2023年度 活動レポート 第117号:城西大学

2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第117号 (Aコース)

日中における天然薬物研究の現状および最近の進歩

城西大学からの報告

 2023年11月27日~12月2日の期間でさくらサイエンスプログラムによる「日中における天然薬物研究の現状および最近の進歩」をテーマとする交流プログラムを実施しました。
 世界的にグローバル化が急速に進展する中、国際交流・共同研究によるイノベーションの創出が大いに期待されています。また、革新的新薬を創出するために、日中両国の研究者はともに天然薬物の研究・開発および臨床応用にたゆみなく努力しています。生薬からの有効成分の抽出、これら成分の薬理活性や作用機序、さらに漢方薬・中薬の臨床応用など、両国の研究者は長年天然薬物に関するエビデンスの構築に取り組んでおり、両国民の福祉・衛生に貢献してきました。今回、暨南大学をはじめとする中国・広東省の大学・病院、湖北省中医院からの若手研究者により構成された訪日団が、東京薬科大学を訪問、(株)ツムラ茨城工場・記念館を見学するほか、日中両国の研究者のシンポジウムを開催し、両国における天然薬物分野の情報交換を通じて、お互いの経験・強みを活かした国際交流および共同研究の活発化が図られました。

【11月28日】

 東京薬科大学を訪問させていただきました。三巻祥浩学長による東京薬科大学に関するご説明を受けたのち、漢方資源応用学教室および研究内容のご紹介を受けました。また、研究施設の見学に加え、薬用植物園・東京薬科大学史料館も見学しました。これらの活動を通じて、招へい者の皆さんは日本の大学で行われている天然薬物研究に対する理解を深めました。

活動レポート写真1
東京薬科大学薬用植物園見学

【11月29日】

 (株)ツムラ茨城工場・記念館を見学してきました。ツムラは、漢方薬の代表的なメーカーの一つとして中国研究者の間に幅広く知られており、招へい者たちは長旅の疲れを感じさせないほど興味津々で工場紹介のビデオを鑑賞したのち、研究開発者の学術報告会、および記念館とCMC開発研究所の見学に参加しました。生薬の栽培・選別・保存に加え、最先端の製剤技術に対して、招へい者たちは大変感銘を受け、また漢方医学と中医学の診断・治療の違いの内容に触れ、日本漢方薬と中国中薬のそれぞれの特徴に関する理解を深めることができました。

活動レポート写真2
(株)ツムラ茨城工場CMC開発研究所見学

【11月30日】

 「日中ハイレベル研究者交流会~日中における天然薬物研究の現状および最近の進歩~」シンポジウムが開催されました。今回のシンポジウムの開催にあたって、北里大学名誉教授(元北里大学北里生命科学研究所所長)、東京薬科大学客員教授で、一般財団法人北里環境科学センター理事長などの要職を務めており、和漢薬物研究の第一人者である山田陽城先生、および中国工程院院士(日本学士院会員相当)で中国を代表する薬学・天然薬物研究者である姚新生先生に座長を務めて頂きました。

 伝統的な天然薬物(化学系)、天然薬物の薬理活性および漢方薬・中薬の臨床応用の三つのセッションで構成されたシンポジウムを通じて、参加者は天然薬物の基礎研究ならびに臨床応用に関する情報を共有することができ、登壇者のみならず聴講者の皆さんからも高い評価が得られました。また、各セッションの発表に対して活発な議論が行われ、日中両国の研究者同士の相互理解を深め、将来の共同研究のきっかけになったと思われます。シンポジウム終了後の意見交換会を通じて、日中両国の研究者の友情をさらに深め、お互いに積極的に今後の国際交流と共同研究に参加し、共通の新たな課題に国際的な観点から取り組むとともに、日中両国民の健康・福祉の向上に貢献できるように努めることを約束しました。

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「日中における天然薬物研究の現状および最近の進歩」シンポジウム

【12月1日】

 大阪に移動し、到着後にスギ薬局を見学し、奧田製薬株式会社の製品を含め日本のOTC漢方薬を手に取って確認しました。また、立命館大学を視察するとともに製薬機器会社であるフロイント・ターボ株式会社を見学しました。このような交流を通じて、基礎研究・臨床応用に加え、漢方薬・中薬の製造分野での交流もでき、今後の日中における天然薬物の製造・臨床応用のさらなる発展に良いヒントが得られたものと思われます。

 12月2日の帰国日を含む6日間の短いプログラムでしたが、限られた時間の中、招へい者の方々の努力はもちろんのこと、受け入れ機関、訪問先の方々の献身的なサポートのおかげで期待以上の効果を得ることができました。これを契機として、日中間の天然薬物分野を含む科学技術交流や共同研究が更に発展し、直面する新たな課題に国際的観点から幅広く取り組んでいく弾みになることを期待しています。

 最後に、この貴重な国際交流の機会を与えてくださった「さくらサイエンスプログラム」に心より感謝申し上げます。

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北里大学名誉教授・山田陽城先生による修了証書の授与