2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第120号 (Aコース)
科学人材育成を目的とした教育プログラムに関する研修
三重大学からの報告
令和5年11月8日から15日にかけて、三重大学の協定校であるホーチミン市師範大学の学生9名(うち大学院生2名)と教員1名を招へいし、「科学人材育成を目的とした教育プログラムに関する研修」を行いました。招へいした学生達は卒業後に主に高校の理科教員を志望しており、ベトナムの理科教育のこれからの在り方に高い関心を持つ学生達です。
今回は三重大学で実施しているジュニアドクター育成塾の生徒達との交流や、三重県内のSSH校や科学館への訪問、さらに三重大学の授業への参加を通して、子ども達の能力を引き出す理科の指導法について考えることを研修の目的としました。
本活動レポートでは、主に「学校訪問」と「ジュニアドクター育成塾生との国際交流」について紹介したいと思います。
■出発前の準備と来日
研修プログラムに先立ち、10月20日にオンラインでオリエンテーションを行いました。オリエンテーションでは研修プログラムの趣旨や概要について説明し、来日時や入国時の注意点に関するガイダンスも行いました。訪日準備のための情報をGoogle spacesで共有していたため、来日時には招へい者達はスムーズに入国することができたようです。
■学校訪問
研修プログラムの1日目と2日目に三重県内の高校、3日目に三重大学教育学部附属小学校を訪れ、授業見学を行いました。訪問した高校は三重県立津高等学校と四日市高等学校で、どちらもスーパー・サイエンス・ハイスクール(SSH)に指定されている高校です。
1日目は津高等学校を訪問し、化学の授業と科学部の活動を見学しました。化学の授業では高校生達と、お湯に入れると色が変わる「魔法のマドラー」作りを体験しました。また科学部の活動見学では、天文、化学、生物、物理、数学の各部に所属する高校生達が活動内容を英語で紹介し、招へい者達と交流を行いました。
2日目は四日市高等学校を訪問し、探求活動の見学と、高校生との国際交流を行いました。探求活動の見学では、生徒達の物理、化学、生物の探究活動を見学しました。写真2(左)は、物理を専門とする招へい学生2名が、高校生に実験のアドバイスやデータの解釈についてコメントしている様子です。
探究活動の見学の後には、高校生達との交流会が開かれました(写真2(右))。招へい者達と高校生達は、学校紹介のパンフレットやベトナムの地図を見ながら、お互いの学校生活のことやベトナムの文化や生活に関して、英語で交流を楽しみました。
また、3日目には三重大学教育学部附属小学校を訪問し、理科の授業見学を行いました。招へい者達は同校の前田昌志先生による、小学校5年「月の満ち欠け」の授業に参加しました。アニメ「鬼滅の刃」や生成AIを教材として用いるなど、前田先生ならではのアイデアに富んだ授業に、招へい者達は大いに感銘を受けたようです。
■ジュニアドクター育成塾の生徒達との交流
この研修プログラムのもう一つの目玉は、ジュニアドクター育成塾の生徒達との交流でした。三重大学ではJSTの支援により、理系分野に高い意欲を持つ小中学生のための「ジュニアドクター育成塾」を運営しています。昨年度に引き続き、今年度もジュニアドクター育成塾の生徒達と、科学を通した交流を行いました。
4日目の午前中に、ジュニアドクター育成塾の生徒3人による研究発表会が三重大学で行われました。ジュニアドクターの生徒達は、日本語や英語で自分の研究発表を行い、招へい者達からは多くの質問やアドバイスが寄せられました。また同日の午後には、三重大学生物資源学部の森阪先生によるイルカの群れや社会に関する授業があり、招へい者達も生徒達とのグループワークを楽しみました。
5日目にはジュニアドクター育成塾の生徒達と名古屋市科学館を訪問しました。招へい者達とジュニアドクターの生徒達はいくつかのグループに分かれ、科学館の様々な展示物を楽しみました。また、招へい者達はサイエンスショー等の体験型の展示にも参加し、科学の楽しさを再認識したようでした。
■プログラム終了とその後
7日目の午前中には招へい者達の報告会を催し、このプログラムを通して日本で体験したことや学んだことについてのプレゼンが行われました。午後には中部国際空港に移動し、空港近くのホテルで一泊した後、翌11月15日の朝の便で招へい者達は帰国の途につきました。写真4(右)は、同日午後にベトナムのタン・ソン・ニャット空港に到着した招へい者達から送られてきたものです。皆、無事母国に戻れた安心感と、研修プログラムを終えた達成感に満ち溢れた明るい表情をしており、実施担当者一同をほっと安堵させてくれました。
後日ホーチミン市師範大学では、招へい者達が主催する研修報告会が行われ、大勢の参加者があり盛況だったようです。今回の招へい者の中から進学等で再来日する者が出てくることを期待すると共に、今後も理科教育を通して日本とベトナムの架け橋となる、優秀な学生達が来日することを望んでいます。