2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第105号 (Aコース)
沿岸域の総合的管理を推進するDX等を活用した先進的取り組みを学ぶ体験交流
高知大学からの報告
高知大学の大学院は単一の研究科:総合人間自然科学研究科から成り、その中で黒潮圏総合科学専攻は、黒潮流域圏の持続的社会の構築に貢献する人材育成を目的とした、文系と理系にまたがる博士課程のみの専攻です。黒潮圏総合科学専攻では、さくらサイエンスプログラムにより、2023年11月6日~11月10日の5日間、「沿岸域の総合的管理を推進するDX等を活用した先進的取り組みを学ぶ体験交流」をテーマとして、黒潮流域圏であるフィリピンと台湾から10名の若手研究者を招へいしました。うち9名は異なる9大学の学生で、もう1名はフィリピン農業省の職員です。黒潮圏総合科学専攻では、高知大学の取り組みを参加者の今後の研究に活用してもらい、進学先としての高知大学を紹介すべく、最先端の研究や、高知県の産業について体験するプログラムを提供しました。
【1日目】
午前にオリエンテーションを行い、午後に高知県の伝統産業である紙漉き(かみすき)の体験学習を行いました。オリエンテーションでは、プログラムの紹介のほか、研修生がスライドを用いて自己紹介を行い、互いのプロフィールや研究内容を共有しました。
午後の体験学習では、いの町にある施設で紙漉き作業場を見学し、和紙の材料や製造工程の説明を受けました。また、実際に紙漉きを体験し、和紙に草花で装飾を施した作品を完成させて持ち帰りました。
【2日目】
午前に地方創生についてのセミナーを行い、午後に森林・研究整備機構の森林総合研究所四国支所(高知市)を訪問しました。セミナーでは、研修生も参加し、高知大学の地方創生への取り組み紹介と、過疎高齢化社会における研究・教育の社会実装を題材として議論しました。
森林総合研究所では、研究所の紹介や森林調査手法についての講義を受けるとともに、所内の実験林を散策して、樹木に関する解説を受けました。また、標本展示館では、木材の標本などを観察しました。
【3日目】
土佐市にある高知大学の海洋生物研究教育施設を訪問しました。理学系の臨海実験所と農学系の水産実験所が合併してできた施設で、西日本の国立大学のなかでトップクラスの設備を備えています。ここでは、海藻やウミガメについての研究の講義を受け、施設を見学しました。また、施設の豊旗丸(19トン)に乗船し、ドレッジと呼ばれるカゴを用いて底生生物の採取を行いました。下船後には採取した底生生物の分類を行い、浦ノ内湾の海底の生態系について学びました。
【4日目】
高知大学物部キャンパス(南国市)のIoP共創センターと海洋コア国際研究所を訪問しました。IoPとは、Internet of Plants(植物のインターネット)のアクロニムで、高知大学では環境情報や植物の生理情報の活用により施設園芸農業の高度化を目指しています。IoP共創センターでは、センターの取り組みについての講義を受けるとともに、研究用の温室を見学し、情報管理型農業の手法を学びました。
海洋コアとは、海底の堆積物や地殻の柱状サンプルです。高知大学は海洋研究開発機構と共同で、世界の3か所で分担している海洋コアの保管を担っています。海洋コア国際研究所では研究所の取り組みについての講義を受け、4℃に保たれた海洋コアの保管冷蔵庫の見学や、海底堆積物の顕微鏡観察などを行い、地球科学の最先端に触れました。
夜には交流会が開催され、研修生が黒潮圏総合科学専攻の教員や学生と語らう機会を得ました。
【5日目】
午前に、かまぼこ工場(須崎市)へ見学に行き、午後に閉講式が行われました。かまぼこ工場では、かまぼこの材料となる魚について解説を受け、製造ラインを見学し、手作業でのかまぼこ作りを体験しました。
閉講式では修了証書の授与が行われ、研修生と教員との意見交換が行われました。研修生からはプログラムで印象に残った点を振り返り、今後の交流への期待、日本への留学に関する抱負などが述べられました。