2023年度 活動レポート 第102号:早稲田大学

2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第102号 (Aコース)

資源循環分野における国際共同研究計画の策定に向けての交流

早稲田大学からの報告

 2023年12月3日~12月9日、ベトナム国家大学ホーチミン市校工科大学、ベトナム国家大学ホーチミン市校から、大学院生、教員、研究者、計11名(うち1名は自費による)を招へいし、科学技術体験コースのプログラムを実施しました。

■早稲田大学所千晴研究室のラボ見学

 所千晴研究室での設備とその研究環境を紹介するために、ラボ見学ツアーを実施しました。午前は、研究室の概要説明と安全教育を行った後、リサーチイノベーションセンター内の化学実験室を見学し、午後には西早稲田キャンパス内の電気パルス実験室、粉砕・分離実験室、分析装置室を訪問しました。各実験室では、研究室スタッフと在籍する学生が説明を行い、質疑応答も行われました。
 ラボ見学を終え参加者からは、資源循環における分離から資源回収までの幅広い研究が行われていること、また、最新の分析装置やその機器を操作するスタッフが充実していることなど素晴らしい研究環境に感嘆の声があがっていました。

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電気パルス実験室で研究の説明を受ける参加者

■日本–ベトナム資源循環ワークショップの開催

 早稲田大学所研究室とホーチミン市工科大学、ベトナム国家大学ホーチミン校循環経済開発研究所の共催によりワークショップを開催しました。「将来の協働に向け、お互いの研究をよく知ろう」をテーマに、それぞれの組織での研究の概要と個別の研究テーマでの研究成果の報告と討議を行いました。
 所研究室から、研究の3本柱である「資源分離」、「環境浄化」、「粉体シミュレーション」のそれぞれの研究概要とリチウムイオン電池からの資源回収の研究成果、また、ベトナム側から、再生可能エネルギーの普及とその課題、循環経済開発研究所でのプロジェクト紹介、農業廃棄物を活用したバイオ炭電極材料の開発、エアロゲル環境浄化材料の開発が報告されました。

 ベトナムでは、「2050年にカーボンニュートラル」を目指し、太陽光発電、風力発電など再生可能エネルギーの導入が急速に進んでいて、その廃棄物の処理が大きな課題となってきています。そのため、ベトナム側でもリチウムイオン電池や太陽光パネルのリサイクル研究に取り組む意向が示されました。

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ワークショップ参加者の集合写真

■太陽光パネルリサイクル施設の見学と討議

 廃太陽光パネルのリサイクルを手掛ける、株式会社浜田の京浜島エコロジセンターを訪問しました。同社は、廃太陽光パネルからアルミフレームやカバーガラスを機械で高度分離することにより、廃棄資源の有効利用とそれによる環境負荷の低減に取り組んでおり、海外への事業展開も進めています。廃パネルの分解・分離装置を見学した後、同社が環境省委託事業で実施した「中央ベトナムにおける太陽光パネルのリユース・リサイクル事業」の実現可能性調査の報告を行っていただき、活発な意見交換を行ないました。

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太陽光パネルの分離装置の見学の様子

■環境総合展示会「エコプロ展」の見学

 日本の企業の環境活動のトレンドを把握するとともに、大学や研究機関とのネットワーキングを行うよい機会と考え、「エコプロ展」を見学しました。
 ベトナムからの参加者は、小学生など子供の来場者が非常に多いことに驚いた様子で、自国でも子供の頃からの環境教育が必要であるとの声が挙げられていました。

■早稲田大学・高等研究所の所員会、講演会の参加

 海外からの研究者も在籍し、国際的な研究を進めている高等研究所の所員会にオブザーバとして参加し、国際的研究の最前線を見学しました。所員会の後の講演会では、阿部達也先生より、ベトナム側も関心が高い、環境政策に関わる研究の講演がありました。ベトナムからの参加者からも質問があり関心の高さが窺われました。

■ラップアップ会議

 今回の交流を振り返り、ベトナム側代表者から、今回の交流で所研究室の研究の方向性や具体的な研究内容、研究の環境を理解でき、有意義な交流であったことが述べられました。また、ベトナムでニーズの高い太陽光パネルの処理技術の研究開発において、所研究室との協働を継続し、国際共同研究へと繋げていきたいとの意向が示されました。
 まずはお互いの共通分野で共著論文の作成などの協働を行い、国際共同研究の提案へ向けて交流を継続することを確認しました。