2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第119号 (Aコース)
モンゴルの若手研究者らが信州の森林保全と造林技術を学ぶ
信州大学農学部
准教授 安江恒さんからの報告
2023年11月6日~12日まで、モンゴル国立大学より大学院生3名、大学生3名、教員2名、技術職員1名が来日し、信州大学農学部において本プログラムを実施しました。信州大学農学部とモンゴル国立大学応用科学工学部では、2015年に交流協定を締結し森林に関する共同研究および教員の研修受け入れなどの人材交流を継続してきました。このたびは、主に学生に向けて人と環境の共生に理解がある優れた森林技術者の育成を目的としてプログラムを実施しました。
信州大学では地域貢献度連続1位に表されるように地域貢献を重視しており、その実績により形成された根羽村をはじめとする地域との共同研究事例があります。これらの資源を活かし、持続的な森林資源の活用技術や実践例の理解を通して、モンゴルにおける地域社会の構築や社会実装に貢献する技術者、研究者の育成に貢献出来るようなプログラムを展開しました。加えて、大学院生との共同授業を実施し、国内外の農林業・畜産業および環境の発展と課題について、情報収集を通じて議論やプレゼンを行うこと、相互に情報を発信しコミュニケーション能力の向上を図る取り組みを行いました。
【1日目】
成田空港に到着後、信州大学伊那キャンパス近くの宿泊施設に移動しました。
【2日目】
米倉農学部長と懇談し、モンゴルの森林の状況や本プログラムに期待することなど、多岐にわたり意見交換を行いました。その後、本学大学院の授業に参加しました。モンゴル側参加者と信州大学総合理工学研究科農学専攻の大学院生の計25名により、モンゴルおよび日本の森林について双方がプレゼン発表を行い、活発なディスカッションが行われました。その後、生協食堂において情報交換会を行い、学生間の活発な交流が行われました。
【3日目】
信州大学農学部附属手良沢山演習林において植林および森林伐採技術に関する体験と見学を行いました。その後、企業による地域薪供給事業、木材市場の見学を行いました。植林、育林から伐採に至る体系的な技術教育が行われていることに感心すると共に、モンゴルに比べて早い樹木の成長や構成する植物種の多さに驚きの声が聞かれました。
【4日目】
松本市の美ヶ原山麓において深刻な松枯れ被害を視察した後に、松川村に移動し、松枯れ被害を見越した樹種転換に取り組んでいる造林現場の見学を行いました。地元で従事する林業事業体職員の説明に対して、非常に活発な質問が飛び交いました。モンゴルにおいても病虫害は大きな問題になりつつある中で、これらの技術はおおいに参考なったとの感想をいただきました。
【5日目】
長野県最南端に位置する根羽村役場および根羽村森林組合の視察を行いました。林業が主産業な小さな村ですが、村を挙げて林業、木材加工およびバイオマスエネルギー活用に取り組み、地域の活性化を図っている事例は、同様な状況にあるモンゴルの山村の振興の参考になることが期待できます。
【6日目】
今後の共同研究や来夏のモンゴル訪問に関する打ち合わせを行った後、東京に移動、宿泊し、翌日に成田空港より帰国しました。
アンケートによると、最も印象に残った点が参加学生によって全て異なっており、我が国の林業や森林教育に関する特徴を多面的に学んでもらえたことがうかがえます。また、機会があれば留学したいとの希望が多く聞かれました。教員からは森林の管理および利用技術の先進性や信州大学の教育プログラムを高く評価されました。一方、日本側の学生からもモンゴルを訪問してみたいとの希望が聞かれました。本プログラムが、研究に加え教育における交流にも大きな一歩となることを期待しています