2023年度 活動レポート 第103号:九州工業大学

2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第103号 (Cコース)

次世代シーケンサーを高度活用した世界規模課題解決のための国際共同研究

九州工業大学からの報告

 2023年9月3日~12日までの10日間、九州工業大学大学院生命体工学研究科・前田研究室にて、次世代シーケンサーを高度活用した世界規模課題解決のための国際共同研究に関する交流プログラムを実施しました(2023年8月29日~30日は、オンライン交流活動も実施)。

活動レポート写真1
事前オンライン交流での集合写真(一部のメンバーは表情がかたい)

 フィリピン大学ディリマン校から1名、コロンビアサンタンデール工科大学から1名、メキシコ国立自治大学から1名、マレーシアのスルタンザイナルアビディン大学から2名(うち1名は引率者として)、マレーシアプトラ大学から1名、マレーシア国民大学から2名、カナダのオンタリオ工科大学から2名(うち1名は引率者として)、合わせて10名が本プログラムに参加し、前田研究室の大学院生らと交流活動を行いました。次世代シーケンサーで使用する試薬は高額であるため、一度に多くの試料を反応させた方がランニングコストを安くできます。すなわち、この活動は、次の共同研究に繋がるように大量のシーケンスデータを協働で得ること、かつその取り組みを介して、日本人研究室メンバーの国際マインドを強化すること、一挙両得が期待できるプログラムです。

活動レポート写真2
招へい者とチューターが協働でクリーニング作業を行っている様子

 9月3日に、招へい者を到着時刻に対応して3グループで出迎え、その後空港から北九州市まで引率しました。事前にオンライン交流にて顔合わせを行っていたため、到着時は円滑に招へい者を認識でき、速やかに合流することができました。

 その翌日からは実際に、次世代シーケンサー技術の研修を行いました。具体的には、9月4日の午前中は、自己紹介を兼ねたキックオフミーティング、午後は研究活動における倫理教育のほか、次世代シーケンサーの原理などを解説しました。

 9月5日からは、実際に技術研修を行い、5日は対象試料からのDNAおよびRNAの抽出、RNAに対しては逆転写作業、および濃度調整などを行いました。

 9月6日には、アンプリコンPCRによる標的DNA領域の増幅、クリーンナップ、クオリティチェック、タグメンテーション(インデックスPCRによるバーコード配列の付加)を実施しました。

 9月7日から9月9日にかけて、サンプルのクリーンナップ、プーリングしたライブラリー試料の変性処理、PhiXコントロールとの混合などの下処理を行った後に、次世代シーケンサーMiSeqによるシーケンシングを行いました。今回も、無事にエラーが発生せずにMiSeqが稼働でき、反応させた全ての試料のシーケンスデータを得ることができました。

 9月10日は、MiSeqで得られたシーケンスデータを解析する研修を行いました。Qiime2などの解析ツールを駆使して、試料中の微生物多様性を評価できるα多様性、試料間の種多様性の類似度を評価できるβ多様性、具体的な菌叢を解析しました。

 9月11日の午前中に、得られたシーケンスデータを実際に解析し、午後に解析できたところまでのデータを用いて活動成果報告会を行いました。その後は、修了書の贈呈および情報交換会を実施し、今後の交流・連携の進め方を議論しました。翌日の9月12日に、招へい者全員、母国に帰国しました。

 事前にオンライン交流を行っていたため、いざ対面で活動を行うと、あっという間に活動に関わった全ての人が仲良くなりました。例えば、WhatsApp(コミュニケーションツール)でグループ化され、その中で活動中の写真などが共有されるなど、コロナ禍を乗り越えて、活発な国際交流活動となりました。どの参加グループも、目的のシーケンスデータを得たので、この先これらのデータがどのように活用されるのかが楽しみです。

 特に、今回チューターとして関わった3名の大学院生は、その後、マレーシアへの短期留学も経験し、今回の活動が海外への渡航意欲を高めたことは間違いありません。最後に、このような機会を与えてくださったさくらサイエンスプログラム実施機関であるJSTの関係者の皆様、また事務手続き等で適切かつ真摯にご対応して下さりました本学国際本部国際課留学生係のスタッフの皆様には、この書面の場を借りて、心より深謝の気持ちをお伝えしたいと思います。ありがとうございました。

活動レポート写真3
修了書贈呈後に撮影した全員集合写真