2023年度 活動レポート 第122号:高知大学

2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第122号 (Aコース)

地球掘削科学国際拠点の科学技術と変動帯の持続可能地域創生国際連携活動

高知大学海洋コア国際研究所
教授 岩井雅夫さんからの報告

 2023年12月12日から18日までの7日間、インドネシアのパジャジャラン大学地質工学部長が引率する学生・若手教員(日本語専攻の学生2名を含む)総勢10名を招へいし、巨大地震発生帯の地形・地質・文化・防災・地域創生を共に考えるプログラムを実施しました。

 地震・津波・風水害といった自然災害被害を度々受けてきたインドネシアと日本は、自然災害に強い地域創生が共通の課題となっています。そこで本事業では、共通の課題をもちつつも、文化・気候・社会構造が異なるインドネシアの若手人材を招へいし、1)地球掘削科学国際拠点海洋コア国際研究所の視察・実習、2)室戸ユネスコ世界ジオパークで隆起地域の自然・文化の学習と国際交流、3)高知県中部沈降地域における自然観察と文化体験など、文理融合型フィールドワークを実施し、今後の国際連携活動について意見交換を行いました。

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高知龍馬空港の龍馬像前で集合写真

 高知大学は、室戸世界ジオパークセンター内にサテライトラボを設置、ジオパーク専門員を客員講師として招へい、地域と密接に連携した実践的防災教育・持続可能地域創生支援活動を実施してきました。初日は、高知龍馬空港で出迎えた後、室戸市のマイクロバスで海洋コア国際研究所に移動、エントランスホールでショートツアーを実施後、オリエンテーションを実施、プログラムの目的や行程、各種手続きや安全対策について説明を行いました。その後室戸市内高台にある民間宿泊施設に移動、ハラル対応食を楽しんでいただきました。

 2日目・3日目は、室戸ユネスコ世界ジオパーク内で、隆起域の地形・地質・植生・文化に触れ自然災害に対する先人と現代人の対策について学んでもらうコースを設定。2日目午前中は室戸岬で大地を構成する基盤地質や巨大地震に伴って隆起してきた痕跡について観察した後、県立室戸高校で次世代を担う両国の若手人材が国際交流を行いました。双方のジオパーク関連活動を、室戸高校からは英語で、パジャジャラン大学側からは日本語で紹介してもらい、活発な質疑応答がなされました。午後は津波避難シェルターや廃校水族館を見学、防災や持続可能地域創生の実践例を体感しました。また3日目には、海岸沿いの変動地形・地質観察のほか、金剛頂寺で遍路文化に触れるとともに木造建築の免震構造を見学、吉良川町散策では、暴風雨に強い建物・町並みを視察、先人の知恵を学びました。

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高知県立室戸高校での交流会(左)と学生集合写真(右)
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行当岬の砂泥互層と変形構造観察(左)および金剛頂寺の免震構造見学(右)

 4日目午前中は、海洋コア国際研究所が保有する施設・設備・コア試料群を紹介、基礎的なコア実習を実施しました。高知大学と海洋研究開発機構が共同運営する高知コアセンター(通称KCC)は、国際深海科学掘削計画(IODP)の世界3大保管庫の一つであり、両国に深く関わる黒潮圏を含む西太平洋~インド洋の深海底コア試料を保管する世界唯一の施設です。人類が半世紀以上にわたって集積した深海掘削コア試料の3分の1を保管し、基礎的非破壊分析から高度な物質科学分析までを行う共同利用機器を備えており、今後の国際共同研究促進に期待がよせられました。

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海洋コア保管施設見学(左)と世界最大級の磁気シールドルーム体験(右)

 午後の講演会では、海洋研究開発機構高知コア研究所石川剛志所長代理が「地震発生帯掘削の成果」、元室戸ユネスコ世界ジオパーク国際交流専門員小笠原翼さんが「変動帯に生きる」について話題提供、活発な議論・意見交換が行われました。

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講演会の様子

 5日目・6日目は、高知中央部の久礼・佐川町・高知市で沈降地域の地形や、津波避難タワーを視察、多様性に富んだ地質と石灰岩地や蛇紋岩地の植生を、佐川地質館や牧野植物園、高知大学サイエンスギャラリーの展示で解説しました。

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津波避難タワー視察

 最終日には櫻井学長および受田理事を交えて両大学の今後の国際連携強化について意見交換を行い、櫻井学長からプログラム修了証が参加者一人一人に授与されました。朝倉キャンパス内散策後は、高知龍馬空港から羽田空港へ移動、帰途につきました。

 今回のさくらサイエンスプログラムの様子は、帰国後間も無くパジャジャラン大学のホームページに詳細が報告され、彼らの反応を直接窺い知ることができました。 https://ftgeologi.unpad.ac.id/elementor-24402/

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