンパスツアーに参加しました。午後は情報理工学系研究科の講義を受講しました。講義では、コンピュータサイエンス学部の学生を中心に本学の情報理工学の専門的な教育・研究を体感してもらうことができました。その後、東京大学のインド人留学生会のインド人学生との交流会を設けました。研究生活だけなく、日常生活についてざっくばらんに話す機会を提供することによって、日本での留学生活について確認ができたのではないかと思います。
22日午前は工学系日本語教室の日本語クラスに参加しました。すでに日本語学習経験がある学生なので、個々の日本語レベルに応じたクラスで他の留学生に交じって学びました。ランチタイムは、「インターナショナルラウンジ」で全学の日本人学生との交流を楽しみました。午後からは、工学系研究科の講義を受講後、研究室を見学しました。世界最先端の研究室での実験やシミュレーションを見学することで研究への関心が高まり、本学への留学をより身近に感じられるようになったようです。
23日は東京駅から新幹線に乗り、みやぎ東日本大震災津波伝承館と門脇小学校の見学をしました。インドでは日本の新幹線方式を採用した高速鉄道が作られており、学生は新幹線に大変興味を持っていました。伝承館では、三陸の津波被害の歴史、東日本大震災津波、復興の取り組みに関わる映像、写真、被災物などの展示物について、ガイドの説明を熱心に聞き入っていました。また、津波火災による被災状況を残す門脇小学校は、1階は津波と津波火災、2階、3階には津波火災後の状況がそのまま残っており、さらに体験者が語る映像を見ることによって、臨場感を持って理解することができたようです。
24日午前は、日本人学生と池袋防災館で地震体験ツアーに参加しました。前日に東日本大震災を見学したため、関心を持って、地震の揺れの体験、初期消火や応急救護、火災の煙からの避難などの日本の防災・耐震技術や防災意識や管理システムに触れることができました。午後は、日本人学生と日本未来科学館を見学しました。日本の新たな科学技術の魅力や科学技術の進歩が社会とどのようにかかわっているかを楽しみながら考えることができました。
25日は今回のさくらサイエンスプログラムを振り返り、各自がプレゼンテーションを主に日本語で行いました。その後、国際交流部門長から参加者全員(10名)に修了証とバッジが授与されました。各自の発表報告によると、東日本大震災津波伝承館での展示物や映像、震災遺構である門脇小学校見学によって、日本とインドの共通課題の一つである災害と復興への意識が高まったことが分かりました。日本人学生との交流によって、日本語学習への動機づけが高まり、日本文化への理解が深まったようです。
今回、本プログラムをサポートしてくれた日本人学生は、2月にインド工科大学を訪問予定になっております。今後もさくらサイエンスプログラムを通して、本学とインド工科大学とのネットワークの強化に貢献し、ひいては、日本および世界の科学技術・イノベーションの発展に寄与していきたいです。