2023年度 活動レポート 第99号:東京工業大学

2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第099号 (Cコース)

ラオス国立大学の教員、学生がプラズマを用いた高度水処理技術を学ぶ

東京工業大学工学院電気電子系 
准教授 竹内希さんからの報告

1.プログラム概要

 2023年12月10日から12月19日までの10日間、さくらサイエンスプログラムにより、ラオス国立大学の教員3名、学生7名を東京工業大学工学院電気電子系竹内研究室に招へいし、プラズマを用いた高度水処理技術の理解と習得を目的とした研修を行いました。
 今回の招へいに至った経緯として、JICAのプロジェクトによる東京工業大学とラオス国立大学の交流があります。東京工業大学は、「ラオス国立大学における工学教育の体制強化を行う支援プロジェクト」に参画しており、本プログラムの実施主担当者である竹内は主に工学部電気工学科との連携を担当しています。この過程で、竹内の研究テーマである「プラズマを用いた高度水処理技術」が、電気工学科の卒業研究プロジェクトのテーマに加わり、希望学生を募りました。今回の招へい者は、このテーマに取り組む学生と、その指導教員たちです。今回の交流において、基礎となる知識や実験手法について学び、今後の研究の進展を後押しするとともに、招へいする教員がラオス国立大学において、関連知識・技術を自ら教育できる体制の構築を図ることを目的としました。

2.オリエンテーションおよび意見交換会

 羽田空港に到着後、東京工業大学大岡山キャンパスにて、オリエンテーションおよび意見交換会を実施しました。互いの自己紹介、東京工業大学および竹内研究室の紹介、本プログラムの実施内容の確認に続けて、日本やラオスでの水環境に関する話題などについて意見交換を行いました。

3.基礎講座および竹内研究室の紹介

 プラズマおよび水処理技術に関連する基礎知識や測定手法などについて、基礎講座を実施しました。また、竹内研究室のゼミへ参加し、学生からの研究進捗報告や論文紹介を聴講して、研究活動が教員と学生との間でどのように進められているかを理解しました。また、竹内研究室の実験室を見学して、竹内研究室で進められている研究テーマについて担当学生と議論しました。

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竹内研究室メンバとの集合写真

4.プラズマを用いた水処理実験

 プラズマにより生成したオゾンや過酸化水素からOHラジカルを生成させて、色素や酢酸などの有機物を分解する実験を行いました。オゾン単独の処理よりもOHラジカルを用いた処理の方が効果的であることが、実験を通して理解できたと思います。また、高電圧・電流の測定手法、オゾンや過酸化水素などの活性種の測定手法、全有機炭素量の測定手法などを原理と併せて理解することができました。これは、ラオス国立大学で高額な測定器を購入しなくても、安価な装置を自作し同様の実験ができるような知識と技術の習得につながったと期待しています。

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水処理実験の様子

5.電気集じん装置実験

 電気集じん装置は、プラズマでイオンを生成して粉じんなどを帯電させて電界によって捕集する装置で、火力発電所やトンネルなどで用いられ、空気の浄化にはなくてならないものです。原理の説明ののち、電気集じん器を作成し、構造を工夫して、線香の煙の集じん効率向上を目指した改良を行いました。

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電気集じん装置実験の様子

6.東京工業大学施設見学

 東京工業大学大岡山キャンパスの代表的な施設を見学しました。図書館や環境エネルギーイノベーション棟において、太陽電池や燃料電池を用いて建物への電力供給を行っている様子や、高電圧実験室のマルクス発生機などといった高電圧工学に関連する重要な装置類、パワーエレクトロニクス研究室の実験装置などを見学しました。

7.芝浦水再生センター見学

 実際の水処理施設の例として、芝浦水再生センターにおける下水処理施設を見学しました。下水が環境中に放出されるまでにどのような処理をされているのか、実際の処理施設の規模感と併せて理解できたと思います。

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芝浦水再生センター見学時の集合写真

8.おわりに

 本プログラムを通して、東京工業大学で進められている最新の研究内容や装置を見学できたこと、また、実際の水処理施設を見学できたことは、これからラオス国立大学で関連技術に関するプロジェクトを開始するにあたり、有用な体験になったと思います。また、空いた時間には、積極的に日本文化や日本食を楽しんでくれたようで、アンケートでは、今後の日本への留学を検討してくれている学生も多数いるようです。
 本プログラムの実施が、今後の東京工業大学とラオス国立大学との連携をますます強固にしていくことを確信するとともに、このような機会を与えてくださった、さくらサイエンスプログラムならびに関係者の皆様に深く感謝いたします。