2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第113号 (Bコース)
タイ・ウボンラーチャターニー大学との共同研究活動
印刷技術を応用した低コストバイオマーカーアッセイデバイスの開発
慶應義塾大学理工学部
教授 チッテリオ・ダニエルさんからの報告
JSTさくらサイエンスプログラムの支援のもと、2023年10月22日~11月10日の20日間、タイ・ウボンラーチャターニー大学より大学院生3名、教員1名を招き、慶應義塾大学理工学部にて共同研究を行いました。
この活動は、2019年秋に続き、2回目のさくらサイエンスプログラムの共同研究活動となります。前回のプログラムの結果、両グループ間の長期的な研究協力が確立され、すでに2020年以降、4本の研究論文が査読付き科学雑誌に共同掲載されています。またこの共同研究は、COVID−19パンデミック期間中も、共同オンラインセミナーの形で継続されました。今回も、ウボンラーチャターニー大学の新たな博士・修士課程の学生が、日本の最先端の研究環境を体験すると同時に、慶應義塾大学の日本人学生と国際的に交流すること、また、両大学の分析化学研究グループが、バイオマーカーモニタリングにおけるポイントオブケア応用に関する研究交流を行い、長期的な共同研究につなげることを目的として実施いたしました。
進め方は、第1に、一般的な研究知識交換として、ウボンラーチャターニー大学、慶應義塾大学の学生による自身の研究活動の紹介と、それぞれの大学教員による特別講義を行い、参加者が互いに個人的に知り合うと共に、それぞれの研究内容、技術的な専門知識の交換を行いました。また、その後の共同研究実験に必要な技術についての実験研修や、慶應大学理工学部のキャンパスツアーとして、研究室訪問や中央試験所において最新の実験施設、分析機器の見学を行いました。
第2に、共同研究実験を行いました。ウボンラーチャターニー大学の機能性ナノ材料に関する技術、慶應義塾大学のアッセイデバイス作製に関する技術、それぞれの大学の持つ高い開発技術を用い、新たなバイオマーカーアッセイデバイスを作製し、性能分析と評価を行いました。実験作業と実験結果の発表はすべてチームで行われ、タイの学生1人と日本人学生が2~3人がチームとなり共同で行いました。
第3に、学生の自主的、創造的な思考の促進と、このプロジェクトを新たな国際的な共同研究として進めることを目的として、「がんバイオマーカー検出のための、スマートフォンカメラを用いた新規低コストポイントオブケアアッセイデバイスの設計」をテーマとして、グループワークを行いました。共同研究実験で得た実験結果に基づいて、グループディスカッションにより新たな研究提案を検討し、それについて全員でディスカッションを行いました。
今回の滞在中、ディスカッションの時間を多く取り、また実際に共同で実験をすることができ、共同研究を今後進めていく上での課題や目標がより明確となり、有意義なものとなりました。また、タイの学生は何にでもとても熱心に取り組んでくれたため、日本の学生もとても刺激になったようで、それに応えるよう互いに協力して実験やディスカッション、プレゼンテーションを行なっていました。今後、共同での論文発表、学会発表にも繋がる内容となるものでした。
そのほか、週末には日本の文化に触れるためのプログラムを計画しました。日本科学未来館で最新の科学技術を学び、浅草では下町見学、箱根ではハイキングを行うなど、日本文化に触れ体を動かすこともできました。これら学外での交流活動についてもとても喜んでもらえたようです。日本の学生もホストとしての意識を持って積極的にプログラムに参加し、英語でコミュニケーションをとり、タイの文化についても知ることができ、双方の国際意識の向上につながったと考えます。
今回もとても良い機会を与えていただきました。ありがとうございました。